親などの身近な高齢者が年齢を重ねるにつれ、坂道が怖くて外出がおっくうになったり、傾いた道でバランスを崩すなど、歩くことに不安を感じる場面が増えてきた、という感覚をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
そんな歩行についての不安を解消してくれるのが、今回ご紹介する電動アシスト歩行器「ロボットアシストウォーカーRT.3」です。内蔵されたセンサーが路面の状況を瞬時に検知し、センサーとモーターを駆使したロボット技術で利用者の歩行をサポートする製品です。
今回は、開発・製造・販売元であるRT.ワークス株式会社 ビジネス戦略本部 営業課の松井由江さんにお話を伺いました。
──ロボットアシストウォーカーRT.3はどのような特徴を持つ製品なのでしょうか?
「電動アシスト自転車をイメージしていただければわかりやすいかと思います。バッテリーで動く電動アシスト歩行器で、内蔵されたセンサーが道路の傾斜を検知することで、安全な歩行をサポートする「介護ロボット」です。また、使う方の身体の状態に合わせて、アシストの強さや速度を事前に設定でき、一度設定をすれば、あとは自動で制御されます」
──どのような仕組みで安全な歩行をサポートしてくれるのですか?
「センサーが路面の状況を検知すると、後輪のモーターを自動で動きを制御します。上り坂ではモーターがアシストして楽に上ることができ、怖いと感じる方が最も多い下り坂では自動でブレーキがかかり、速度を抑制しますので安心して使っていただけます。
さらに、歩道にある車の乗り入れ部分のように傾斜のある歩道では、左右のモーターが独立して働くことで、利用者が傾斜に影響を受けず、まっすぐ歩けるようにサポートします。
それに加え、事前に設定した速度以上になると自動で減速する機能や、坂道でハンドルから手を離してもその場でピタッと停止する安全機能も搭載しており、転倒リスクを軽減します」
ロボットアシストウォーカーRT.3に備わっている機能
──RT.3は、お身体がどのような状態の方、また、どんなお悩みを持つ方に特に役立ちますか?
「ご自宅の周りに坂道が多いという方には特に喜ばれています。また、坂道がなくても、歩道のわずかな傾斜で歩行器が動いてしまうことにお困りの方にも有効です。
ちなみに、ご利用者の多くは要支援や要介護1、2の認定を受けている方で、介護保険を使ってレンタルされている方が大半を占めています」
──歩くのが楽しくなるような機能があれば教えてください。
「電源を切るたびに『今回の歩行距離は500mでした』と音声で知らせてくれる『おしゃべり機能』が好評です。ご利用者からは、これが日々の大きな励みになるとのお声をいただいています。
ご家族との会話のきっかけや、『次はもっと歩こう』と目標設定の機会になっているようです。また最新機種では累計の歩行距離もわかるようになり、ケアマネジャーさんがケアプランを立てる際の参考にもなっています」
──操作は高齢の方にとっても難しくないのでしょうか?
「はい、基本的な操作は手元の電源を入れるだけですので、どなたでも簡単にお使いいただけます。アシストの強さや速度などの初期設定は、福祉用具の専門相談員がご本人に合わせて調整するため、ご安心ください。操作とは別に、バッテリーの充電を心配される声もありますが、独居の方でもヘルパーさんに確認をお願いするなど、周りの方のサポートを得ながらうまくご活用いただいています」
ロボットアシストウォーカーRT.3は高さを調整することができ(上)、折り畳みも可能(下)
──最新機種のRT.3に至るまで、どのような利用者さんの声をもとに改良を重ねてきたのでしょうか?
「初代モデルはGPSなどの通信機器を搭載していましたが、介護保険の福祉用具レンタルの対象として認められなかったため販売のみで展開していましたが、『レンタルで気軽に利用したい』というお声を多数いただき、介護保険でも使えるように通信機能を外したRT.2を開発しました。
さらに、『グリップ位置を高くしてほしい』『後輪に足が当たりやすい』『電源ボタンが押しにくい』といった貴重なご意見をもとに、一つひとつ改良したのが現在のRT.3なんです」
──実際に利用されている方からは、どのような声が届いていますか?
「一番多いのは『これまで怖かった坂道を安心して下れるようになった』というお声です。下り坂で自動ブレーキがかかるため、危険を感じなくなったと喜ばれています。ほかにも、傾いた歩道で流されず腕が疲れにくいという声や、歩行距離の案内が日々の励みになるという声もたくさん届いています」
──最後に、歩行に不安を抱えている方や、そのご家族へメッセージをお願いします。
「電動アシスト歩行器は、残念ながらまだまだ知られていないのが現状です。私たちの目標は、今や当たり前の存在になった電動アシスト自転車のように、誰もが知っていて、安心して使える、歩行器のスタンダードになることです。歩行に不安を感じる方やそのご家族に、電動アシストならではの安心で快適な歩行をぜひ一度ご体験いただき、より豊かな生活を送っていただくお手伝いができれば幸いです」
「ロボットアシストウォーカーRT.3」の本体価格は172,700円(税込)です。介護保険の福祉用具レンタルで使用する場合、1割負担の方は月額約800円で利用可能です。詳細については、公式サイトをご参照ください。
RT.ワークス株式会社 ビジネス戦略本部 営業課の松井由江さん
著者:織田さとる(株式会社物語社)
介護業界で20年以上の実務経験を持つケアマネライター。専門学校卒業後、特別養護老人ホームで介護福祉士、ケアマネジャー、生活相談員として勤務。現在も施設で働きながら、介護・福祉分野の記事を執筆している。
保有資格:ケアマネジャー、介護福祉士、社会福祉士、公認心理師など。