秋の大型連休(シルバーウィーク)の帰省は、普段は離れて暮らす親の「リアルな日常」を確認し、将来について話し合う絶好のチャンスです。いざという時にあわてず、仕事と介護を両立させるために確認しておきたい3つのポイントを解説します。

シルバーウィークに帰省した初日に、いきなり問い詰めず、最初はおいしいものを食べたり、実家の片付けを手伝ったりして場を和ませること。お茶を飲んでホッとしている時間に1つずつ優しく切り出すのが、親の自尊心を傷つけずに本音を引き出すテクニックとなります。
①歩行や日常動作などのチェックポイントとフレイル予防
フレイル(加齢に伴う心身の衰え)の予防には、毎日の歩行や日常動作のわずかな変化にいち早く気づくことが重要です。歩く速度が落ちたり、椅子から立ち上がりにくくなったりするのは、筋肉量や身体機能が低下し始めているサインかもしれません。
●話しておくこと・やるべきこと
横断歩道を青信号のうちに渡りきれるか、歩幅が狭くなっていないかなどの歩行の様子や 手すりを使わずに椅子から立ち上がれるか、以前より外出がおっくうになっていないか、お茶や汁物でむせることが増えていないかなどの生活の変化を気にかけてみてください。
②「かかりつけ医」の確認と、診察券・お薬手帳の置き場所
最初の関門になるのが「要介護認定の申請」です。この申請には主治医意見書が欠かせません。急な体調不良や親が倒れてから「どこの病院に行っているかわからない」となると、初動が大幅に遅れ、仕事を休まざるを得ないリスクが高まります。
●話しておくこと・やるべきこと
「最近、よくかかっている医者はある?」と聞き、病院名と医師名をメモしてください。診察券とお薬手帳が、家のどこに保管されているか、場所を一緒に確認します(可能であればスマホで写真を撮る)。
※持病がない場合でも、かぜをひいたときに行く近所の診療所を特定しておくだけで十分な備えになります。

①きょうだい間の役割分担
親の介護が始まると、きょうだい間での負担の偏りからトラブルに発展することが少なくありません。良好な関係を保ちながら乗り越えるためには、お互いの生活や本音を尊重しつつ、早い段階で「チーム」として役割を分担することが不可欠です。
●話しておくこと・やるべきこと
まずは「動ける人」と「動けない人」の役割を確認しましょう。遠方に住んでいる、仕事が多忙など、物理的に介護が難しい場合もあります。「直接ケアを担当する人」「手続きや事務作業を行う人=キーパーソン(窓口)」「資金面で多めに支える人」など、全員に何らかの役割を割り振り、負担の公平性を図ります。
②「もしも」のときに駆けつけてくれる、地元の人脈
仕事を持ちながら遠距離でケアする場合、すべてのトラブルに自分が新幹線や飛行機で駆けつけるのは不可能です。近所の友人や民生委員、よく行くお店の人など、親を見守ってくれる地元の人脈の存在を把握しておくことが大切です。
●話しておくこと・やるべきこと
「ご近所でよく声をかけあう人ってだれ?」と聞いてみてください。親の口から「〇〇さんにはいつもお世話になっている」という名前が出たら、帰省の際にその方の連絡先を控えるか、可能なら挨拶をして「何かあったら私(子ども)に連絡をください」とメモを渡しておくと安心です。

①親の「今の本音」と、これからの暮らしの「優先順位」
お金の話(貯蓄額など)をいきなり切り出すと親は警戒しますが、「これからどう暮らしたいか」という価値観の話であれば、お互い感情的にならずに話せます。親の今後の生活への希望や、何を大切に生きていきたいかなどの優先順位を知っておくことは、将来ケアプランを組む際の大切な指針になります。
●話しておくこと・やるべきこと
「もし足腰が弱くなったり、一人で身の回りのことをするのが難しくなったりしたら、どうしたい?」と、世間話のトーンで聞いてみてください。何が何でも自宅に住み続けたいのか、それとも子どもに負担をかけるくらいなら、早めに施設に入りたいのか、親の本音のニュアンスを掴みます。いざというときのために、元気なうちに対策を一緒に考えておきたいと、親の味方であるスタンスを伝えることが成功のコツです。
②話を切り出す方法、NGワード
親が自分らしく安心して暮らせるように、これからの希望や、もしものときに手伝えることなど、聞いておきたいことを伝えましょう。
●話しておくこと・やるべきこと
「まだ元気だから大丈夫」は励ましたつもりでも、親が相談したかったことを飲み込んでしまう可能性もでてきます。「元気な今だからこそ」と前向きな言葉で伝えます。「もしボケたら」とか「介護が必要になったら」という言葉も尊厳を傷つける可能性があります。万が一の体調の変化に備えてとオブラートに包み、主語をみんなの問題に設定します。
財産額を確認したい場合は、いきなり聞くのではなく、「将来どんな暮らしがしたいか(施設、在宅など)」の希望から逆算して、少しずつ予算の話へ繋げてみてください。
著者:渋澤和世(しぶさわ・かずよ)
在宅介護エキスパート協会代表
会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
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