ご家族の入院をきっかけに、歩行能力(歩く力)の低下を心配される方は多いのではないでしょうか。

 

今回は、立ち上がったり歩いたりといった基本的な動作が難しくなる状態「ロコモ(ロコモティブシンドローム)」が日常生活に及ぼす影響をわかりやすく解説します。自宅で簡単にできるロコモ予防体操もご紹介しますので、ぜひご家庭で実践してみてください。

1. わずか1週間で筋力低下! 入院が歩行能力に与える影響

病気などで入院し、安静にしている状態が続くと、筋力は驚くほど早く低下します。

 

わずか1週間で元の筋力の10〜15%もが失われ、3〜5週間の安静で50%近くまで低下してしまうのです。

 

さらに、一度衰えた筋力を取り戻すには、失う時よりも長い時間が必要です。

 

実際に海外の研究では、片脚を2週間ほとんど動かさなかっただけで筋力が大きく低下し、その後6週間運動を続けても完全には元の水準まで戻らなかったという報告がなされています。

 

つまり、回復には長いリハビリの時間と努力が必要になる可能性があるのです。

 

こうした筋力の低下は、特に「歩行能力」に大きな影響を与えます。そのため「以前のように歩けなくなるのでは…」と不安に思うケアラーも少なくありません。

 

【参考】
東京都保健医療局『廃用症候群

 

MySCUE記事 ロコモティブシンドローム 筋肉の低下

2. 立ったり歩いたりが難しくなる「ロコモ」とは?

ロコモ(ロコモティブシンドローム)とは、筋肉・骨・関節・神経などの「運動器」とよばれる部分の障害により、立ったり歩いたりする能力が低下した状態のことです。

 

ロコモを放っておくと、次第に生活全体に悪影響が広がり、やがては負の連鎖を招くことになります。

 

【ロコモが生活に与える影響】
ロコモが招く負の連鎖の一例について、順を追って見ていきましょう。

 

①歩行が不安定になり、転倒しやすくなる
筋力が弱くなると、体を支えることが難しくなり、骨や関節の痛みも重なって歩きにくさを感じます。

 

さらに、神経の働きが鈍るとバランスを崩しやすくなり、とっさの反応が遅れてしまいます。その結果、ふらついたり、わずかな段差につまずいたりして、転倒するリスクが高まります。

 

 

②外出が億劫になり、閉じこもりがちになる
転倒への不安が強くなると、外に出るのが億劫になり、閉じこもりがちになります。

 

これまでは当たり前に行けていた買い物や散歩もためらうようになり、外出の機会が少なくなります。家にいる時間が長くなると、人との交流が減り、社会とのつながりが希薄になっていくのです。

 

 

③活動量が減り、生活の質が低下する
外出しないと、家の中で座ったり横になったりする時間が増えます。身体を動かさなくなることで、さらに筋力が低下し、ますます動けなくなってしまいます。

 

また、人と話す機会も減るため、口や表情の動きが乏しくなり、社会性や認知機能の低下にもつながります。

 

その結果「やる気が出ない」「毎日がつまらない」といったネガティブな気持ちになり、生活の質が大きく低下してしまうのです。

 

 

④要介護や寝たきりになるリスクが高まる
このような生活が続くと、やがて介護が必要な状態に近づいていきます。

 

もともと持病がある方は、それが悪化して重症化するリスクも高まり、最終的には寝たきりになる可能性も否定できません。

 

MySCUE記事 ロコモ 要介護イメージ

 

 

■ロコモ予防(歩行能力の維持)は「ケア活」につながる
このように、足腰の衰えは転倒や閉じこもり、さらには要介護状態へとつながる負の連鎖を生み出します。

 

逆に言えば、歩行能力を維持できれば、この連鎖を断ち切ることができます。いつまでも元気に歩き続けられること、それ自体が「ケア活」と言えるでしょう。

3. 家でできる“歩行能力を維持するロコモ予防体操”

ここからは、歩行能力を維持するためのロコモ予防体操を3つご紹介します。

 

特別な器具や広いスペースは必要ありません。短時間で気軽に取り組める内容を取り上げましたので、ぜひご家庭で取り組んでみてください。

 

■片脚立ち
バランス能力や脚の筋力アップに効果的な運動です。

 

MySCUE記事 ロコモ予防運動 片足立ち

 

<手順>
①壁やテーブル、手すりなど安定したものの横に立ち、片手を添える
②足を肩幅に開いたら背筋を伸ばし、片脚を5〜10cmほど上げる
③目線を前に向けたまま、10〜20秒上げ続ける
④左右それぞれ3回ずつ行う

 

慣れてきたら、支えている手の力を緩めたり、指先だけで支えたりして、少しずつ難易度を上げていきましょう。

 

 

■かかと上げ
ふくらはぎの筋力を高め、歩く時の安定性を向上させます。
また、ひざや股関節への負担を軽減したり、足のむくみを予防したりする効果も期待できます。

 

MySCUE記事 ロコモ予防体操 かかとあげ

<手順>
①足を肩幅に開き、壁やテーブル、手すりなど安定したものに向かって立ち、両手を添える
②両足のつま先を正面に向け、かかとをゆっくりと上げる
③ゆっくりと元の位置までかかとを下ろす
④これを10〜20回で1セットとし、2〜3セットを目安に行う

 

ふくらはぎの筋肉が収縮しているのを意識しながら、ゆっくりと正しいフォームで行うのがポイントです。

 

慣れてきたら、片足ずつ行う方法にもチャレンジしてみましょう。

 

 

■ドローイン
呼吸に合わせてお腹をへこませ、体幹の深部にあるインナーマッスルを鍛える運動です。
歩行中のふらつきを防ぎ、転倒予防に効果があります。

 

MySCUE記事 ロコモ予防 ドローイン

 

<手順>
①椅子に浅く腰掛け、両足を床にしっかりと着ける
②足を腰幅に開いて背筋を伸ばし、胸を軽く開く
③ゆっくり息を吐きながらお腹をへこませる
④お腹をへこませたまま、10〜30秒呼吸する
⑤ゆっくり息を吸いながら元の姿勢に戻す
⑥④と⑤を2〜3回繰り返す

 

肩に力を入れたり、腰を反らしたりしないようにするのがコツです。

 

今回ご紹介した体操のほかにも、厚生労働省の「健康日本21アクション支援システム~健康づくりサポートネット~」で「毎日かんたん!ロコモ予防」として実演動画が公開されています。

 

専門医が正しいやり方をわかりやすく解説しているので、動きを確認しながら取り組めます。ぜひ参考にしてください。

4. まとめ

安静にしていると、筋力は驚くほど早く低下してしまいます。しかも、失った筋力を元に戻すにはとても長い時間がかかります。

 

また、ロコモは転倒や閉じこもりなど、生活全体に悪影響を及ぼし、負の連鎖を招く恐れがあります。

 

ぜひ今日からご自宅でできるロコモ予防体操に挑戦し、元気に歩き続けられる「ケア活」を始めましょう。

 

監修:中谷ミホ

 

TOP画像:写真AC

イラスト:イラストAC

この記事の提供元
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著者:鈴木康峻

2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。

得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど

保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級

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