高齢になると皮膚の乾燥や免疫力が下がることにより、さまざまな皮膚トラブルが起こりやすくなります。
本記事では、シニアの皮膚トラブルを予防するケアのポイントについて、わかりやすく解説します。
高齢になると、皮膚トラブルが起こりやすい傾向があります。その主な要因は、以下の3つです。
①皮脂の分泌量の低下
皮脂腺は毛穴から皮脂を分泌して肌の水分蒸発を防ぎ、うるおいを保つ働きをしていますが、加齢とともにその機能が低下します。
皮脂の量が少なくなると肌が乾燥しやすくなり、かゆみによる掻きむしりなどのトラブルを引き起こしやすくなります。
②肌のバリア機能の低下
①で解説した皮脂の分泌量の低下は、肌のバリア機能の低下ももたらします。
紫外線や空気の乾燥のほか、摩擦による刺激を受けやすくなり、敏感肌の状態になります。その結果、若い頃は問題なく使えていた化粧品が合わなくなるケースも珍しくありません。
③肌の保湿力の低下
加齢とともに肌の乾燥が進むのは、肌に含まれるヒアルロン酸などの保湿要素が減少するのも原因のひとつです。
保湿要素が低下すると肌の柔らかさも失われ、かゆみやひび割れが生じやすくなります。
シニアによく見られる皮膚トラブルの名称と主な症状を、表にまとめました。
皮膚トラブルの名称と皮膚の状態・主な症状など
●老人性乾皮症(ろうじんせいかんぴしょう)
加齢によって皮膚が乾燥している状態です。皮膚がかさつき、粉を吹いたような状態になることがあります。また、ひび割れやかゆみを伴う場合もあります。
●失禁関連皮膚炎(IAD)
排せつ物が皮膚に接触することにより起こる皮膚炎です。皮膚の赤みやただれ、皮膚の損傷などが生じ、かゆみや痛みも伴います。
●疥癬(かいせん)
ダニの一種「ヒゼンダニ」が皮膚に寄生して起こる感染症です。お腹や胸、太ももの内側などに激しいかゆみが生じる。
●白癬(はくせん)
白癬菌というカビが原因で起こる病気。足に感染したものは水虫とも呼ばれる。爪・顔・頭皮・身体にも感染し、皮膚のかゆみや赤み、水ぶくれなどの症状が出ます。
●褥瘡(じょくそう)
床ずれとも呼ばれます。寝たきりなどにより、体重で圧迫され続けた箇所の血流が悪くなり、赤みやただれ、傷が生じる。後頭部や肩甲骨、仙骨部など、骨が突き出ている部位に起こりやすい。
上記の症状を放置すると、重症化して治療が困難になるだけでなく、本人のかゆみや痛みといった不快感も強くなります。皮膚の異常に気づいたら、早めに皮膚科を受診しましょう。
シニアの皮膚トラブルを早期発見するためのチェックポイントは以下の通りです。
□カサカサしているところや粉を吹いているところはないか
□赤みや血がにじんでいるところはないか
□アザや内出血はないか
□炎症が起きているところはないか
着替えや入浴時のケアの際に定期的にチェックし、気になる点があれば早めに対処すると重症化を防ぐことができます。
①肌を強くこすらない
肌を強くこするのは、もろくなっているシニアの肌に強い刺激となり、肌トラブルの原因となる場合があります。
・お風呂で身体を洗う際は、ナイロンタオルではなく柔らかいタオル地のものを使用する
・保湿クリームは擦り込まず、手で優しく押さえるように塗る
このような配慮で、肌への負担を軽減できます。
②衣類や寝具などを清潔に保つ
衣類や寝具、おむつやパッドなどを清潔に保つことで、ダニの発生や衣類の汚れによる皮膚トラブルを予防できます。
③入浴はぬるめの温度で
入浴で身体を清潔に保つことも、皮膚トラブルの予防に有効です。
熱いお風呂が好きな方もいらっしゃいますが、熱すぎるお湯は身体に必要な油分まで奪ってしまい、肌の乾燥が悪化する一因になることもあります。お風呂の温度は、少しぬるめの38〜40℃がおすすめです。
④シニア向けのクリームやジェルで保湿する
年齢を重ねた肌はデリケートなため、保湿剤は敏感肌用やシニア向けの低刺激なものを選びましょう。
はじめて使用する保湿剤は、肌の目立たない部位でパッチテストをするとより安心です。
⑤冬は加湿器を使用して室内の湿度を50~60%に保つ
空気の乾燥は、肌の乾燥を悪化させます。
湿度が40%以下になると肌が乾燥し始めるため、冬は加湿器を使って湿度を50〜60%に保ちましょう。
⑥栄養バランスのよい食生活や規則正しい生活を心がける
肌の状態を健やかに保つには、外側からの保湿ケアだけでなく、食生活や睡眠などの内側のケアも大切です。乾燥肌に良いとされる栄養素と食品の一例を紹介します。
・たんぱく質・・・肉・魚・卵・大豆・乳製品など
・脂質・・・植物油・ナッツ・ゴマなど
・ビタミンA・・・レバー・緑黄色野菜・緑茶など
これらを取り入れつつ、特定の食品に偏らないバランスの取れた食事を意識しましょう。
著者:小原 宏美
大学で音楽療法を学び、卒業後は児童養護施設、高齢者通所介護施設にて勤務。生活支援と並行して、音楽療法による利用者のQOL向上に取り組む。
現在はフリーライターとして、介護や音楽などに関する記事を執筆している。保有資格:保育士・介護福祉士・日本音楽療法学会認定音楽療法士(補)