これまで動線の確保・ワンルーム化(【第1回】)、医療健康モノの管理(【第2回】)というテーマでお伝えしてきました。最終回の今回は「温度変化をしのぐ」をテーマに、工事なし・低コストでできる暑さ・寒さ対策をご紹介します。モノの整理と温度管理は、セットで考えると、ぐんとうまくいきます。

1. 「古い家の断熱性の低さ」という落とし穴

 

築30年以上の一戸建て住宅の多くは、現在の断熱基準を満たしていません。夏は外の熱が室内にそのまま入り込み、冬は部屋の熱がどんどん外へ逃げます。特に問題なのが「部屋間の温度差」です。エアコンのある居間は快適でも、廊下・トイレ・浴室は暖房がなく、冬には10℃以上の温度差が生じることもあります。この急激な温度変化が「ヒートショック」を引き起こします。

 

また古い家は気密性も低く、隙間風が足元から入りやすい構造であることが多いですが、高齢者は冷えに気づきにくく、気がつかないうちに体温が下がっていることがあります。

 

2. 加齢による「体温調節機能の低下」を軽く見ないで

 

加齢とともに、体温を一定に保つ機能が衰えます。さらに「暑さ・寒さを感じにくくなる」こともよく知られています。「涼しいから大丈夫」と思っていても室温が30℃を超えていたり、冷えを感じないまま低体温になっていたりします。

 

熱中症もヒートショックも「自宅の中で起きる」事故なのです。だからこそ、家の環境を「本人が快適と感じるか」ではなく「安全な温度に保てているか」という視点で整えることが大切です。温度計・湿度計を各部屋に置くだけでも、命を守る第一歩になります。

 

3. 「サッと羽織れる、サッと脱げる」環境をつくる

 

急激な温度変化に対応するには、「着替えやすい服の環境」を整えることが先決です。近年は気候の変動が激しく、春が短くいきなり夏になったり、夏が終わったと思ったらいきなり冬のような寒さになったりと、衣替えの暇もないほどの温度変化は、体調を崩しやすく、親だけでなくケアラーにとっても大きな負担となります。

 

そこで、両手を広げた分くらいの幅のあるクローゼット一つで衣替え不要の「オールシーズン収納を目指しましょう。真夏のものと真冬の分厚いコート類は、手の届くところに衣装ケース1つ分程度にまとめ、さっと入れ替えができるようにするのが理想です。

 

さらに、着た服を左側からかけるなど、クローゼット内に戻す位置を決めておけば、よく着る服の順に、自然と手の届きやすい位置にきます。これは【第2回】で説明した時系列で管理する「家庭用医療モノ」の整理と同じです。

 

また、ここでも「捨てる」は禁句。あまり着ていない服は捨てるのではなく、「一時保管として別の部屋に移しておこうか」と提案することで、親も安心してクローゼットをスリム化できます。

 

また、これから服を選ぶときは、洗濯機でざぶざぶ洗えて乾きが早い素材を意識してみてください。おしゃれは清潔感あってこそ。「清潔であること=若々しさを保つこと」という話を親にしてみるのもいいでしょう。

 

4. 全自動洗濯機で衣類やタオルの管理を楽に

 

もし実家で二槽式などの古い洗濯機を使っているのでしたら、経済的な余裕があれば、乾燥機付きの全自動洗濯機への買い替えも検討してみてください。

 

介護が始まると、衣類だけでなくタオルやシーツの洗濯物が思った以上に増えます。多少高価でも、干す・取り込む作業をなくせれば、1日20分前後の時間が生まれます。その時間をケアラー自身の休息や、親との会話にあてられます。

 

おすすめは洗剤を自動投入できるタイプです。ボタン一つで洗濯から乾燥まで完了するので、梅雨どきに訪問介護の方がいらしても、洗濯物を部屋干しにしていて慌てる場面はなくなります。洗濯がすぐにできれば、親好みの最低限のものだけに数が絞りやすくもなりますので、服やタオルの管理もぐんと楽になります。

 

5. 手軽にできる【夏の温度対策】遮熱カーテン・すだれ・エアコンの活用

 

カーテンを替えると、モノを増やさず、一気に部屋のイメージを変えることができます。窓周りの置きっぱなしのモノを片づけるきっかけにもなりやすいので、親の好きな柄のものを選んで気分を上げるとよいでしょう。

 

カーテンは、遮熱カーテンがおすすめです。遮熱カーテンは通常のカーテンより室内温度を2〜4℃程度下げる効果があります。同時に安全のため、防炎効果のあるものを選んでください。

 

南向き・西向きの窓には、外側にすだれやシェードを取り付けると、室内に熱が入る前に日差しを遮断できます。「外から遮る」ほうが「内側で遮る」より効果が高く、強い日差しの時間帯だけ下ろして使えば気分転換ができます。

 

エアコンと扇風機・サーキュレーターを組み合わせると、設定温度を上げてもしっかり涼しさが届き、電気代の節約にもなります。エアコンは「こまめに消す」より「つけっぱなし」のほうが電気代が安くなるケースがあります。特に夏の熱中症対策では、短時間の外出中なども「弱」で運転したままにしておくことをおすすめします。

 

フィルターの汚れはエアコンの効率を大幅に下げますので、ヘルパーや家族が定期的に掃除を担当しましょう。暑くなる前にエアコンのクリーニングを依頼しておくと、清潔に夏を迎えられるだけでなく、エアコン周りの片づけのきっかけにもなります。

 

6. 手軽にできる【冬の温度対策】隙間風をふさぐ・窓の断熱・足元の冷え

 

冬の冷え対策で最もコスパが良いのは「隙間風をふさぐ」ことです。ホームセンターや100円ショップで買える隙間テープを貼るだけで、体感温度がかなり変わります。窓からの冷気には断熱フィルムが有効で、透明タイプなら見た目もきれいで貼り付けるだけで使えます。

 

スリッパは滑りやすくひっかかりやすいので、レッグウォーマーや滑り止め付きの靴下を試してみるなど、冷え対策と転倒防止を同時に叶えられるように工夫してみましょう。寝室では乾燥を防ぐため、安全な加湿器の導入も検討してください。

 

7. ヒートショックが怖いのはトイレと浴室

 

最もヒートショックが起きやすいのは、暖かい居間から冷えたトイレや浴室に移動する瞬間です。この温度差を縮めることが命の安全に直結します。トイレには温水洗浄便座や暖房便座カバーを。脱衣所・浴室は不要な化粧品類をできるだけ整理し、小型の電気ヒーターや浴室暖房機を活用して、入浴前に室温を上げておきましょう。入浴前に数分シャワーを出して浴室内を温めておくだけでも、効果があります。

 

【今日から始める温度対策 ポイント】

☑衣類も清潔第一。「オールシーズン型」収納に。「サッと羽織れる・脱げる」環境が体温管理の基本

☑温度計・湿度計を各部屋に置く。「安全な温度・湿度か」を客観的に把握することが第一歩

☑トイレ・浴室の温度差を縮めてヒートショックを防ぐ。入浴前シャワー習慣を親と共有

 

8. 小さな工夫の積み重ねが命を守る

 

この3回シリーズのどの回でも共通してお伝えしてきた工夫には、「大きなお金も工事も必要ない」ということです。身近なアイテム、少しの工夫、そして「気づき」があれば、親の暮らしの安全性はぐんと高まります。

 

ケアラーとして「まだ何かが心配」と感じるのは、まだ整えられていない部分があるからかもしれません。今回ご紹介した内容を、まず1つだけ試してみてください。隙間テープを貼る、クローゼットのカーディガンを取り出しやすい場所に移す、温度計を置く——それだけでも、確実に前進です。

 

介護は出口が見えなくてつらいこともあると思いますが、親の家を整えることは、ケアラーが、親の老いだけでなく自分の老いのシミュレーションをすることにもつながります。親もケアラーも訪問介護のスタッフの方にも三方よしの安心できる空間を、少しずつ広げていけることを応援しています。3回シリーズを最後まで読んでいただき、ありがとうございました。片づきますように。

 

渡部亜矢

 

 

写真:PIXTA

 

 

この記事の提供元
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著者:渡部亜矢(わたなべ・あや)

一般社団法人実家片づけ整理協会 代表理事。
片づけ講師、実家片づけアドバイザー。都市銀行での住宅融資業務、出版社での編集者などを経て現職。片づけが苦手な方向けに、自宅・実家の片づけをテーマの講座を開講。企業・自治体・空き家対策などで講師活動を行っている。
主な著書:『実家の片づけ 親とモメない「話し方」』『見てすぐできる!【図解】60歳からの「紙モノ」整理』(青春出版社)、『カツオが磯野家を片づける日~後悔しない「親の家」片づけ入門』(SB新書)、『プロが教える実家の片づけ』(ダイヤモンド社)他多数。
https://jikka-katazuke.jp/

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