やさしい和食のひと皿です。不足しがちな亜鉛を含む「かき」を主役に、豆腐と合わせてふんわりとしたかぶら蒸しに仕立てました。なめらかな口あたりの中に、かきのうま味とかぶのやさしい甘味が広がり、いつもの食卓を格上げしてくれます。
高齢者の半数以上が、「亜鉛」を十分に摂れていないといわれています。亜鉛は、たんぱく質やホルモンの合成、細胞の新陳代謝など、体を作り、維持するために欠かせない栄養素です。不足すると、食欲不振や皮膚の乾燥、免疫力の低下を招きやすく、生活の質(QOL)にも影響します。
特に介護現場で問題となる「床ずれ」とも深く関わっており、亜鉛が不足すると床ずれになりやすくなったり、治りにくくなったりすることがわかっています。そのため、床ずれ対策には1日15mgの摂取が推奨されています。
その亜鉛を豊富に含む代表的な食材「かき」で、100g(約5個)で13〜14mgの亜鉛を含み、うま味と栄養がたっぷり詰まっています。
今回は、かきを主役に料亭風の上品な蒸し物料理に仕立てました。下処理したかきと豆腐を重ね、その上にふんわりと泡立てた卵白とかぶのすりおろしをのせて蒸し上げます。仕上げには“なめこあん”をかけ、うま味とともに食物繊維もプラス。
かき・豆腐・なめこあんを一緒にスプーンですくって味わえば、つるんとしたのどごしが楽しめます。さっぱりとした味わいに、わさびのさわやかな辛みがアクセントとなり、体をいたわるのにぴったりの一品です。

かき……150g
片栗粉……大さじ1
絹ごし豆腐……1/2丁(150g)
かぶ……2個(100g)
かぶの葉……50g
卵白……1個分
塩……ひとつまみ
なめこ……50g
練りわさび……少々
A
だし汁……1 1/2カップ
酒……大さじ1
しょうゆ……大さじ1/2
塩……少々
B
片栗粉……小さじ1
水…小さじ2
*料理のエネルギー・ 塩分は1人分です。
*野菜類は皮をむくなどの下ごしらえをすませてからの手順を説明しています。
エネルギー112kcal
塩分 1.6g

料理撮影:貝塚 純一
レシピ開発・調理:伊藤 晶子
①ボウルにかき、片栗粉を入れてやさしく混ぜ、汚れが浮いたら水で洗い、水気を切る。
②豆腐は厚みを半分に切る。かぶは皮をむいてすりおろし、軽く水気を切る。かぶの葉は3㎝長さに切る。
③ボウルに卵白と塩を入れ、泡立て器でかたく泡立て、②のおろしたかぶを加えてさっくり混ぜる。
④器に豆腐を入れてかきを上に並べ、③をこんもりのせてかぶの葉を添える。蒸気の上がった蒸し器に入れて10~15分蒸す。
⑤鍋にAを入れて中火で煮立て、なめこを加えて2~3分煮て、混ぜ合わせたBでとろみをつける。
⑥蒸し上がった④の豆腐から出た水分を除き、⑤のなめこあんをかけ、わさびをのせる。
写真:PIXTA
著者:伊藤 晶子(いとう・あきこ)
料理研究家・管理栄養士
料理教室FRASCO 主宰(福島県いわき市)
女子栄養短期大学を卒業後、料理研究家アシスタント、料理教室スタッフなど様々な食の現場を経て、2009年に独立。『栄養と料理』『レタスクラブ』『お料理家計簿』(講談社)などの料理雑誌でのレシピ提案や、料理教室講師、イベント運営、企業のレシピ開発、料理番組の裏方など、多岐にわたって活躍。2020年末にいわきへUターンし、現在は料理教室運営を軸に、東京へも出向き、食の仕事に携わる。確かな調理技術をもとに、作りやすさと美味しさを兼ね備えた、食べて笑顔になる料理を提案し続けている。『フィスラーの料理教室』(KADOKAWA)、『ラプンツェルと学ぶ 料理の基本(料理担当)』(KADOKAWA)、『おいしすぎる糖質オフカレー』(KADOKAWA)、『幼児から小学生まで 食物アレルギー栄養しっかりごはん(料理担当)』(女子栄養大学出版部)など著書多数。