「以前よりも親の食が細くなり、体重も少し落ちてきた気がする」。そんな変化に気づき、栄養不足を心配している方も多いのではないでしょうか。高齢になると食欲が落ち、肉や魚などの主菜を食べる量が減ることがあります。
食事量の減少が続くと、体に必要なエネルギーやたんぱく質が不足し、体力や筋力が低下する「フレイル」につながる可能性もあるため、注意が必要です。そこで今回は、低栄養対策としてアイスクリームを活用した栄養補給の工夫や、取り入れる際の注意点を紹介します。
高齢になると、食欲の低下や、噛む力・飲み込む力の変化などによって、食事量が減りやすくなります。その結果、体に必要なエネルギーやたんぱく質が不足し、低栄養につながることがあります。特に、肉や魚などの主菜の摂取量が減ると、筋肉量や体力の低下を招きやすくなるため注意が必要です。
また、低栄養状態が続くと、免疫機能の低下や疲れやすさにつながることもあります。最近体重が減ってきた、食事量が少ない、食べることへの関心が薄れてきたなどの変化は、低栄養のサインとして見逃さないようにしましょう。
食が細くなった高齢者の低栄養対策では、食べられるものの中でしっかりと栄養を確保することが重要です。ここでは、低栄養対策で意識したいポイントを紹介します。
●少量でも栄養を摂れる食事を意識する
高齢者の低栄養対策では、一度にたくさん食べてもらうことよりも、少ない量でも必要な栄養を摂りやすい食事に整えることがポイントです。
特に不足しやすいのがエネルギーとたんぱく質です。肉や魚など主菜の量が減ると、筋肉の維持に必要な栄養が不足しやすくなるため、食事だけで十分に摂れないときは、間食や補食を活用する方法も有効です。主食・主菜・副菜を基本にしつつ、食べられるタイミングで栄養を補いましょう。
●食べやすさと楽しさも低栄養対策の一つ
低栄養対策を続けるには栄養価だけでなく、食べやすさやまた食べたいと感じられることも欠かせません。高齢になると、硬さやパサつきのある食品は食べにくくなり、食事が進まない原因になることがよくあります。
そのため、やわらかさや口当たり、のどごしのよさを意識した食品選びが大切です。さらに、本人の好きな味や見た目、食事の楽しさも食欲に影響します。食べることへの心理的な負担を減らし、食事を摂れる環境を整えることが低栄養予防につながります。

アイスクリームは、少量でもエネルギーを補いやすく、やわらかくて口当たりがよいため、食欲が落ちたときでも取り入れやすい食品です。ここでは、低栄養対策にアイスクリームがおすすめの理由を紹介します。
●少量でエネルギーが補給できる
アイスクリームが低栄養対策で注目されるのは、少量でもエネルギーを取りやすいためです。脂質と糖質を含むため、食事量が少ない方でも効率よくエネルギー補給につなげやすい特徴があります。
食欲が落ちているときは、主食や主菜が思うように進まないことがありますが、アイスクリームのように食べやすい食品なら口にしやすい場合があります。食事だけでは不足しがちなエネルギーを補う補助食品として考えると取り入れやすいでしょう。
●食が細い高齢者でも食べやすい
アイスクリームはなめらかで、噛む力が落ちている高齢者でも口にしやすい食品です。冷たくて口当たりがよいため、食欲がわきにくいときでも比較的食べやすいでしょう。
また、調理の手間がなく、体調がすぐれない日でも用意しやすいこともメリットといえます。ただし、冷たいものが苦手な方やむせやすい方には食べにくいこともあるため、体調や嚥下の状態を確認しながら量などを調整することが大切です。
アイスクリームはエネルギー補給には向いている一方、たんぱく質は十分とはいえない商品もあります。ここでは、アイスクリームにちょい足しすることで、栄養価を底上げできるアレンジ方法を紹介します。
●きな粉を加えるとたんぱく質量がアップ
アイスクリームはエネルギー源として役立ちますが、低栄養対策ではたんぱく質も意識することが大切です。そこでおすすめなのがきな粉です。きな粉は大豆を炒って粉にした食品で、植物性たんぱく質を含んでいます。
アイスクリームにきな粉を加えると、手軽にたんぱく質を補いやすくなります。混ぜるだけでよいため、日常の食事に取り入れやすい方法です。
●味の相性もよく食べやすい
きな粉は香ばしい風味があり、アイスクリームのやさしい甘さと合わせやすい食品です。味の相性がよいため、栄養補給のために無理をして食べるというより、デザート感覚で取り入れやすいのが魅力です。
食欲が落ちているときは、栄養価が高くても「美味しい」と感じられないと続けるのが難しいこともあるでしょう。その点、食べやすい味の組み合わせは継続しやすいメリットがあります。
●おすすめの量と簡単な作り方
作り方は、アイスクリーム1個に対してきな粉小さじ1〜2ほどを目安にふりかけ、軽く混ぜるだけです。
ただし、最初からきな粉をたくさん入れると粉っぽさが気になることもあるため、少量から試して好みに合わせて調整すると取り入れやすくなります。香りづけとして黒蜜やはちみつを少量加えても味の変化を楽しめます。
市販のアイスクリームにははさまざまな種類があり、食べ方によっては栄養バランスが偏ることがあるため注意が必要です。安心して続けるためにも、注意点を押さえて活用しましょう。
●糖質や脂質の摂とり過ぎに注意する
アイスクリームは少量でエネルギーを補いやすい一方で、商品によっては糖質や脂質が多く、食べ過ぎるとエネルギーの摂り過ぎにつながることがあります。低栄養が気になる場合でも、量が多過ぎれば食事全体のバランスが崩れる可能性があるため、1回の量を決めて摂取することが大切です。
●食事の代わりではなく補助として取り入れる
アイスクリームは食べやすく便利ですが、それだけで主食・主菜・副菜の役割を補えるわけではありません。食事の代わりにすると、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などが不足しやすくなります。
普段の食事を基本として、食べきれないときや食事量が足りないときの補助として取り入れるのが適しています。食後や間食のタイミングで活用すると、ほかの食事にも支障が出にくいでしょう。
また、むせやすさや飲み込みにくさがある場合や、糖尿病・腎機能低下などの持病がある場合は、食品の選び方や量に配慮が必要です。体調や健康状態に合わせて、必要に応じて医師や管理栄養士に相談しながら摂取すると安心です。
アイスクリームが苦手な方でも、間食や飲み物、いつもの食事へのちょい足しなど、日常生活の中で無理なく続けられる方法もあります。アイスクリーム以外におすすめの低栄養対策をご紹介します。
●他の食品の間食として栄養補給に活用する
食事量が少ないときは、3食だけで必要な栄養を満たそうとせず、間食を上手に活用することがポイントです。ヨーグルトやプリン、チーズは比較的食べやすく、エネルギーやたんぱく質の補給につなげやすい食品です。
固形物が食べにくい場合は、牛乳やミルクココアなど、飲み物から栄養を補う方法もあります。少量でも口にしやすいものを選ぶことで、栄養を補いやすくなります。
●いつもの食事にたんぱく質を少しプラスする
毎回しっかり主菜を食べることが難しい場合は、いつもの食事にたんぱく質をちょい足しするのもおすすめです。
例えば、味噌汁に豆腐を入れる、卵を加える、サラダや和え物にツナを添えるなど、少ない手間で栄養価を高めやすくなります。茶碗蒸しも口当たりがよく、食欲が落ちているときでも食べやすい料理です。食べられるものを中心に、たんぱく質をプラスするよう心がけるとよいでしょう。
高齢者の低栄養対策では、食事量を増やすことよりも、少量でもエネルギーやたんぱく質を補いやすい食品を取り入れることが大切です。中でもアイスクリームは食べやすく、エネルギー補給に役立つ食品の一つです。きな粉を加えればたんぱく質を手軽に補えます。
ただし、アイスクリームだけで栄養が十分に補えるわけではありません。主食・主菜・副菜を基本とした食事を中心にしながら、食事量が少ないときの補助として取り入れていきましょう。
参考:
・高齢者の低栄養予防(厚生労働省)
・フレイルの意義(日本老年医学会)
・知っていますか?フレイルとロコモ(一般社団法人日本医学会連合)
・認知症予防に「低栄養」に気をつけましょう(農林水産省)
・口腔機能の健康への影響(厚生労働省)
・食品成分データベース(文部科学省)
写真:PIXTA、写真AC
著者:下田由美(しもだ・ゆみ)
管理栄養士として約10年間、病院・施設・保育園で幅広い年代の「食と健康」に携わってきた。その中で「食」と「心」は密接に関係していると気づく。現場では、利用者様の気持ちに寄り添いながら、無理なく安全に食べられる方法を模索し続けてきた。利用者様から「ありがとう。美味しかった」と感謝された経験は今でも忘れられない。現在は管理栄養士として、栄養指導や記事執筆、監修、レシピ作りなどを行っている。