認知症の方をケアする中で「ご飯を食べてくれない」「なぜ箸を使わなくなったんだろう?」などの食に関する悩みを抱えるご家族は少なくありません。
今回は、認知症の方に食事の困りごとが起きる理由と、その対処法をご紹介します。

以下のひとつ、または複数の要因が重なって、困りごとになっているケースが多いです。
原因①食べ物を認識できなくなる
認知症の中核症状のひとつ「失認」により、食べ物を食べ物として認識できなくなり、口に入れるのを嫌がるようになります。
原因②食べ方がわからなくなる
認知症の中核症状のひとつ「失行」により、箸やスプーンの使い方や、白米やお味噌汁などの食べ方がわからず、食事が止まってしまう状態です。
原因③気分が落ち込んでいる
認知症の周辺症状(BPSD)により、不安や抑うつ状態に陥り、食欲が湧かなくなる場合があります。周辺症状の表れ方には個人差があり、幻覚や妄想が生じて「ご飯を食べたくない」という方も少なくありません。
原因④口の中や喉などに異常がある
加齢によって食べ物を噛む力や飲み込む力が低下し、食事をする意欲も低下することがあります。虫歯や歯周病により口の中に痛みがあり、食が進まなくなるケースもあるため、異常が疑われる場合は歯科を受診しましょう。
原因⑤服薬によるもの
認知症の治療のための薬の中には、副作用で眠気や口の渇きが強くなり、食欲低下の一因となる場合があります。本人やご家族だけの判断で服薬を中止するのは危険なため、気になる際は主治医に相談し、指示を仰いでください。
原因⑥食事をする場所や食事の味付けなどに問題がある
騒がしい、明るすぎるといった本人にとって落ち着けない環境だと、食が進まなくなる場合があります。
また本人の好みでない味付けや、ミキサー食や刻み食で彩りや食感を楽しめなくなったことが、食欲減退の一因になっていることもあります。
認知症の方の食事で生じやすい5つの困りごとと、それぞれの状態をまとめました。

1. 異食
食べ物ではないもの(例:洗剤、石鹸、消しゴムなど)を口に入れたり、食べてしまったりする状態です。ご本人にとってはそれが食べ物に見えている、または口に入れてしまう行為が抑えられないといったことが原因となります。
2. 過食
食事を摂ったこと自体を忘れてしまい、一日に何度も食事やおやつを要求したり、食べたりすることです。食べた直後にもかかわらず、「まだ何も食べていない」と強く訴えられる場合
3. 小食(食欲低下)
食事量が極端に減り、少量しか食べられなくなる状態です。重度になると、低栄養状態に陥ってしまう危険性があり、医療的なケア(入院など)が必要になることもあります。
4. 食べ方の変化
これまでと異なる食べ方をするようになることです。例えば、箸の使い方が分からなくなり手づかみで食べるようになる、食材を加熱せずに生で食べてしまう、以前は主食や主菜、副菜をバランスよく順番に食べていた方が一品ずつ食べるようになる、といった変化が見られます。
5. 食の好みの急変
これまで好きでなかったものを急に好むようになるなど、食の好みが突然変わってしまうことです。例えば、急に甘いものを非常に好み、菓子パンなどを一度に何個も食べるようになる、といったケースが見られます。
認知症の方の食事に関する困りごとは、日頃の関わり方を少し工夫するだけで改善するケースも少なくありません。ご本人の安心と安全な食事のために、実践できる主な対処法をご紹介します。
対処法①日頃から体調変化に気を配る
食欲低下には、体調の悪化や便秘などが影響している場合があります。しかし、認知症の方は体調の悪化を自覚できず、ご家族に上手く伝えられないことが多いです。
ケアに関わる方が本人の顔色や食欲、排せつの状態などを観察し、異常が疑われる場合は早めに病院を受診しましょう。
対処法②食事介助の方法を工夫する例えば本人がお箸を使えなくなった場合でも、ご家族がお箸を持たせてサポートすることで使い方を思い出すこともあります。また、お箸の使用が難しい方はスプーンで食べてもらっても良いですし、手づかみで食べても食後に手を洗えば問題ありません。
食べ物を認識できない場合は、家族が横に座って一緒に食事をすることで、ご本人も食べられるようになることがあります。
対処法③食事前に適度な運動を行う
運動量の低下によりお腹が空きにくくなっている方には、食事前に軽いウォーキングや座ってできる体操などを行うのがおすすめです。
運動によりエネルギーを消費できるだけでなく、気分もすっきりして食欲が湧きやすくなります。
対処法④食事をする環境を整える
食事中はテレビを消す、明るすぎず暗すぎない照明にするなど、環境を整えるだけで食欲が戻る場合があります。異食がある方は、食べ物以外のもの(花や雑貨など)を食卓に置かないようにしましょう。
対処法⑤食事の量や回数を調整する
一度に食べられる量が少ない場合は、食事回数を増やして総摂取カロリーを調整します。逆に一度にたくさん食べてしまう方や、食後すぐに「ご飯はまだ?」と言う方の場合は、1回あたりの食事量を減らして食事の回数を増やすのも一つの方法です。
ムセるのが不安で食べられない場合は、市販のとろみ剤を使ったり、食べ物を飲み込みやすい大きさに刻んだりすると効果的です。
また、食べ物を認識できないこと(失認)が原因で食べない方は、「白米だけでは食べないけどふりかけをかけたら食べた」「食器を変えたら食べた」という事例もあります。
対処法⑥おやつでカロリーを補う
ご飯をあまり食べない方も、まんじゅうやさつまいもなどのおやつなら食べられる場合があります。高カロリーゼリーなどの栄養補助食品でカロリーを補うほか、おやつの回数を増やすことも有効です(午前1回、午後2回、さらに夕食後にもう1回など)。
ゼリーや羊羹などの水分を含んだおやつは、脱水症状の予防にもつながるため、季節問わず取り入れるとよいでしょう。ただし、おやつの食べ過ぎは糖分の過剰摂取になるため注意が必要です。

認知症の方の食事介助において、以下のような対応は避けましょう。
・本人の意思を無視した無理強い
・箸やスプーンをうまく使えないことへの叱責
・食事のペースを急かすこと
・完全に本人任せにすること
食事を無理強いしたり、箸などを適切に使えないことを叱ったりすると、本人にとって食事が苦痛なものとなり、ますます食べなくなる恐れがあります。
一方で、完全に本人任せにしてしまうと、以下のようなリスクが生じます。
・過食による肥満
・食べない状態が続くことによる低栄養状態
・食べ物以外を口にしてしまい、窒息や体調不良など命に関わる危険
本人の思いやペースを尊重しながら、適切な栄養摂取ができるよう工夫することが大切です。
認知症の方の食事ケアでは「栄養補給と健康維持」と「美味しく楽しく食事をして生活を豊かにする」という視点が大切です。栄養バランスやカロリー摂取を工夫しながら和やかな食事環境を作ることで、本人の気持ちが安定し、穏やかな生活につながります。
さらに、ケアラーの負担軽減のひとつとして、ネットスーパーを利用するのもおすすめです。イオンのネットスーパーなら栄養補助食品やとろみ剤のほか、介護用おむつなどのかさばるケア用品も購入できます。
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監修:中谷ミホ
写真:写真AC
著者:小原 宏美
大学で音楽療法を学び、卒業後は児童養護施設、高齢者通所介護施設にて勤務。生活支援と並行して、音楽療法による利用者のQOL向上に取り組む。
現在はフリーライターとして、介護や音楽などに関する記事を執筆している。保有資格:保育士・介護福祉士・日本音楽療法学会認定音楽療法士(補)