1. 電話の声だけでは母の認知症に気づけなかった
わたしは大学進学を機に上京し、岩手の実家へはスキー場へ行くために、東京の友人を連れて年1回程度帰省していました。遊ぶための帰省であり、親の見守りではありません。一方で母の背中が少し曲がり、背が縮んでいる気はしましたが、年齢のせいと深刻には考えませんでした。
しかし実家から車で1時間ほど離れたところで暮らすわたしの妹から、「お母さん、最近もの忘れが増えてきたかも」と電話があり、さらに2011年の東日本大震災も重なって、母の見守りが必要と考え、電話をするようになったのです。
母の反応はいつも同じで、「元気よ、特に変わりないから」でした。電話の声では、妹から聞いていたもの忘れは分からなかったし、おそらく年齢的なもので心配ないだろうと思いたかったのかもしれません。結局このやりとりから2年後、母は認知症と診断されました。
2. 子どもに心配をかけまいとする親たち
親が元気なうちは電話のやりとりで、見守りをする方が多くいます。
「お母さん、健康診断の結果どうだった?」
「お父さん、お酒飲み過ぎてない?」
親が事実を伝えてくれればいいのですが、子どもに心配をかけまいとする親は多くいます。
また認知症になると、会話を取り繕うケースがあります。本当は自分の記憶をたどって回答したいのに、うまく思い出せない。でも会話の流れを止めたくはないので、子どもの話にてきとうに相槌を打ったり、その場の思いつきで答えたりしてしまうのです。
子どもは親の取り繕いを信じて安心するのですが、可能であれば親の実家へ行って自分の目で確認したほうがいいと思います。言葉はいくらでも取り繕えますが、行動までは取り繕えない部分もあります。
下の写真は、実家にあった9個のクリープです。いくら母が「元気で変わりない」と電話では言っていても、行動までは隠しきれなかった一例です。
3. 地域の力で親の見守りはできるか?
母に認知症の症状が現れていよいよ本格的な見守りが必要になったとき、たまたま実家にあったチラシの文字「地域で支える」が目に留まりました。
地域で支えるとは、ご近所や町内会、民生委員やマンションの管理組合などの力を借りて、親を見守るという意味です。果たして地域の力を借りて、母の見守りができるのかを、わが家ではシミュレーションしてみました。
まずご近所ですが、わたしは岩手の実家を離れて20年以上経過していたので近所づきあいはなく、しかもわたしの知らない新しい方ばかりになっていました。また母もわたしも町内会の行事にも参加していなかったので、全くつながりがなかったのです。
地域住民の生活や福祉全般の相談、援助活動を行っている民生委員は、たまたまわたしの中学時代の同級生のお母さんが担当されていたので、唯一頼りにしました。しかし地域全体を見守る民生委員の担当範囲は広く、頻繁に実家を訪問してくれるわけではありません。
結局、地域の力で母を見守ることは諦め、東京に居るわたしと岩手の妹による訪問と道具の力を借りて見守ることにしました。
高齢者の見守りに力を入れている地域もありますし、ご近所と仲のいい方もいらっしゃると思います。地域による見守りが可能ならば、積極的に活用してみてください。その際に重要なのは関係性です。
例えば親が急に倒れたり、自然災害にあったりしたときに、遠慮なく連絡できる相手でしょうか? 例えば早朝や深夜に連絡できないようでは、いざという時に地域の見守りは機能しません。
昔と比べて地域とのつながりは希薄になっていますし、親と離れて暮らしているのであれば尚のことだと思います。自分の親を地域で支えられるかどうか考えてみてください。
4. 見守りカメラを使った親の見守り
わが家では電話や地域の力だけでは見守りは不十分と感じたので、見守りカメラを使って24時間いつでも母を見守ることができる環境を整えました。
東北新幹線が不通になるほどの大きな地震を二度経験しましたが、その時も東京の家から岩手の実家の様子をすぐに確認して、母の安否確認ができました。地域の力を借りなくても見守りができますし、映像で母の様子が分かるので電話の回数も減りました。
親が元気なうちは、見守りカメラは監視されているようでイヤと言われるかもしれません。その場合はプライバシーに配慮したツールを活用しましょう。トイレのライトをONにするとメールで通知が来るツールや、ドアの開閉をスマホに通知してくれるツールなどが販売されています。
あるテレビ番組に、新型コロナウイルスの影響で介護施設に居るお母さんと面会できない娘さんが出演されていました。思うようにコミュニケーションが取れない日々が何年も続き、そのことに慣れてしまって、お母さんを思い出す機会が減ったと仰っていました。
わたしが母を思い出さない日がないのは、見守りカメラでいつでも母の様子を確認できる環境にあるからかもしれません。親の見守りに活用できるものは何でも使って、複数の目で親を見守っていきましょう。