「親に脳トレを勧めたいけれど、計算や漢字練習など、机に向かって行うものは嫌がりそう…」そんな方には「デュアルタスク(二重課題)」がおすすめです。

 

デュアルタスクは「何かをしながら同時に別のことも行う」という脳の活性化法です。認知症予防に役立つ効果と、具体的な方法を詳しく解説します。

 

1. デュアルタスクとは二つの課題を同時に行うこと

デュアルタスクとは、二つの課題を同時に行う脳のトレーニング方法で、「二重課題」とも呼ばれています。

 

難しそうに聞こえるかもしれませんが、実は私たちが普段から無意識にやっていることなのです。

 

例えば、

・歩きながら電話で話す
・買い物しながら代金を計算する
・散歩しながら夕飯の献立を考える

 

このように「身体を使う作業」と「頭を使う作業」を組み合わせるのが、デュアルタスクです。


デュアルタスクには特別な道具や場所は必要ありません。日常生活の中で気軽に取り入れることができます。複雑な計算問題や細かいパズルを解く必要もないのです。

2. デュアルタスクが認知症予防に効果的な理由

デュアルタスクを行うと、身体と頭が同時に働くため、運動だけ、あるいは脳トレだけを行う場合と比べて、より広く複雑な脳の働きを引き出せます。そのため、認知症予防に効果的と考えられています。

 

例えば「足踏みをしながら、100から順番に3を引いていく」という課題を見てみましょう。

 

足踏みで身体を動かしながら、頭の中で計算を進めていきます。しかも計算は、単に「100から3を引く」だけでは終わりません。

 

「100-3=97」の答えを記憶しておかなければ、次の「97-3」を計算できないからです。

 

このように「直前の答えを頭に残しながら次の計算をする力」をワーキングメモリといいます。

この課題では、「身体を動かしながらワーキングメモリを働かせ続けて計算する」という複雑な処理を同時に行っているのです。

 

その結果、認知機能を担う脳の領域が強く働き、運動だけ・脳トレだけでは得られない脳全体の活性化につながります。

 

こうした脳のネットワークを効率良く刺激できる点が、デュアルタスクが認知症予防に効果的とされる理由なのです。

 

MySCUE記事 デュアルタスク 足踏み

3. 認知症予防に効果的なデュアルタスク脳トレを紹介!

転倒の心配がなく、体力に自信がない方でも安心して始められるメニューをご紹介します。

 

椅子に座ったままでも、テレビを見ながらでもできる簡単なものばかりです。ぜひ参考にしてください。

 

■計算しながら足踏み
椅子に浅く腰かけて背筋を伸ばし、その場で軽く足踏みをします。

 

足踏みを続けながら、「100から3を順番に引いていく(100、97、94…)」のように、簡単な引き算を声に出して行いましょう。

 

大切なのは、計算に詰まっても足踏みを止めないことです。

 

もし引き算が難しければ、「1から順番に数を数える」だけでも、あるいは「2の倍数を順番にとなえる」だけでも十分に効果があります。

 

慣れてきたら腕を振ったり、引く数を変えたり(例:100から7ずつ引く)して、少しずつ難易度を上げてみましょう。

 

MySCUE記事 デュアルタスク 座ったまま足踏み

 

 

■しりとりをしながら手を叩く
一定のリズムで「パン、パン」と手を叩きながら、しりとりをします。一人で行う場合は、「りんご→ゴリラ→ラッパ…」のように、思いついた言葉を声に出してつなげていきましょう。

 

計算の時と同様に、言葉に詰まっても手を叩くリズムを止めないことが大切です。

 

慣れてきたらご家族も一緒に参加してみてください。「本人が言う→家族が言う→またご本人が言う」という流れの中で、相手の言葉を聞きながら次を考える練習になり、注意を切り替える訓練にもなります。また、一緒に楽しむことで、ご本人のやる気も引き出しやすくなります。

 

 

■歌を歌いながら指折り体操
好きな歌や懐かしい童謡などを口ずさみながら、両手の指を動かしてみましょう。

 

最初は「親指から小指まで順番に折る」や「グーとパーを交互に繰り返す」といったシンプルな動きから始めます。

 

慣れてきたら、右手をグー、左手をパーの形からスタートし、歌に合わせて左右の手の形を入れ替えてみましょう。さらに難易度を上げるなら、左右で異なる動きを組み合わせるのがおすすめです。

 

たとえば、右手は親指だけ閉じて人差し指から順番に折り、左手はパーの状態から親指を折り始めるとかなり難しくなり、脳をしっかり刺激できます。

 

MySCUE記事 デュアルタスク グーパー

4. デュアルタスクをより効果的に行うコツ

脳に良いといわれるトレーニングでも、続けることができなければ意味がありません。
ここでは、デュアルタスクを無理なく・楽しく・長く続けるためのコツを紹介します。

 

■完璧を目指さない
デュアルタスクは、脳に意図的に負荷をかけるトレーニングのため、最初からうまくできなくても大丈夫です。

 

計算を間違えたり、言葉に詰まったりすることはあって当然。むしろ「うまくできない」くらいの難易度で行った方が、脳を一生懸命に働かせることができます。

 

完璧を目指して簡単すぎる課題ばかりこなしていると、脳への刺激になりません。国立長寿医療研究センターも「課題がうまくできるということは、脳への負担が少ないことを意味し、認知課題に慣れたら工夫して内容を変えることが大切」と提唱しています。

 

【参考】
国立長寿医療研究センター:認知症予防運動プログラム「コグニサイズ」

 

 

■楽しみながら行う
楽しさがなければモチベーションを保ちにくいため、一人で黙々と取り組むよりも、ご家族も一緒に挑戦することをおすすめします。

 

「できた!」という達成感も、「あー、うまくいかなかった!」という悔しさも、感情が動くことで脳を活性化してくれます。

 

親子や夫婦で一緒に取り組めば、自然とコミュニケーションをとる時間にもなります。ぜひ笑い合いながら、楽しく続けてみてください。

 

 

■きっかけとセットにする
「毎日〇時に必ずやる」と時間で決めてしまうと、義務感が強くなり、かえって続けにくくなることがあります。

 

そこでおすすめなのが、普段の生活の中で自然に訪れる「きっかけ」と組み合わせる方法です。


例えば、私が利用者さんにお伝えしているのは「テレビのCMが始まったら足踏みをしながら計算する」という方法です。番組中に何度も放送されるCMをきっかけにすれば、そのたびに無理なくトレーニングを取り入れることができます。

 

MySCUE記事 デュアルタスク きっかけセット

5. まとめ

デュアルタスクは、運動と脳トレを同時に行うことで脳を幅広く刺激し、認知症予防に効果的だとされています。

 

難しく考える必要はなく「何かをしながら考える、計算する」といった「ながら動作」を気軽に行うのがコツです。ぜひ今日から、無理のない範囲でご家庭でも取り入れてみてください。

 

監修:中谷ミホ

 

TOP画像:Pixta

イラスト:イラストAC

この記事の提供元
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著者:鈴木康峻

2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。

得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど

保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級

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