岡崎家の「ケア活」問題、「財産整理」に続き「墓じまい」のお話です。前回に続き、墓じまいをした当日のことや費用について考えさせられた「墓じまいの一部始終【後編】」です(※これまでの「墓じまい」のアレコレは「墓じまい編①~③」を参照ください)。
いよいよ、先祖代々のお墓から取り出されたご先祖さまと祖父、祖母、母親、死産した弟(たちのお骨)が、永代供養塔に移ります。白い袋(骨袋)に1つにまとめられお骨は、石材店の方が押すリヤカーに乗せられて、本堂の横に建てられた永代供養塔へ。その後ろに、ご住職を先頭にして私たち家族が続きました。
永代供養塔に到着すると、石材店の方が永代供養塔の下にある納骨堂の扉を開けて、そこにみんなのお骨が入った骨袋を納めました。なんだか急に「子どものころから祖母や両親とお参りしていた先祖代々のお墓を墓じまいしたんだ」と急にしんみりしていると、読経を終えたご住職から「改めて、こちらでお線香をあげて、手を合わせてください」と声を掛けられました。私、夫、息子が手を合わせ終わると、納骨堂の扉が閉められ、「これで終了です」と無事に墓じまいが終わったことを告げられました。
最後に石材店の方から永代供養塔の横にある石碑を見るように言われ視線を移すと、「岡崎家先祖代々之霊位 施主 ●●●●(父の名前)」に続いて「祖父の戒名」「祖母の戒名」「母親の戒名」などが彫られたプレートが石碑にはめられていました。「墓じまい」が終わり、少しセンチメンタルな気分になっていたのに「えっ、あれが3万円だと言われた永代供養塔用のプレートか!」と急に現実に引き戻されます。今度はやるせない気持ちになって、3枚の1万円札に羽が生えて遠くに飛んでいくのを想像していると、ご住職から、さらに大量の1万円札が飛んで行きそうな永代供養の費用などに関する話がしたいという要望があり、本堂へ移動することになりました。
【専門家(株式会社OAGウェルビーR 代表取締役 CEO 黒澤史津乃さん )が解説!】
※以下、グレー部分
ご家族個別のスペースではなく、永代供養塔など他人と一緒に入る合祀の墓地・納骨堂に先祖のご遺骨を納めた後は、お墓参りをどうしたら良いのだろうと、戸惑う方もいらっしゃるかもしれません。
ご家族にとって負担が減るのは、墓掃除の必要がなくなることです。
屋外の永代供養塔か樹木葬か、室内のロッカー式かなどによってお参りする対象も違ってきますが、そこに故人が眠っていることは確かです。管理者による合同供養は月に一度、またはお盆やお彼岸の時期のみということが多いので、これまでのご家族の慣習に合わせてお参りし、可能であれば墓地・納骨堂の規定にしたがってお塔婆を立てる、お花を供える、回忌法要を行うなどの供養は、ぜひ続けてください。
永代供養のメリットは、お墓参りに行ける親族が誰もいなくなっても供養を続けてもらえることです。ご家族の今後のあり方に伴ってお墓参りが出来なくなった場合も、そのためにした墓じまいですので、後ろめたさを感じることはまったくありません。ご先祖さまもきっとご理解してくださっていることでしょう。
イラスト(下):日野あかね
本堂でご住職から伝えられた話をダイジェストでお届けします……あくまで我が家のケースですが、なんとなくイメージするための参考までに。
五十回忌を迎えているご先祖さまの永代供養代は免除ですが、祖父は翌年が五十回忌だったため、ぎりぎりで(!?)永代供養代免除にはならず(涙)。そのため、祖父、祖母、母親、死産だった弟の永代供養代は必要になるのですが……、ご住職によると、生前の母親に良くしてもらった(母親はこまめにお寺に寄付などをしていたみたいです)ため、弟の永代供養代はなし(このあたりはかなり菩提寺の裁量というか、コレという決まりがなく、非常に曖昧だと思いました)。ここに仏壇の魂抜き代、母親の一周忌代、墓じまい当日の祈祷代などが加わるものでした。
結果、
●永代供養代1体60万円×3=180万円 (母親の遺言的メモにあった価格通り ※詳細は「墓じまい編②」を参照)
●上記にあげたそのほかの諸費用が約10万円
●先祖代々のお墓の処分代(墓じまいのための対応や永代供養塔用のプレート代も含む)
約30万円
我が家の先祖代々のお墓は歴史が長いため、回りが広くぐるりと低い塀で囲まれていました。本来はその塀の撤去代も必要ですが、それらは菩提寺が再利用するとのことで撤去代はなしに。これも請求されていたら、いくら加算されていたことでしょう……。
というわけで、ざっくりとした計算ではありますが、我が家の「墓じまい」には、約220万円の費用が掛かりました。分割で支払ってもいいというご住職のお気遣いに、高額だという事実を再認識させられました。
先祖代々のお墓を「墓じまい」したことで父親が入るお墓がなくなったわけですが、それは永代供養塔に予約(?)された状態になっているため、「安心してください」とのことでした(その時にまた60万円が必要)。
墓じまいに伴う永代供養の費用などについては、標準価格や相場があるわけでも、法規制があるわけでもありません。従ってすべて墓地管理者の自由裁量です。
今回の場合、墓地管理者であるお寺がある程度の内部規程として料金を決めている中で、ご遺骨の数が多過ぎて負担が重過ぎるだろうから割引して差し上げようというお気持ちがあったのではと思われます。一方で、支払えないほど高額の料金を提示してしまうと、「将来、無縁墓になり放置されることになっても、無い袖は振れないから仕方ない」と、墓じまいを諦められてしまうと、最終的にお寺側の負担となってしまうため、お寺側も落としどころを探っていたのかも知れません。
一通りの話が終わり、ご住職が本堂から出ていったあとに、サラリーマンである夫が、「墓じまい」に関して漏らした言葉が非常にリアルで忘れられません。
「子育て世代であったり、30、40代のサラリーマンが『はい、わかりました!』って、すぐに200万円以上の額を支払えるのかな?」
本当にその通りで、母親の葬儀はコロナ禍で家族葬で費用が抑えられたり、母親が加入していた生命保険が支払われたことで、どうにかこうにか「墓じまい」の費用を捻出できましたが、正直なところ、それらがなければ「墓じまいをしたい」と思ってもすぐに、進めることができなかったかもしれません(子育て中かつ将来のためにチビチビ貯めている私の貯金だけでは絶対無理。生前の母親はこの金額をどうやって捻出しようとしていたのだろうか……)。
広大な菩提寺の墓地には「関係者と連絡が取れません。ご存じの方は●●寺までご連絡ください」といった札がお墓の前に立てられ、私の背丈より伸びた雑草に囲まれて倒壊寸前のお墓がちらほらありました。そういったお墓の背景には、夫が懸念した「墓じまい」に掛かる費用のことや少子化の影響で墓守がいなくなってしまったなど、さまざまな事情あるのでしょう。そんなさまざまな事情から、「墓じまいをしたくてもできない!」という人がいるはずです。
だからこそ、金銭的な面も含めて自分一人で抱え込む前に、親御さんが元気なうちから家族で「ケア活」の1つとして「墓じまい」について話し合っておくことが重要なのではないでしょうか。「墓じまい」にはこのコラムをパート4まで作れるほどの時間と手間が掛かります。さらに、我が家のように菩提寺が遠方であれば、泊まり込みで行かなければならないことも……(この費用もバカにならない)。たとえば、親の介護が始まれば、そちらが優先されてしまいます。そういった観点からも、親御さんが元気なうちに話し合うことがおすすめなのです。
金銭的に折り合うことができなかった、問題に気付いていなかった、手続きの実行に至らなかった、親族間で合意できなかったなどのさまざまな事情により、墓守りがいなくなったまま墓が放置されてしまう例は、今後ますます増えていくことでしょう。
令和5年の総務省調査によれば、公営墓地・納骨堂を持つ765の市町村のうち、60%近くが「無縁墓が1区画以上ある」と回答しており、全区画の10%が無縁墓を占めている霊園もあるようです。
「墓地、埋葬等に関する法律」の施行規則第3条では、無縁墓は「死亡者の縁故者がない墳墓又は納骨堂」と定義されています。
墓守りがいなくなり、管理費も支払われなくなった無縁墓でも、墓地管理者が勝手に撤去することはできず、「墓地、埋葬等に関する法律」施行規則により、①名簿や戸籍などで墓地所有者を探す、②1年間官報公告と立札により関係者に提示、③1年間で墓地所有者が名乗り出なかった場合に墓地管理者は無縁墓の墓石を撤去し遺骨を合祀、という手順で放置された無縁墓の対応を行わなければなりません。その際にかかる解体・撤去費用は、墓地管理者又は自治体が負担することがほとんどです。
「放置しても何とかしてくれるんだ」と考えるか、「迷惑を掛けないためにもキチンと墓じまいをしておこう」と考えるか。一人でも多くの方が、過度な金銭的負担を負わずに安心して墓じまいができるよう、統一ルールづくりを含めた国民的議論が必要な段階に来ているのではないでしょうか。
写真:写真AC
監修、アドバイス:黒澤史津乃
【監修者プロフィール】
黒澤史津乃(くろさわ・しずの)…株式会社OAGウェルビーR 代表取締役 CEO
20年以上にわたり、家族に頼らずに老後とその先を迎える「おひとりさま」の支援に携わっている。2007年行政書士登録。2019年消費生活アドバイザー及び消費生活相談員(国家資格)登録。
一般社団法人全国高齢者等終身サポート事業者協会代表理事として業界のけん引役をつとめる他、一般社団法人横浜イノベーション推進機構代表理事として、横浜市内の多様で複雑化した広範囲の地域課題解決にも取り組む。
内閣官房「認知症と向き合う幸齢社会実現会議」構成員、厚生労働省「身寄りのない高齢者等の生活上の課題実態把握事業」有識者委員。社会福祉法人浴風会特別研究員として厚労科研「独居認知症高齢者の権利利益の保護を推進するための調査研究」(25GB0101)における分担研究を担当。
この著者の前の記事
・こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編③
・こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編②
・こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編①
・こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編①
・こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編②
・こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編③
著者:岡崎 杏里
大学卒業後、編集プロダクション、出版社に勤務。23歳のときに若年性認知症になった父親の介護と、その3年後に卵巣がんになった母親の看病をひとり娘として背負うことに。宣伝会議主催の「編集・ライター講座」の卒業制作(父親の介護に関わる人々へのインタビューなど)が優秀賞を受賞。『笑う介護。』の出版を機に、2007年より介護ライター&介護エッセイストとして、介護に関する記事やエッセイの執筆などを行っている。著書に『みんなの認知症』(ともに、成美堂出版)、『わんこも介護』(朝日新聞出版)などがある。2013年に長男を出産し、ダブルケアラー(介護と育児など複数のケアをする人)となった。訪問介護員2級養成研修課程修了(ホームヘルパー2級)
https://anriokazaki.net/