むせやすいご家族でも、やわらかい食品なら安心して食べられると思っていませんか? 実は、パンのように一見食べやすそうな食品でも、水分が少ないと口の中でまとまりにくく、むせや誤嚥のリスクにつながることがあります。そこで今回は、低栄養対策にも役立つ、むせにくいおやつの特徴と選び方のポイントを解説します。
高齢になると、噛む力や飲み込む力、唾液の分泌量が少しずつ低下する傾向があります。そのため、以前は問題なく食べられていた食品でも、口の中でうまくまとめられない、喉へスムーズに送り込めないことがあります。
やわらかい食品なら安全と思われがちですが、やわらかさだけで安全性を判断するのは危険なのです。やわらかい食品でもむせやすい理由を見ていきましょう。
●パンも要注意? パサつく食品がむせやすい理由
パンはやわらかく食べやすいイメージがありますが、むせやすい方にとっては要注意です。特に、食パンや菓子パンなどは水分量が少なく、口の中でパサつきやすい特徴があります。
唾液が十分に出ていれば口の中でまとまりやすくなりますが、加齢によって唾液量が減っていると、飲み込みやすい状態に整えることが難しくなります。飲み込む力が弱くなっている場合は、その方の状態に合わせて食品の選び方や食べ方を見直すことが大切です。

●食べ方によってもむせやすさが変わる
食品そのものだけでなく、食べ方もむせやすさに関係します。例えば、パンやお菓子をお茶や水で流し込むような食べ方はおすすめできません。よく噛まないうちに飲み物で流すと、食べ物と水分が口の中で分離しやすく、飲み込むタイミングがずれやすくなります。
また、嚥下機能が落ちている場合、一口分の量が大きかったり多かったりすると誤嚥のリスクが高まります。むせやすい方は、少量ずつ口に入れ、ゆっくりとよく噛んでから飲み込むようにしましょう。
むせにくいおやつを選ぶときは、飲み込みやすい形状や食感かどうかを確認することが重要です。ここでは、嚥下機能に合わせた高齢者におすすめのおやつの選び方を紹介します。
●食べやすいおやつに共通する3つの条件
食べやすいおやつに共通する条件は、以下の通りです。
・まとまりやすい
・適度な水分がある
・なめらかな食感
口の中でバラバラにならず、ひとまとまりになりやすい食品は、飲み込むタイミングを合わせやすくなります。また、喉に張り付きにくく、スムーズに送り込めることも大切です。
●避けたほうがよい食品の特徴
飲み込む力が低下している方が避けたほうがよい食品は、パサつくもの、口の中で崩れやすいもの、細かく散らばりやすいものです。
例えば、クッキーやナッツ類などは、噛んだあとに細かくなって口の中に残りやすく、むせにつながる可能性があります。最近むせることが増えている場合は、いったん控えて様子を見ると安全です。
食事量が少ない高齢者にとって、おやつは楽しみだけでなく、エネルギーやたんぱく質を補う機会にもなります。ただし、嚥下機能には個人差があるため、必ずしもすべての方に安全とは限りません。
むせが多い場合や体調がすぐれない日は、無理をせず、その方の状態に合わせて調整しましょう。ここでは、高齢者におすすめのおやつを紹介します。
●プリン、ムース
プリンやムースは、なめらかでまとまりやすく、むせにくいおやつとして取り入れやすい食品です。口の中でバラバラになりにくく、スプーンで少量ずつ食べられるため、食欲が落ちている方にも適しています。卵や牛乳を使ったプリンであれば、エネルギーに加えてたんぱく質も補いやすくなります。
ほかにも、かぼちゃのプリンや豆腐ムースもおすすめです。かぼちゃは加熱するとやわらかくなり、ペースト状にしやすい食品です。豆腐はなめらかな食感に整えやすく、植物性たんぱく質の補給にもつながります。

●ゼリー
ゼリーは口当たりがよく、水分補給にもなるため、高齢者のおやつとして選ばれやすい食品です。ただし、硬すぎるものや弾力が強すぎるもの、口の中で細かく砕けるものは、かえって飲み込みにくい場合があります。
ゼリーを選ぶときは、スプーンですくったときになめらかで、口の中でまとまりやすいものを選びましょう。市販のゼリーを使う場合も、摂取時にむせが生じないか、少量から確認することが大切です。
●ヨーグルト、乳製品
ヨーグルトや乳製品は、なめらかでおやつとして取り入れやすく、たんぱく質やカルシウムの補給にも役立ちます。特にギリシャヨーグルトのように比較的たんぱく質量が多いものは、食事量が少ない方の低栄養対策としても取り入れやすい食品です。
甘みが欲しい場合は、はちみつやジャムを少量混ぜると食べやすくなります。ただし、サラサラした飲むヨーグルトは、むせやすい方にとっては飲み込みにくいこともあります。液体に近いものを選ぶ場合は、飲み込む力に合わせてとろみの有無も検討しましょう。
●アイスクリーム
アイスクリームは、冷たく口当たりがよいため、食欲が落ちているときにも取り入れやすいおやつです。甘みもあり、少量でもエネルギーを補いやすく、食事量が少ない方の間食としてもおすすめです。
一方、口の中で溶けると液体に近くなるため、むせやすい方には注意が必要です。液体は固形物よりも喉へ流れ込みやすく、飲み込むタイミングが合わないと誤嚥のリスクが高まります。そのため、スプーンで少量ずつ口に運び、ゆっくり飲み込むようにしましょう。
また、ナッツやクッキーなどの固形物が混ざったタイプは、口の中でばらつきやすく飲み込みにくい場合があります。むせやすい方は、なめらかなタイプのアイスクリームを選ぶとよいでしょう。
●甘いものが苦手なら茶碗蒸しも
甘いものが苦手な方には、茶碗蒸しもおすすめです。卵を使っているためたんぱく質補給につながり、なめらかな食感に仕上げやすいのがポイントです。食事の一部としても、栄養補給のための間食としても取り入れやすい食品といえます。
ただし、具材には注意が必要です。しいたけ、えび、銀杏、鶏肉などの具材が大きいままだと、噛みにくさや飲み込みにくさにつながります。むせやすい方には、具材を細かくする、具なしで作る、とろみのあるあんをかけるなどの工夫が有効です。甘いものが続くと飽きてしまうという方にも、味の変化をつけられる一品です。
パンはむせのリスクが高まるため注意が必要とはいえ、パンが食べたいという高齢者の方もいらっしゃるでしょう。ここでは、高齢者の嗜好に合わせた取り入れ方について紹介します。
●パン粥でしっとりさせる
パンを牛乳で煮てしっとりやわらかく仕上げるパン粥にすることで、むせやすい高齢者でも食べやすい状態になります。パサつきやすいパンをそのまま食べるよりも、水分が加わることで、口の中でまとまりやすくなります。
また、パン粥を作るときは、弱火で加熱し、鍋底に焦げ付かないようにかき混ぜるとよいでしょう。甘みを足したい場合は、砂糖を加えて煮たり、ジャムを少量添えたりすると食べやすくなります。
●フレンチトーストにアレンジする
フレンチトーストは、パンを卵液に浸してから加熱するため、通常のパンよりもしっとり仕上がります。卵や牛乳を使うことで、エネルギーだけでなくたんぱく質も補いやすくなり、低栄養対策としても取り入れやすいアレンジ法です。
ただし、表面だけがしっとりして中がパサついていると、口の中や喉に残りやすく、飲み込みにくくなることがあります。そのため、パンに卵液をしっかり含ませ、やわらかく仕上げることがポイントです。
また、焼き目が硬くなりすぎた場合は、その部分を取り除き、食べやすい大きさに切ったり、必要に応じてソースや牛乳を少量添えたりするなどの工夫もおすすめです。食べるときは一口分の量を小さくし、ゆっくりよく噛んで食べてもらえるようにしましょう。
やわらかい食品でも、口の中でまとまりにくいものは、むせや誤嚥につながる可能性があります。特にパンのようなパサつく食品は、水分が少なく喉に残りやすいため注意が必要です。
むせにくいおやつを選ぶときは、まとまりやすく食感がなめらかで、適度な水分があることを意識しましょう。プリン、ムース、ヨーグルト、茶碗蒸しなどは、食べやすく栄養も補えるためおすすめの食品です。高齢者の噛む力や飲み込む力に応じて、食べやすいおやつを選んでいきましょう。
写真:写真AC、PIXTA
参考:
・健康日本21アクション支援システム 高齢者の低栄養予防(厚生労働省)
・第3章 食事,摂食・嚥下 3.摂食・嚥下障害の評価(公益財団法人長寿科学振興財団)
・パン粥(東京都保健医療局)
・口腔機能の健康への影響(厚生労働省)
・嚥下調整食分類2021(日本摂食嚥下リハビリテーション学会)
・嚥下食の物性(国立病院機構長崎病院)
・誤嚥を気をつけたい食べ物(一般社団法人日本訪問歯科協会)
この著者のこれまでの記事
・高カロリーおやつが救世主になる理由|管理栄養士が教える高齢者のための裏ワザ栄養学①
・アイスクリームは食べる点滴?|管理栄養士が教える高齢者のための裏ワザ栄養学②
・脱水が心配な親に「食べて補う」新習慣のススメ|管理栄養士が教える高齢者のための裏ワザ栄養学③
・甘いものが増えたら要注意! 隠れ栄養失調予防策|管理栄養士が教える高齢者のための裏ワザ栄養学④
著者:下田由美(しもだ・ゆみ)
管理栄養士として約10年間、病院・施設・保育園で幅広い年代の「食と健康」に携わってきた。その中で「食」と「心」は密接に関係していると気づく。現場では、利用者様の気持ちに寄り添いながら、無理なく安全に食べられる方法を模索し続けてきた。利用者様から「ありがとう。美味しかった」と感謝された経験は今でも忘れられない。現在は管理栄養士として、栄養指導や記事執筆、監修、レシピ作りなどを行っている。