高齢になると、一度に食べられる量が減ったり、食事よりホットケーキや菓子パンなどの甘いものを好んだりすることがあります。そのため、「栄養は足りているのだろうか」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
栄養バランスを考えた料理を用意するのが大変なときこそ、食べ慣れた間食を活かしながら栄養を補う方法がおすすめです。今回は、ちょい足しにおすすめの粉豆腐やスキムミルクの特徴と、手軽で続けやすいちょい足し術を紹介します。
高齢者の低栄養対策では、食べる量を増やすより、ふだんの間食に栄養をプラスするほうが取り入れやすいことがあります。ここでは、無理なく続けやすい「ちょい足し術」のメリットを紹介します。
●少量でも栄養を底上げできる
年齢を重ねると、食事量が減ることでエネルギーのほか、筋肉を保つためのたんぱく質や骨に欠かせないカルシウムなども不足しやすくなります。しかし、食が細くなってきた高齢者にとって、たくさん食べることは容易なことではありません。そこで取り入れたいのが、間食を栄養補給の機会として活用することです。
例えば、粉豆腐やスキムミルクなどを間食にちょい足しすることで、食べる量は大幅に変えずに、たんぱく質やカルシウムを補うことができます。
●味が変わりにくく、続けやすい
栄養価だけでなく食事を楽しめるかどうかも重要です。体によいからといって、食べ慣れない味や食感のものを出すと、かえって食欲が落ちてしまうこともあるからです。
粉豆腐やスキムミルクは少量であれば味が変わりにくいため、隠し味のように少し加えることで、食べ慣れた味を活かして栄養素を調整することができます。
粉豆腐は、ふだんの間食や軽食にたんぱく質を追加しやすい食品です。粉末状で料理などに混ぜやすく、蒸しパンやフレンチトーストなどにも活用できます。
ここでは、粉豆腐の特徴を紹介します。
●粉豆腐とはどんな食材?
粉豆腐は、豆腐を凍らせてから乾燥して粉末状にした食品です。たんぱく質に加え、鉄やカルシウムなども含まれており、食事量が減りやすい高齢者の栄養補給にも役立ちます。
粉豆腐は粉末状のため、生地や卵液などに混ぜやすいのが特徴です。ホットケーキや蒸しパン、フレンチトーストなどに加えることで、ふだんの間食や軽食でも手軽にたんぱく質を摂取することができます。
●甘いものともなじみやすく、続けやすい
粉豆腐は大豆由来の風味がありますが、ホットケーキや蒸しパンなどに混ぜると、味がなじみやすくなります。
間食に少し混ぜるだけなら、食べ慣れた味を大きく変えずに済むため、家族が新たな料理を準備する負担も少なくなります。
スキムミルクは、牛乳から脂肪分を除いて粉末にした食品です。飲み物や蒸しパンの生地などに加えやすいため、高齢者の間食にも活かしやすい食材です。
ここでは、スキムミルクの特徴について見ていきます。
●スキムミルクは牛乳よりどこが便利?
スキムミルクのメリットは、常温で保存しやすく、少量ずつ使えることです。牛乳は開封後の賞味期限が気になりますが、スキムミルクは必要な分だけ使えるため、毎日少しずつ栄養を足したいときにおすすめです。料理や飲み物に加えやすく、牛乳を飲むのが負担な方にも使いやすいといえます。
高齢者は、骨の健康や筋力維持のために、カルシウムやたんぱく質を意識して取り入れることが大切です。スキムミルクであれば脂肪分を抑えながらも、たんぱく質やカルシウムを補うことができます。
また、牛乳そのものを飲むのが苦手な方でも、ココアやカフェオレなどに混ぜることで栄養価を底上げできます。
●ホットケーキミックスとの相性がよい
スキムミルクはホットケーキミックスとの相性がよく、生地に混ぜることでミルクの風味やコクを足しやすくなります。粉末なので生地になじみやすく、使いやすいのも魅力です。
また、高齢者向けにホットケーキを作る場合は、焼きすぎて硬くならないように注意しましょう。弱火でじっくり焼き、食べるときに少量のはちみつを添えるのもおすすめです。
高齢者の間食は、甘いものをやめることだけが目的ではありません。大切なのは、食べられるものを活かしながら、足りない栄養を少しずつ補うことです。
ここでは、粉豆腐やスキムミルクを使った「間食の組み合わせ」を紹介します。
●ホットケーキ+粉豆腐+バナナ
ホットケーキを作る際、粉豆腐を加えると、たんぱく質やカルシウムを補えます。さらに、バナナやヨーグルトを加えると、優しい甘みのあるやわらかく食べやすい食感に仕上がります。
調理するときは、ホットケーキミックス100gに対して粉豆腐を大さじ1〜2杯程度加えて、牛乳や豆乳、ヨーグルトで生地の硬さを調整します。焼いたあとに小さく切って冷凍しておけば、食べたいときに温めるだけで用意できます。
●あんぱん+スキムミルク入りカフェオレ
あんぱんは手軽で食べやすい一方で、単品では糖質中心になりやすい食品です。そこにスキムミルク入りのカフェオレを組み合わせると、たんぱく質やカルシウムを取り入れやすくなります。また、温かいカフェオレは、満足感を得やすいといわれています。食べる量を増やさなくても、飲み物で栄養バランスを整えやすくなるため、食が細い高齢者にも活用しやすい方法です。
ほかにもスキムミルクを取り入れる工夫として、スキムミルクを溶かして製氷機で氷を作り、アイスカフェオレに加える方法もあります。
暑い時期は冷たい飲み物として、寒い時期は温かい飲み物として使い分けると、季節や好みに合わせて続けやすくなります。
●コーヒーゼリー+スキムミルク
コーヒーゼリーは、冷たくのどごしがよいため、食欲が落ちた日でも食べやすいデザートです。ただし、ゼリーだけでは栄養補給としては物足りないことがあります。そこで、スキムミルクを水や牛乳に溶かしてミルクソースのようにかけると、たんぱく質やカルシウムを補えます。
甘味とコーヒーの香りがあるため、スキムミルクの風味も比較的目立ちにくいでしょう。市販のコーヒーゼリーを使えば、準備の手間も少なくて済みます。
夏場や食欲が落ちている日には食事を増やすより、冷たいデザートに栄養を足す方法が役立つこともあります。
●直接ヨーグルトに加えてもOK!
準備に手間をかけたくないときは、ヨーグルトにスキムミルクを直接加えるとよいでしょう。ヨーグルト自体にもたんぱく質やカルシウムが含まれていますが、スキムミルクを少量混ぜることで、さらに栄養が摂取しやすくなります。粉っぽさが残らないように、よく混ぜておきましょう。
また、ヨーグルトの酸味が気になる場合は、少量のジャムやはちみつを加えるのもおすすめです。果物を添えるとビタミン、ミネラル、食物繊維も補えます。朝食が軽めの日や、夕食まで時間が空くときの間食としても使いやすく、火を使わずに準備できるのも続けやすさにつながります。
高齢者の低栄養対策では、食事量を増やすことだけに目を向けると、本人も家族も負担を感じやすくなります。大切なのは、今食べられているものを活かしながら、少しずつ不足しやすい栄養素を補っていくことです。
粉豆腐はホットケーキや蒸しパンなどに混ぜることで、たんぱく質を補いやすくなります。スキムミルクは、カフェオレやココア、ヨーグルト、ゼリーのソースなどに使いやすく、カルシウムやたんぱく質のちょい足しに便利です。
食べる楽しみを大切にしながら、無理なく続けられる低栄養対策につなげていきましょう。
写真:写真AC、PIXTA
参考:
・高齢者の低栄養(公益財団法人長寿科学振興財団)
・健康日本21アクション支援システム 高齢者の低栄養予防(厚生労働省)
・『統合医療」に係る 情報発信等推進事業|カルシウム(厚生労働省)
・カルシウムを多く含む食品(公益財団法人 骨粗鬆症財団)
・食品成分データベース 豆類/だいず/[豆腐・油揚げ類]/凍り豆腐/乾(文部科学省)
・食品成分データベース 乳類/<牛乳及び乳製品>/(粉乳類)/脱脂粉乳
・乳と乳製品のQ&A(一般社団法人 日本乳業協会)
この著者のこれまでの記事
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著者:下田由美(しもだ・ゆみ)
管理栄養士として約10年間、病院・施設・保育園で幅広い年代の「食と健康」に携わってきた。その中で「食」と「心」は密接に関係していると気づく。現場では、利用者様の気持ちに寄り添いながら、無理なく安全に食べられる方法を模索し続けてきた。利用者様から「ありがとう。美味しかった」と感謝された経験は今でも忘れられない。現在は管理栄養士として、栄養指導や記事執筆、監修、レシピ作りなどを行っている。