デイサービスといえば、以前は食事や入浴の介助、受け身のレクリエーションが主流でした。しかし現在は、利用者一人ひとりの「やりたい」をかなえる多様なサービスへと進化しています。本記事では、自身も介護経験を持つ社会福祉士の著者が、親の興味や意欲を引き出す最新のデイサービスを4つのタイプ(参加型・成果型・自由型・外出型)に分けて解説します。

今求められているのは、やらされる支援ではなく、できることを奪わず役割を取り戻す支援です。デイサービスは日中の居場所から人生の意欲を引き起こさせる場へと進化しています。
また、運営側も介護人材不足が続く今こそ、効率より主体性への転換が必要です。利用者が自ら動きたくなる仕掛けをつくることで、職員の負担も軽減されます。
「やらされる」から「やりたい」へ、双方が心地よく過ごせるケアがこれからのデイサービスの標準になると筆者は考えます。

「デイサービス=折り紙や歌」というイメージは過去のものです。現在は本人の趣味や性格に合わせて選べるユニークな施設が急増しており、大きく4つのタイプに分類できます。
施設内通貨を稼ぐ「仕事」や本格的な「娯楽・趣味」を通じて役割意識を持つ【参加型】、リハビリの数値化や「農業・料理」を通して成長と役割の再獲得を目指す【成果型】、自分で時間割を組み立て「自己決定」から真の自立を促す【自由型】、そして、銭湯や猫カフェ風など非日常のアミューズメント空間で通所の抵抗をなくす【外出型】です。
親御さんの性格や興味がどのタイプに向いているかイメージしながら、次章から紹介するそれぞれの具体的な特徴をチェックしてみてください。

[仕事] 施設内通貨を導入しているデイサービスでは、お茶配り・配膳スタッフ、植物の水やり、花壇の手入れ、テーブル拭きなどを仕事として準備しています。レクリエーションではなく、誰かの役に立つ、施設を支えるという役割意識を持ってもらうことで、脳の活性化とADL(日常生活動作)の維持を目指します。
[娯楽] 娯楽として、麻雀やカジノのほか競馬の過去レース映像を見ながら勝ち馬を予想するなど大人の遊び場的なプログラムを提供しているところもあります。特に男性の利用率向上や、脳を刺激するのに効果的です。
[趣味] 本格的な趣味として、挽きたてコーヒーを楽しんだり、写真の撮り方、LINEの使い方など生活に直結するプログラムが提供されます。稼いだ通貨は貯めるだけでなく、ここで消費する楽しみとして利用されることもあります。

[リハビリ特化] リハビリ特化型は理学療法士などの専門職が個別プログラムを作成し、筋力トレーニングや歩行訓練を行います。定期的に測定を行い、歩行速度や関節の可動域などを「数値」で記録・共有します。データが見える化されると利用者が「できるようになった」と成長を実感しやすく、モチベーションが維持されます。
[農業・園芸] 農業・園芸は、施設内の畑やプランターで野菜や花を育てます。役割分担しながら育て収穫した野菜は皆で分け合い、おかずとして活用します。園芸を通じた自然な全身運動が筋力の維持を助けます。
[料理] 料理は、皮むきやカット、味付け、盛り付けなどをスタッフのサポートのもとで行います。順序や時間を考えることで脳が働き、認知機能のトレーニングになります。さらに、調理を通して家事役割の再獲得が自立への自信を呼び戻します。

利用者は登所後、複数の選択肢が書かれたメニュー表(筋トレ、趣味の木工、買い物散歩、カフェ体験など)を見ながら、その日の時間割を自分で考えます。リハビリも孫の結婚式に歩いて出席するなどの具体的な目標に合わせ、歩行訓練などを専門職と相談しながら自ら選び実施します。
自由型は行動の起点が自己決定です。スケジュールを自ら管理・組み立てる行為そのものが脳への強い刺激となり、認知機能の維持・改善に寄与します。今までは当たり前だった「自分で決める環境」が、介護を受ける側の諦めや依存心を払拭し、真の自立支援へと繋がります。

非日常を味わうアミューズメント・外出型のデイサービスと言えます。銭湯風の大浴場や猫カフェ空間のほか、パチンコ、カラオケなどを備えた遊び場風の施設が増えています。スタッフも店舗の店員のように接し、利用者がゲームや空間を自発的に楽しむ環境を整えます。介護施設に通うという心理的抵抗がなくなれば引きこもりがちなかたの通所率が向上します。

イオンリテールが展開する「イオンスマイル」は、異業種参入ならではの強みを生かした新しい形のデイサービスです。利用する高齢者とその家族の双方に、これまでにないメリットをもたらします。施設内は勿論、外の世界である売場そのものをリハビリの場として使う発想が活きています。
(1)本人の活力を生む「買い物リハビリ」
施設内の運動にとどまらず、自分で商品を見て選ぶ「買い物」そのものをリハビリとして導入。自立的な選択が脳や体を刺激し、親のやる気や活力を効果的に引き出します。
(2)男性も通いやすい「スポーツジム」の雰囲気
従来のデイサービスに抵抗感がある男性でも、スポーツジムのような感覚で爽やかに、プライドを保ちながら前向きに通うことができます。
(3)“買いもの難民”を救う!「送迎+リハビリ+買い物」の超効率ケア
最大の利便性は、この施設の多くがイオンの店舗に併設されている点です。自力で買い物に出るのが難しくなった単身者や高齢者の二人暮らしの方などが、車の送迎があるデイサービスのついでに買い物ができることが最大のメリットです。イオンスマイルは千葉・埼玉などを中心に新潟県にも出店していますが、その中には郊外で商店自体が近くにない場所もあります。そんな場所の、運転免許を返納して買い物が不便になった方にとっては、体力維持とともに買い物ができるとても便利なサービスになります。

デイサービスは「近いから」と妥協せず、目的や興味に合わせたプログラムで選ぶことが大切です。本人の好奇心や自立心を満たす場所を選ぶことが認知機能の維持や、働きながら介護する家族の生活を守ることにも直結します。ただ介護保険サービスに抵抗感を持つ親は少なくありません。前向きに見学へ誘導するための声かけのコツは以下の3点です。
(1)「介護」の言葉を使わない
デイサービスとかリハビリという言葉は避け、シニア向けのジム、大人のカルチャースクールなど、本人のプライドを傷つけないポジティブな言葉に言い換えます。
(2)目的を話して頼りにしている感を出す
最近できた施設が評判だから、どんなところか一緒に行ってほしいなど、子が親を頼るという感覚を持たせます。
(3)お試しを強調する
通う前提ではなく1回だけ体験してみようとハードルを徹底的に下げて誘い出します。
今のデイサービスは、介護だけでなく「楽しみ」や「挑戦」を叶える場へと広がっています。必要なのは、固定観念にとらわれず、本人の世界を広げる選択をすること。まずは本人の興味に寄り添う形で、最初の一歩を後押ししてみましょう。
著者:渋澤和世(しぶさわ・かずよ)
在宅介護エキスパート協会代表
会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『親が倒れたら、まず読む本 入院・介護・認知症…』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
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