軽度認知障害の実母と同居する50代のケアラー、山内聖子が日々の出来事や思いを綴るシリーズの3回目。暖冬が多くなってきたとはいえ、冬の寒さはこたえる。とはいえ、外出がめっきり減った母に、心中穏やかではない聖子。特段の問題がないとはいえ、ふだんの生活での心配ごとの場合、誰に相談してよいかわからないのもケアラーによくある悩みだ。このままではいけない、と思いつつ、解決策が見つからない聖子だったが。
冬の初め、足に軽いやけどを負ってから、母は前にもまして外に出ることが少なくなり、デイサービスでの軽い運動以外、特に運動らしい運動をしないまま過ごしてしまっていた。寒さや体調の不安定さも影響していたのかもしれないけれど、ふとした瞬間にちょっとよろけたり、家の中の廊下でも手すりにつかまってゆっくり歩いていたりするのが目につく。そんな様子を見ながら、母の足腰の筋力が低下してきたように感じ、「フレイル」という言葉が頭の中に浮かび、少し心配になっている。
小春日和の昼間に散歩に誘っても、「寒いから」「お友達から電話がくるはずだから」と言って外に出るのを避ける母。最近はどうしても外に出たがらなくなっている様子。理由は何だろう、と考えてみたけれど、特にひざや腰の痛みがある、というわけでもなさそう。
テレビの健康番組やシニアケア関連のウェブのメルマガの話題で、「シニアにはたんぱく質摂取が大切」という情報を目にしてから、お母さんの食事には気を遣ってきた。夕食では特に、肉や魚のたんぱく質をしっかり摂るように心がけているものの、以前に比べると食が細くなってきていて、量は足りていないのかもしれない。運動不足も相まって、母の筋力が落ちてきているのかもしれない。
そんな時には愛知県に住み、看護師をしている妹の奈津子に聞いてみるのが一番。さっそく奈津子にLINEで連絡をしてみた。すると、「もしかしたら尿もれが気になっているかもしれない」とのこと。確かに母は年齢を重ねるごとにトイレにいく回数が多くなってきている。夜中に何度もトイレに立つこともある。その煩わしさや不安が外出をためらう一因になっているのかもしれない。
奈津子からは、「尿もれ用のパッドやパンツタイプのオムツなど、便利なアイテムがあるから、使ってみたらどうか」とアドバイスがあったけれど、母はその類のアイテムを使うことに抵抗があるだろうとも感じた。でもこの問題も重要なこと。母の様子をみながら、いずれ何らかの対策をたてなくては。
そんなわけで、母の出不精の原因はすぐにはわからないし、母が嫌がりそうなことを今すぐに勧めるわけにもいかないのだけれど、奈津子とのやりとりの中でちょっとした気づきがあった。「お姉ちゃんが運動を始めたら、お母さんも気が変わるんじゃない?」というもの。確かに……私自身も確かに運動不足を実感しているし、それを覆して運動を始めたら、母への刺激にもなるのではないか?
また、外に出るようになるためのきっかけも必要なのかも、ということで、奈津子が母を誘い、私も一緒に日帰りでどこかに出かけよう、ということになった。もうちょっと暖かくなってきたら、そのために上京してくれるのだそう。それはいいかもしれない。母は元々アクティブで、以前はお友達とちょくちょく首都圏近辺の観光地に出かけていた。特に好きそうな場所に誘ってみよう、という作戦だ。「そのためにはお姉ちゃん自身も少しは運動するなり、散歩するなり、足腰を鍛えておいてね」と言われてしまった。
後日、奈津子がすぐに母に連絡をし、母の了解をとりつけてくれた。最初はあまり気乗りしなかったお母さんも、元気で勢いのある奈津子に押されて、OKしてくれたよう。姉妹で協力して、母の気持ちを動かすことができたので、私も気持ちが軽くなった。
私は翌日からさっそくウォーキングを始めてみることにした。以前ジョギング用に、とかっていたものの、ほとんど使わずに終わっていたウェアを引っ張り出し、気温の高い昼間にひとりでスタート。外に出ると気分もすっきりして、体を動かして汗をかくことでストレス解消にもなるようだ。私もこの習慣をできる限り続け、もっと健康的な生活を目指していきたい。そのことが、母にも良い影響を与えられるかもしれない。
写真上:著作者:freepik
奈津子とのお出かけに向け、母にも歩きやすいシューズを探してみよう。服や靴にこだわりのある母だから大変そうだけれど、気に入ってくれたらそれもよいきっかけになるかもしれない。また、そんな小さなきっかけから、少しでも活動的になってくれたら、と思っている。
写真(2点ともに):ピクスタ
著者:MySCUE編集部
MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。