5月を過ぎて気温が上がり始めると、汗ばむ日が増えてきます。「夏は汗をかくから肌は乾燥しない」と思われがちですが、実はシニアにとって、夏は「隠れ乾燥肌」に陥りやすい要注意の季節です。シニアの肌はもともと皮脂や水分が少ないうえ、エアコンの使用によってさらに水分が奪われ、乾燥しやすくなります。夏の乾燥を防ぐためのポイントについて、皮膚の疾患に詳しい専門医が解説します。

1. なぜ夏に肌がカサカサする?「加齢×エアコン」の悪循環

乾燥肌のイメージ

高齢になると、皮脂腺から分泌される皮脂の量が減少し、皮膚の水分を保ち外部刺激から守る「バリア機能」が衰えてきます。そのため、シニアの肌は年間を通じて乾燥しやすく、ささいな刺激でも皮膚トラブルを起こしやすい状態にあります。

夏は大量の汗をかくため、肌が潤っているように錯覚しがちですが、汗をかいたまま放置すると、あせも(汗疹)や湿疹の原因になるだけでなく、汗の蒸発とともに肌の水分まで奪われてしまうことがあります。

さらに厄介なのが、室内でのエアコン使用です。エアコンを長時間使用すると空気が乾燥し、それに伴って皮膚の乾燥やかゆみを引き起こします。かゆみがあると無意識にかいてしまいますが、かき続けることで「ヒスタミン」という物質が分泌され、さらにかゆみが増すという悪循環に陥ります。

このように、「加齢による皮脂の減少」という土台に「エアコンによる乾燥」が重なることで、シニアの肌は夏場でも乾燥状態になりやすいのです。エアコンを使用する際は、適切な温度・湿度を保つことを心がけましょう。

2. 要注意!お風呂での「洗いすぎ」と「熱いお湯」は乾燥を加速させる

入浴を楽しむ女性

乾燥から肌を守るためには、毎日の入浴習慣の見直しが重要です。日本人は清潔志向が強い傾向にありますが、「洗いすぎ」や「熱いお風呂」は乾燥肌を悪化させる大きな要因となります。まず注意したいのが、お湯の温度と入浴時間です。高温での長風呂は、肌に必要な皮脂まで奪ってしまいます。そのため、お風呂は「ぬるめで短め」にするか、シャワー浴で済ませるのが理想的です。

また、体を洗う際の「ゴシゴシ洗い」も禁物です。ナイロンや麻のタオルで強くこすると皮膚が傷つき、症状の悪化を招きます。高齢者や乾燥肌の人、アトピー性皮膚炎のある人は、石けんやボディソープの使用を必要最小限にとどめ、デリケートゾーンなど汚れやすい部位に限定するのが望ましいでしょう。その他の部位はお湯で流すか、木綿のタオルで優しく洗う程度で十分です。皮膚が本来持っている皮脂や保湿成分を守ることが、乾燥予防の基本となります。

3. 夏のお風呂上がりケア 保湿剤の選び方と塗り方

ワセリン

入浴後は、乾燥を防ぐために保湿剤で潤いを補うことが重要です。ただし、選び方と使い方には注意が必要です。一般的な乳液やクリームタイプの保湿剤は、さっぱりとした使用感があるため夏場に好まれますが、油分が少ないため時間の経過とともに乾燥しやすい傾向があります。また、界面活性剤が含まれているため、乾燥が強い肌や傷のある部位では刺激となり、接触皮膚炎(かぶれ)を起こすことがあります。

乾燥が強いシニアの肌には、界面活性剤を含まず刺激の少ない「白色ワセリン」や、「オイル(椿油など)」といった油脂系の保護剤が適しています。これらはべたつきがありますが、少量を手のひらで薄く伸ばし、全身をなでるように塗るのがポイントです。

ただし、夏場に白色ワセリンを広範囲に使い続けると、毛穴の閉塞によりニキビや毛包炎を起こすことがあるため、乾燥の程度に応じてクリームタイプと使い分けることも大切です。塗布のタイミングは、入浴直後の体温が高い状態ではかゆみを感じることがあるため、体温が少し落ち着いたタイミングで行うのが適しています。

4. 健康な皮膚をつくる食事と生活習慣

食事風景

スキンケアだけでなく、体の内側からのケアも重要です。夏は、食欲不振やレジャー・帰省などによる疲労によって体力や抵抗力が低下し、皮膚にも悪影響が出やすい時期です。皮膚の健康を保つためには、細胞の材料となるたんぱく質や、皮膚・粘膜の働きを支えるビタミン類を意識した「バランスのよい食事」が基本となります。

また、十分な睡眠も重要です。生活リズムが乱れるとかゆみを感じやすくなるため、規則正しい生活を心がけましょう。寝る前の飲酒は睡眠の質を低下させるため、飲酒は食事時にとどめるのが望ましいでしょう。

入浴は就寝1時間前までに済ませて体温を下げておくと、寝つきがよくなり、就寝中に無意識にかいてしまうのを防ぐことにもつながります。夏場は薄着になりますが、肌着は木綿素材など通気性がよく、肌に密着しすぎないものを選ぶことも、かゆみ予防に役立ちます。

5. かゆみを抑える市販薬と受診の目安

薬剤師

乾燥を放置し、かゆみによって皮膚をかき壊してしまうと、「皮脂欠乏性湿疹」や「掻破(そうは)性湿疹」へと悪化することがあります。また、傷ついた皮膚に細菌が感染すると、「とびひ(伝染性膿痂疹)」を発症することもあります。バリア機能が低下しているシニアは特に注意が必要です。

かゆみを抑えるには、抗ヒスタミン成分の入った外用薬(塗り薬)を使うのが一般的ですが、効果を高めるために、局所麻酔成分や局所刺激成分など、他の成分も一緒に含まれる市販薬も多くあります。また、かゆみや湿疹が強い場合には、抗炎症作用のあるステロイド外用薬の使用が有効です。適切に使用することで炎症が改善し、かゆみの軽減が期待できます。薬局やドラッグストアで、薬剤師や登録販売者に相談しましょう。

一方で、「市販薬を使用しても改善しない」「化膿や水ぶくれなど症状が悪化している」「全身に広がってきた」といった場合は、別の疾患の可能性も考えられます。そのような場合は自己判断せず、使用中の薬を持参のうえ、速やかに皮膚科を受診しましょう。受診時には、「いつから・どのような症状が出たか」「市販薬使用後の変化」などを具体的に伝えることが大切です。


写真:PIXTA

監修:坪井良治先生

構成:研友企画出版


【監修者プロフィール】
坪井良治(つぼい・りょうじ)
東京医科大学名誉教授/西新宿サテライトクリニック理事長・院長
1980年、防衛医科大学校卒業。順天堂大学大学院医学研究科修了後、ニューヨーク大学医学部研究員、順天堂大学皮膚科学講師・助教授などを経て、2002年から2020年まで東京医科大学皮膚科学分野主任教授を務める。脱毛症、アトピー性皮膚炎、皮膚真菌症(いわゆる水虫)、褥瘡、皮膚腫瘍などを専門とする。
西新宿サテライトクリニック皮膚科



坪井良治先生

この記事の提供元
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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