「最近、親の食事量が減ってきた」「3食きちんと食べてほしいのに、なかなか食が進まない」。そんな不安を抱えていませんか。親の体重が落ちてきたり、検診で栄養状態について指摘されたりするとつい心配になります。

しかし、食が細い高齢者にとっては、食べることが負担になっていることもあります。そこで今回は、3食しっかり食べることを諦めても、低栄養対策ができる方法を紹介します。

1. 「3食しっかり」は本当に正解? 低栄養対策で見直したい思い込み

食が細くなった高齢者では、1回で食べられる量が少なくなっているケースが多く、食事回数にこだわろうとするほど負担が大きくなり、かえって食事の時間がつらくなってしまうことがあります。

3食を無理なく摂れるのが理想的ですが、難しい場合は別の方法を取り入れる柔軟さも必要です。まずは、3食にこだわる前提をいったん見直してみましょう。

●3食にこだわることで起こりやすい栄養摂取の落とし穴
1回に食べられる量が少ない状態で、3食しっかり食べようとすると、1回あたりの負担が大きくなります。食が細い方にとっては、それ自体がストレスになりかねません。

食事が楽しみではなく義務感のようになると、味わう余裕や会話の時間が減り、表情も硬くなりがちです。そのため、低栄養対策で重視したいのは、食事回数を守ることではなく、1日を通して必要なエネルギーとたんぱく質が確保できているかどうかです。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、75歳以上の場合、推定エネルギー必要量とたんぱく質の必要量は以下の通りです。


日本人の食事摂取基準(2025年版)
男性:エネルギー 1850~2250kcal、たんぱく質 50~60g
女性:エネルギー 1450~1750kcal、40~50g


身体活動レベルによって幅がありますが、3食という形にとらわれすぎず、総量で満たす工夫を考えることが、現実的な低栄養対策につながります。

出典:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316461.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316462.pdf


●「食べない=食欲がない」と誤解しない
高齢者が思うように食べられない背景には、加齢に伴う身体機能の変化や体調の影響が関係していることがあります。具体的には、次のような要因が挙げられます。

・噛む力や飲み込む力の低下
・胃もたれしやすい
・味覚の変化
・薬の副作用 など

これらが重なり、食欲そのものが落ちてしまう場合もあります。高齢者にとっては、食べたくないのではなく、思うように食べられないという状態なのです。

まずは、食べにくさがあることを前提に、量や形を工夫して、少しでも食べられたことを前向きに受け止める姿勢が大切です。


食欲不振のシニア

2. 低栄養対策の実践編「高カロリーおやつ」が救世主になる理由

3食食べることが難しい場合は、食事を増やすよりも少量で効率よく補うことが重要です。おやつは楽しみであると同時に、栄養補給の手段にもなります。ここでは、低栄養対策に高カロリーおやつの摂取がおすすめな理由を紹介します。

●間食は低栄養対策における立派な栄養源
朝食はご飯と味噌汁、昼食はご飯と漬物、夕食はご飯と煮物などの簡単な食事が続くと、3食そろっていてもエネルギーやたんぱく質が不足しやすくなります。

とはいえ、急にご飯やおかずを増やすのは現実的ではありません。長年の食習慣を短期間で変えることは難しく、無理をするとかえって食事が負担になることもあります。そこで役立つのが間食です。

おやつは単なる楽しみではなく、3食で足りない栄養を補うもう一つの食事と考えることができます。特に、食の細い高齢者にとっては、高カロリーのおやつを取り入れることで、少量でも効率よくエネルギーを補給できます。

●食事と間食についての柔軟な考え方
低栄養対策では、決まった時間に3食きちんと食べることだけが正解ではありません。大切なのは、食べられる時に、食べやすい形で必要な栄養素を確保することです。もちろん3食が無理なく摂れれば理想的ですが、食事量が落ちている方にとっては、食べることが負担になる場合もあります。

そのような時は、食事と間食を分けて考え過ぎず、1日の中で栄養を補うことが重要です。たとえば「朝はあまり食が進まないなら、午前中に補食を取り入れる」「夕食が残りがちなら、夕方におやつを取り入れる」などの工夫です。時間や回数に縛られず、摂りやすいタイミングで栄養を補うイメージで考えるとよいでしょう。

また、1食ごとのバランスにこだわりすぎる必要はありません。完璧さを求めるよりも、柔軟に考えた方が結果的に低栄養対策につながります。

3. 低栄養対策におすすめ! おやつの選び方

高カロリーであれば何でもよいわけではありません。低栄養対策としては、エネルギーに加えて、筋肉や体力の維持に関わるたんぱく質の摂取や、食べやすさなども含めて考えるのがポイントです。ここでは、低栄養対策におすすめのおやつの選び方を紹介します。

●エネルギー+たんぱく質が摂れるもの
低栄養対策では、エネルギー不足の解消だけでなくたんぱく質の摂取も重要です。たんぱく質は筋肉の材料となり、体力の維持や転倒予防にも関わるため、エネルギーとたんぱく質を同時に補えるおやつを選ぶとよいでしょう。

【おすすめ例】
・ヨーグルト(フルーツ入りや加糖タイプ)
・チーズ
・プリン
・アイスクリーム など

チーズ


上記のように乳製品や卵を使ったおやつは、エネルギーとたんぱく質、さらにカルシウムも一緒に摂りやすい食品です。あまり食べられない方は、少量でも栄養を補いやすいチーズもおすすめです。

また、栄養補助食品を活用すれば、エネルギーとともにたんぱく質やビタミン類も補えます。不足しやすい栄養素を補う機会としておやつを活用することが、効率的な低栄養対策につながります。

●噛みやすさ・飲み込みやすさを優先する
硬いものやパサつく食品、口の中でまとまりにくい食材は、食べること自体が負担になりやすく、誤嚥のリスクや摂取量の低下につながります。特に、高齢になると噛む力や飲み込む力が弱くなりやすいため、同じ食品でも形状や調理方法を工夫することが大切です。

嚥下に不安がある場合は、むせにくさを意識し、なめらかさや水分量、まとまりやすさを重視しましょう。しっとりとした食感や、口の中でバラけにくい形状にすることで、安心して食べることができます。例えば、以下のようなおやつが挙げられます。

・プリンやムースなどのなめらかなデザート
・高カロリーゼリーやヨーグルト
・牛乳や豆乳を加えて軟らかくした蒸しパン


プリン
ムース



ヨーグルトの中でもギリシャヨーグルトを選ぶと、カロリーやたんぱく質が同時に補えます。高齢者の状態に合わせて無理なく食べられる方法を見つけていきましょう。

●市販品と手作りを無理なく使い分ける
家族が毎回手作りにこだわりすぎると、低栄養対策は長続きしません。忙しい日や体調が優れない時は、市販品を上手に取り入れることもおすすめです。

特に、栄養補助飲料や高エネルギータイプのデザートは、少量でエネルギーやたんぱく質を補えるため、食が細い高齢者に向いています。

例えば、たんぱく質が補えるヨーグルトや高エネルギータイプのゼリー飲料などが取り入れやすいでしょう。スーパーやドラッグストアで購入できる商品も多く、常温保存できるものもあるため、常備しておくと安心です。

ただし、高齢者の中には市販品が苦手な方もいるため、嗜好に合わせて手作りするのもおすすめです。

4. 高カロリーおやつの注意点

エネルギーや不足しやすい栄養素を補える間食ですが、量が多くなり過ぎると逆効果になることがあります。間食で満腹になってしまうと、食事を食べなくなってしまうこともあるため、注意が必要です。

また、間食のみでは、体に必要な栄養素を補うことも難しくなります。高カロリーおやつを取り入れる際は、食事が摂れない時に活用することが大切です。

間食を取り入れる時は、200kcal程度までをひとつの基準にするとよいでしょう。少量でもエネルギーを補える範囲に収めることで、食事への影響を抑えながら栄養を補えます。ただし、糖尿病などで制限が必要な場合は自己判断で増やさず、かかりつけ医に相談しましょう。

5. まとめ

親の食事量が減ってきた時、3食しっかり食べることにこだわるほど、親も家族も苦しくなることがあります。低栄養対策で大切なのは、食事回数ではなく、1日トータルで必要な栄養を確保できているかという視点です。食べやすさを考えながら、必要に応じて高カロリーおやつを活用していきましょう。



参考:
●「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(厚生労働省)
・Ⅱ各論https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316461.pdf
・1-2たんぱく質https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001316462.pdf
のみ込みにくさを抱える高齢者などへ
「口から食べる」ことを支援する取り組み 「GOKURI🄬」を活用して栄養ゼリーの物性と摂取しやすさの関係を確認 ~「GOKURI🄬」を活用した高齢者向けの食育活動も実施中~(株式会社明治)


写真:写真AC、PIXTA



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著者:下田由美(しもだ・ゆみ)

管理栄養士として約10年間、病院・施設・保育園で幅広い年代の「食と健康」に携わってきた。その中で「食」と「心」は密接に関係していると気づく。現場では、利用者様の気持ちに寄り添いながら、無理なく安全に食べられる方法を模索し続けてきた。利用者様から「ありがとう。美味しかった」と感謝された経験は今でも忘れられない。現在は管理栄養士として、栄養指導や記事執筆、監修、レシピ作りなどを行っている。

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