「デイサービス」「訪問介護」「ショートステイ」といった介護サービスの名称は聞いたことがあっても、実際にそこでどんなことがされているのか、自分や家族に合うサービスなのか、不安に思う方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、広島県安芸郡海田町にあるデイサービス事業所「通所介護あきもと」を訪問し、管理者の中林さんにお話を伺いました。リアルな現場を知ることで、サービス選びの参考にしていただければ幸いです。

1. 医療的ケアが必要な方でも安心して通えるクリニック併設のデイサービス

「通所介護あきもと」(以下あきもと)は医療法人秋本クリニックが運営するデイサービスです。2002年2月の開設以来、20年以上にわたり地域の高齢者とそのご家族を支え続けています。

同法人は「医療に強い地域のケアステーション」を掲げ、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるよう、医療・介護・福祉など関係機関と連携し、地域の支援拠点としての役割を担っています。

「あきもと」の最大の特徴は、医療と介護が同じ建物内で連携している点です。1階には秋本クリニック、2階にはデイサービスと訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所が併設されており、医療的ケアが必要な方でも安心して利用できる環境が整っています。

胃ろうや喀痰(かくたん)吸引、在宅酸素、褥瘡処置などにも対応しており、医療ニーズの高い方や中重度の要介護者(要介護3〜5)の受け入れにも積極的です。1日の定員は27名で、要支援の方も含め幅広いご利用者に対応しています。

「サービスの利用中に体調が急変しても、クリニックの医師にすぐに相談できる体制が整っています。重度の方や医療ニーズの高い方でも安心して通っていただける環境が私たちの大きな強みです」と中林さんは話します。

通所介護あきもと_浴室

介護浴槽を備えた浴室。重度の要介護者の方も安心して入浴できる設備が整う

2. 「通所介護あきもと」の1日の流れ

朝8時45分、「あきもと」の一日が始まります。

近隣の利用者の方はスタッフと一緒に徒歩で来所し、遠方の方はスタッフが車でお迎えに行きます。到着すると、まず看護師を中心にバイタルサインを測定し、その日の体調を確認します。

健康チェックが終わると、順番にお風呂へ。介助を受けながらゆったりと入浴できるひとときは、多くの利用者にとっての楽しみとなっています。

10時頃からは、理学療法士や看護師による個別の機能訓練がスタート。並行して、フロアでは介護スタッフによるレクリエーションが行われます。取材日はスタッフが出題する「脳トレクイズ」に利用者の皆さんが挑戦。「これは難しいな」「あ、わかった!」と声が上がり、和やかな雰囲気に包まれていました。

昼食前には全員で口腔体操。声を出しながら、口の周りの筋肉をしっかり動かします。

正午には栄養バランスの取れた昼食が提供されます。嚥下機能に応じた食形態でご利用者一人ひとりに合わせた食事支援を行っています。

食後は口腔ケアを行い、誤嚥性肺炎の予防にも力を入れています。

午後の始まりは、ティータイムから。お茶を飲みながら、ご利用者どうしの会話も弾み、その後のレクリエーションへ。ただし、参加は自由です。「ゆっくり過ごしたい方は、静養室のベッドで休んでいただくこともできます」と中林さん。

その後、15時のおやつタイムを経て、16時30分頃には一日のプログラムが終了。それぞれのご自宅へと送り届けます。

「画一的なプログラムではなく、その方らしい過ごし方を大切にしています。ここへ来ること自体がリハビリになる方もいれば、しっかり機能訓練をしたい方もいる。それぞれのニーズに応えられる場所でありたいと思っています」と中林さんは話します。

通所介護あきもと_予定表

フロアに掲示された1日のタイムスケジュール。利用者が1日の流れを確認できる

3. 専門職連携による「できること」を活かすケア

「あきもと」のもう一つの特徴は、専門職による充実した機能訓練体制です。理学療法士や看護職員による口腔ケアや機能訓練に力を入れ、希望者には歩行や筋力、嚥下機能などの改善・維持を目的とした個別プログラムを実施しています。

「リハビリの専門職である理学療法士を配置して、ご利用者一人ひとりの状態や生活上の課題に合わせてメニューを組み、専門的な機能訓練を行っています」と説明する中林さん。

取材中にも、平行棒を使った歩行訓練や階段・ステップを利用した段差昇降訓練など、理学療法士がマンツーマンで指導する様子が見られました。

さらに「あきもと」では、日常生活における「自立支援」も大事にしています。食事や排せつ、入浴などの場面では、ご利用者の「できる力」を見極め、それを最大限に活かすケアを実践しています。

また、自宅で自立した生活を続けるには、ご利用者の生活環境やご家族の支援体制を含めた全体的なサポートも欠かせません。そのため、それぞれの自宅環境や生活状況、ご家族の介護状況の把握にも努めています。

「ご自身でできることはそばで見守りながら、必要なときにだけ最小限の介助を行っています。それがご利用者の自立の維持につながると考えています」と中林さんは話します。

こうした取り組みの成果は、データにも表れています。「あきもと」では、半年ごとに利用者の日常生活の自立度を評価しており、多くの方が食事や移動、排せつなどの日々の生活に欠かせない動作の維持・向上が可能となっています。

通所介護あきもと_機能訓練

理学療法士による機能訓練の様子

4. 利用者の声:圧迫骨折から半年で一人での買い物が可能に

「スタッフの皆さんが本当に親身になってくれて。ここに来ると、気持ちまで明るくなるんです」

そう笑顔で話すWさん(要介護3)は、「あきもと」に通うことで、生活に大きな変化があった一人です。

今年2月、圧迫骨折の強い痛みで歩行もままならなくなり、ご家族のすすめで週3回の利用を開始。当初は「本当に渋々だった」と振り返ります。

しかし、理学療法士や看護師による専門的な機能訓練と、介護スタッフの温かいサポートにより、Wさんは着実に回復。今では、一人で買い物に出かけられるまでになりました。

「デイサービスが、こんなに良い場所だとは思ってもいませんでした。スタッフは明るくて親切だし、仲間とのおしゃべりも楽しい。ここまで回復できたのは、支えてくれた皆さんのおかげです」

Wさんの表情からは、身体機能の回復だけでなく、「あきもと」が「自分らしくいられる場所」として大切な存在になっていることが伝わってきます。

通所介護あきもと_管理者とご利用者

ご利用者Wさんと管理者の中林さん

5. 家族に寄り添う「伴走者」として

「あきもと」では、ご利用者本人だけでなく、介護を担うケアラーへの支援も重視しています。「私たちは介護を担うご家族の伴走者でありたいと思っています」と中林さんは話します。

「ご家族が自宅で行うケア方法のアドバイスも行っています。例えば、在宅でのおむつ交換に不安があるご家族には、実際にここで見ていただいたり、動画を使って説明することもあります」

また、デイサービスでの様子から気づいた変化や課題は、ご家族やケアマネジャーに積極的に伝えています。

「家族だけでは気づきにくい小さな変化や、介護の工夫点などをお伝えすることで、ご本人が安心して過ごせる環境づくりや、ご家族の介護負担の軽減につながればと考えています」

最後に中林さんから、ケアラーの皆さんへメッセージをいただきました。

「デイサービス選びに悩む方も多いと思います。それぞれ特色がありますので、ぜひ複数の事業所を見学したり、お試し利用をしてみたりして、ご本人に合った場所を選んでいただきたいと思います。
最初は利用に乗り気でない方がほとんどですが、通い始めると『来てよかった。続けてみよう』と感じる方が大半です。
ご本人が前向きでない場合も、スタッフがご自宅に伺って説明するなど、柔軟な対応も可能です。すぐに受け入れてもらえなくても、いろいろな方法がありますので、まずはケアマネジャーやデイサービスにご相談してみてください」

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「通所介護あきもと」は、クリニック併設という強みを活かし、要支援の方から重度者、医療ニーズの高い方まで、幅広いご利用者を支えています。理学療法士や看護師による専門的な機能訓練と、利用者の「できること」を活かす自立支援により、多くの方が在宅生活を継続できています。

また、ご利用者本人だけでなく、ケアラーの「伴走者」として共に歩む姿勢も印象的でした。デイサービスは単なる介護の場ではなく、その人らしい生活を支え、可能性を広げる場所なのだと実感しました。


通所介護あきもと_外観

【取材協力】
通所介護あきもと(医療法人秋本クリニック)
所在地:広島県安芸郡海田町稲荷町3-34
公式ホームページ:https://akimoto-clinic-k.com/



写真:中谷ミホ


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この記事の提供元
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著者:中谷 ミホ

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級

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