5月に入り、少しずつ汗ばむ日が増えてきました。夏に向けて増える皮膚トラブルの1つが「あせも(汗疹)」です。あせもというと子どもに多いイメージがありますが、近年は猛暑の影響もあり、シニアでも悩む人が増えています。汗をかいたまま放置すると、首回りや背中などにポツポツとした湿疹ができ、多くの場合かゆみを伴うあせも。生活習慣の見直しと適切な汗ケアの重要性について、皮膚の疾患に詳しい専門医が解説します。

1. 夏に増えるあせもと汗かぶれとは

あせも、肌かぶれと肌の構造

汗には、健康を保つための重要な役割があります。蒸発する際に体の熱を奪って体温を調節するだけでなく、老廃物の排出や、皮膚の潤いを保つ働きも担っています。

大量の汗をかいたまま放置すると、汗の出口が詰まりやすくなります。行き場を失った汗が皮膚の内部の「汗管(汗の通り道)」にたまり、周囲に漏れ出て炎症や小さな水ぶくれを起こします。これが「あせも」です。それまであまり汗をかいていなかったのに、急に汗の量が増えたときに起こりやすく、特に発汗量が多い額や、胸、背中などの体幹にできやすいのが特徴です。

一方、あせもと似て非なるものが「汗かぶれ」です。汗には塩分やアンモニアなど、肌を刺激する成分が含まれています。加齢や乾燥、衣類との摩擦などで皮膚の「バリア機能」が低下していると、汗が蒸発する過程で濃縮されたこれらの成分が直接肌を刺激し、赤みやかゆみを引き起こしてしまいます。これが「汗かぶれ」と呼ばれる症状で、汗がたまりやすい首や脇の下、乳房の下、お尻、鼠径部(そけいぶ)、関節の内側などに多くみられます。

2. 「厚着・エアコン嫌い・同じ姿勢」があせもや汗かぶれの原因に

室内で汗をかいている男性

シニア世代では、夏の冷えを気にするあまり、厚着をする、エアコンの使用を控えるといった傾向がみられます。その結果、室内が高温多湿になり、無意識のうちに汗をかきやすい環境がつくられてしまいます。

さらに、テレビを見続けるなど長時間同じ姿勢で座り続けることで、背中や腰回りに熱がこもりやすくなります。こうした生活習慣が重なることで、大量にかいた汗を放置しやすくなり、あせもや汗かぶれの原因となります。

3. あせもと間違えやすい?「接触皮膚炎」の見分け方と注意点

お薬手帳と軟膏

ポツポツとした湿疹やかゆみが出た際、あせもと勘違いしやすいのが「接触皮膚炎(かぶれ)」です。これは皮膚になんらかの物質(植物や金属など)が接触することで、アレルギー反応などが起こり、かゆみや湿疹が現れるものです。

特定の物質を免疫細胞が異物と認識し、再び触れたときに症状を引き起こします。原因物質に触れて半日くらいたってから皮膚の赤みや腫れ、かゆみが起こるのが特徴です。症状が軽い場合は原因物質に触れないようにすれば治まりますが、かゆみなどの症状が強い場合は、抗ヒスタミン成分やステロイドの入った塗り薬を使うなど適切な治療が必要です。

4. アクセサリーにも気をつけて!汗が引き起こす「金属アレルギー」

アクセサリーを身に着けたシニア女性

汗を多くかく季節は、金属による皮膚炎にも注意が必要です。アクセサリーや腕時計などに含まれる金属は、汗によって成分が溶け出し、皮膚に浸透することで、かゆみやかぶれを引き起こすことがあります。原因となりやすい金属は、ニッケル、コバルト、クロムなどです。

予防としては、アクセサリーを衣服の上から着用し、皮膚に直接触れないようにすることが有効です。また、チタンやセラミック製など、アレルギーを起こしにくい素材を選ぶのも1つの方法です。

5. 汗をかかないのは逆効果!汗腺の働きを保つ健康習慣

ウォーキングを楽しむシニア夫婦

汗による肌トラブルを防ぐ基本は、かいた汗を「そのままにしない」ことです。やわらかいタオルでこまめに拭き取るか、シャワーでサッと洗い流しましょう。外出先でボディーシートを使う場合は、アルコール刺激の少ない「敏感肌用」を選ぶのがおすすめです。いずれの場合も、ゴシゴシこすると汗かぶれの原因になるため、ポンポンと優しく押さえるように拭き取ってください。外出時は小型扇風機やネッククーラーなどの冷却グッズを使い、過剰な汗を防ぐことも大切です。

とはいえ、肌トラブルを恐れて「一切汗をかかない生活」を送るのは逆効果です。エアコンの効いた部屋にこもりきりになると、汗をかく機能が衰えてしまいます。汗腺の機能を保つには、日頃から適度に汗をかき慣れておくことも大切です。涼しい時間帯にウォーキングする、ぬるめのお湯に浸かるなど、適度に汗をかき、健康な「汗腺」を保つ習慣をつけましょう。



写真:PIXTA

監修:坪井良治先生

構成:研友企画出版


【監修者プロフィール】
坪井良治(つぼい・りょうじ)
東京医科大学名誉教授/西新宿サテライトクリニック理事長・院長
1980年、防衛医科大学校卒業。順天堂大学大学院医学研究科修了後、ニューヨーク大学医学部研究員、順天堂大学皮膚科学講師・助教授などを経て、2002年から2020年まで東京医科大学皮膚科学分野主任教授を務める。脱毛症、アトピー性皮膚炎、皮膚真菌症(いわゆる水虫)、褥瘡、皮膚腫瘍などを専門とする。
西新宿サテライトクリニック皮膚科



坪井良治先生

この記事の提供元
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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