電車や飛行機での移動、観光地巡り、非日常的なホテル空間。元気なときは何もかもがワクワクした旅行も、高齢のご家族や介護が必要なご家族が一緒となると「なかなか行けない」「今の状況では難しい」とあきらめてしまう人も多いのではないでしょうか。

そんなとき、心強い味方となってくれるのが“旅サポーター”。「いつまでも旅をしていたい!」というご家族みんなの夢を叶えてくれます。

1. 旅サポーターとは?

「近所の喫茶店へコーヒーを飲みに行くのも、ヨーロッパの美術館へ行くのも、どちらも立派な旅ですよ!」
 
そう話すのは、「 NPO法人 高齢者・障がい者の旅をサポートする会」の理事長を務める久保田牧子さん。2007年 に会を設立して以来、数多くの高齢者や障がいのある人たちの「旅をしたい」を叶えてきました。
 
旅サポーターとは、「NPO法人 高齢者・障がい者の旅をサポートする会」の養成講座を受け、認定された旅の支援者のことを指します。「出かけたいけれど一人で出るのは不安」という高齢者や障がい者ご本人はもちろん、「高齢の親と一緒に旅をしたいけれど、自分たちだけで連れていくのは不安」というご家族にも寄り添う、旅の同行者です。
 
旅とはいっても、必ずしも電車や飛行機に乗って長距離を移動したり、宿に泊まったりするわけではありません。とくに介護を受けているような、いつも同じ場所で過ごす時間が多い人たちにとっては、玄関から外へ出ること自体がとても大きな移動。駅前のスーパーへ買い物に行くことも含め、外出のすべてを「旅」と捉え、お出かけのサポートをしてくれます。
旅サポーターとは?

2. 旅サポーターがお手伝いしてくれる2つのこと

現在登録されている旅サポーターには、看護師、ホームヘルパー、理学療法士、作業療法士など、医療系の資格を持つ人が多くいます。お手伝いしてくれることは大きく分けて2つ。1つは情報提供、もう1つは旅の同行 サポートです。
 
①旅の情報提供
旅サポーターは「NPO法人 日本ユニバーサルツーリズム推進ネットワーク」の一員でもあるので、全国各地の情報が豊富。「旅先にバリアフリーの宿はある?」「介護食に対応してくれるレストランは?」など、まずは電話や窓口で相談してみましょう。「そもそもどんな旅ができるのかわからない……」という人は 、旅行会社を紹介してもらうこともできます。
 
また、高齢の人や要介護の人にとって、外へ出かける際に最も 気にかかるのが「移動」。バスへ乗るときのステップ、駅のホームへの行き方 、エレベーターの場所など、外の世界にはさまざまなハードルが待ち構えています。旅サポーターはそれらの情報をいろいろ調べ、交通機関を快適に利用 できるようサポート。車いすのレンタル の手配もしてくれます。
 
もちろん、トイレ問題に関してもしっかりフォローしてくれます。最近は駅やホテルのバリアフリー化が進み、大人用のベッドが備わっている多目的トイレもあるので、座ってトイレができない人でも安心です。 
 
②旅の同行 サポート
旅へ出るにあたり、家まで迎えに来てもらう、駅で待ち合わせる、旅先の現地から合流してもらうなど、どのタイミングで旅サポーターに関わってもらうかは自由です。移動や観光地巡りだけでなく、宿泊先で一緒に泊まってもらうこともできます。
 
ただし、旅サポーターがしてくれるのは介護ではなくあくまでも“旅の同行 サポート”。調理や掃除などはいたしません。「一緒に旅をする人」という前提でのサポートをお願いしましょう。
旅サポーターがお手伝いしてくれる2つのこと

3. どんな人が利用しているの?

実際に、どんな人が旅サポーターを利用しているのでしょうか。久保田さんに、過去に一緒に旅をされた方の例をいくつか教えていただきました。
 
◆電気街へ買い物に行きたい◆
障がい者施設に入居している50代男性Aさん。都内の電気街へ買い物に行きたいけれど、日曜日の人混みの中に一人で行くのは不安ということで依頼がきました。多くの人が行き交うなか、旅サポーターが車いすを押して目的の店まで移動。欲しかったものはもちろん、思いがけず気に入った製品もあり大満足のお買い物になったようです。
 
◆祖母に結婚式に出席してほしい ◆
90代の祖母を持 つ女性Bさん。おばあさまに自分の結婚式へ出席してほしいけれど、式当日は面倒を見てくれる人がいないため、旅サポーターに付き添いを頼みたいと依頼がありました。ところが結婚式の数カ月前、おばあさまは誤って転倒して足を骨折……。一時は出席をあきらめかけましたが、「せっかくの晴れの日ですから!」という旅サポーターの説得により無事参加することができました。
 
◆家族みんなで旅行に行きたい◆
80代の母親を自宅介護中の女性Cさん。今まで自分たちが旅行するときはお母さまをショートステイにお願いしてきましたが、どうにか一緒に行く方法はないかと相談を受けました。まずは旅サポーターがご自宅まで迎えに行き、ご家族みんなで行き先の神戸まで移動。元気なご家族は酒蔵やパン屋巡りを楽しみ、お母さまと旅サポーターは港町をのんびり散策しました。お宿での夕食時、それぞれの体験を共有する時間がとてもうれしかったとご報告をいただいています。
どんな人が利用しているの?

4. 旅サポーター を利用するには

旅サポーターを利用するには、「NPO法人 高齢者・障がい者の旅をサポートする会」の会員になることが必須です。次のような手順で旅のお手伝いをお願いしましょう。
 
①電話・メール・FAXなどで問い合わせ、相談
②会員になる
③日程・行き先・介助内容などを伝える
④旅サポーターの紹介を受ける 
⑤出発2〜3日前に旅サポーターから連絡がきて打ち合わせ
⑥出発!
 
集合場所までの旅サポーターの往復交通費や、同行中の旅費は利用者負担になります。詳しくは「NPO法人 高齢者・障がい者の旅をサポートする会」までお問い合わせください。

5. 旅がもたらすうれしい健康効果!

長年、高齢者や障がい者の方と一緒に旅を続けてきた久保田さん。利用された方々を見ているなかで、旅には健康効果があることを実感しているといいます。
 
「旅の予定が決まると、みなさんのお顔からワクワク、ドキドキといった気持ちがあふれているのを感じます。旅行に行くんだから元気でいなきゃ、旅行先では車いすから立ち上がって景色を見るんだと、いつも以上にリハビリに励む方がとても多いのです。帰ってきてからは、次はどこへ行こうかと、早速計画を立てる方も。楽しかった思い出が最初のウキウキ につながり、生きる力になっていきます」
 
90歳のある 男性は、「生きている間に会いたい」と教え子が住むハワイへ行きました。当時は要介護度5でストレッチャーのような車いすにほぼ寝たきりの状態でしたが、旅行から帰ってくると驚くほど元気に。要介護度は2まで回復し、その後も中国、韓国、ドイツへと旅をされたそうです。
 
「外に出ると、心が本当にイキイキ、晴々とします。どんな人でもこれからの人生まだまだ先がいっぱいありますから、外出したり旅行したりして元気に暮らしていただきたいというのがいちばんの想いです」と、久保田さんは語ります。
旅がもたらすうれしい健康効果!

6. まとめ

何歳になっても、外出や旅は心をウキウキさせるもの。玄関から一歩踏み出すだけで景色は変わり、人生が変わります。
 
そして、その夢を実現するお手伝いをしてくれるのが、“ 旅サポーター”たちです。お一人でのお出かけはもちろん、ご家族みんなの思い出を増やすために。あきらめる前に、まずは相談することから始めてみませんか?


監修:久保田牧子さん


久保田牧子(くぼた・まきこ) ※写真下
「NPO法人 高齢者・障がい者の旅をサポートする会(NPO法人 東京ユニバーサルツーリズムセンター)」理事長。数々の雑誌編集を経て、2007年に会 を設立。高齢者や障がい者がイキイキ暮らすための「旅」をテーマに、自身も旅サポーターとして国内外の旅に同行している。
まとめ
この記事の提供元
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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