シニアと行きたい旅行プランをトラベルライターの間庭典子がご紹介! 今回は親子3人で旅したみちのくの縄文遺跡をたどる温泉旅を紹介。青森ではねぶた祭りのショーも鑑賞し、三内丸山遺跡ではガイドツアーに参加して親子で満喫しました!

1. 毎年恒例の温泉巡りの親子旅。今回のテーマは「縄文時代」

我が家で毎年、恒例となっているのがJR東日本の「大人の休日倶楽部パス」を活用した東北周遊旅。大人の休日倶楽部パスとは、JR東日本による満50歳以上のミドル、満65歳以上のジパング会員だけが購入できる期間限定のフリー切符。5日間18,800円で、東日本のエリア内なら乗り放題というお得なチケットなのです。特急や新幹線も自由席なら無制限に乗り放題。指定席も6回まで取れます。東京から新青森まで片道でも17,470円なので往復するだけでもかなりお得。

経済的メリットだけではありません。そのまま新幹線の自動改札機も通過でき、自由度が高いのです。シニア世代との旅には不確定要素も多く、そのときの体調や状況に応じて直前に予定を決定・変更できるのはありがたいのです。この切符を活用し、温泉を周遊する旅を毎年、企画しています。

今回のテーマは「縄文時代」。もともと、世界遺産にも認定された青森県の三内丸山遺跡センターに行ってみたい、という父の要望があったので、メインとなる目的地は青森です。せっかくなので、このフリー切符を活用して東北新幹線の各駅から行きやすい温泉を巡ってみました。


写真上:青森屋では施設内の公園をぽくぽく馬車で。11月の東北は紅葉が見事。

2. まずは小岩井農場からつなぎ温泉の縄文露天風呂へ

1日目に訪れたのはつなぎ温泉です。東北新幹線の盛岡駅で下車し、小岩井農場まきば園へ。牧場を見学し、ソフトクリームや小岩井牛の焼肉やジンギスカンのランチを堪能します。秋は紅葉が見事で、春や秋とはまた違う魅力がありました。小岩井農場は広大ですが、もぅもぅ号という園内周回バスがあり、ひとり200円で乗ることができます。ゴルフ場のカートのようなオープンカーで、牛が歩くような速度でゆっくりと見どころを回れるというもの。運転手さんのガイドも愉快で、途中下車もできるので、歩く距離を自分で調節して、移動できるのもいい。気軽に無理せず、牧場ウォークを楽しみました。



写真上:小岩井農場では放牧される牛たちや明治時代から昭和初期にかけての牧場の建造物を見学できるエリアも。


小岩井農場から車で約13分、約10㎞先にあるのがつなぎ温泉です。盛岡駅からもバスで30分ほどの距離でアクセスもよく、平安後期の武将、源義家ともゆかりのある歴史ある温泉街。滞在した「愛真館」はNHK朝の連続小説『どんど晴れ』の撮影にも使われたことがある温泉旅館だそう。大きな楕円の湯船や古代檜風呂、南部鉄器をモチーフにした陶器風呂などの大浴場と、竪穴式住居の中に入る水深120mの立ち湯がある縄文露天風呂が男女それぞれあり、男女入れ替え制なので、滞在中に4つもの大浴場に入浴できます。

3. 青森のテーマパークのような青森屋でねぶた祭り気分を味わう

2日目に宿泊したのは三沢駅からすぐの「星野リゾート 青森屋」です。ここは青森のテーマパークのような温泉施設。館内だけでも観光気分が味わえ、縁日のような「じゃわめく広場」では無料で飲めるりんごジュースの蛇口や季節によって変わるねぶたのディスプレイなど、フォトジェニックな空間がたくさん。津軽弁での朝のラジオ体操など、無料で参加できるアクティビティもありますよ。これから寒くなる季節、室内で観光できるのはいいですよね。

温泉は滝を眺めながらの露天風呂が見事で、ヒバの湯船やねぶたサウナがある浮湯、昔ながらの岩風呂がある離れの元湯の2つ。渋沢家とゆかりのある敷地内の公園を馬車でぽくぽくと周回するアクティビティも人気で(冬はストーブ馬車に!)、徒歩でも1周30分ほどなので、散歩するのもおすすめです。

そしてなんといっても青森屋の目玉は夏のねぶた祭りを体感できる参加型ショーを毎日開催していること! 館内には専用のシアターがあり、ねぶたや青森の各エリアのお祭りを再現。祭りを盛り上げる跳人(はねと)の踊りにも挑戦でき、ショーの後は記念撮影もできるアクティビティです。ねぶた祭りの期間に青森を訪れることが難しくても、その迫力を肌で感じられるのはうれしいですよね。

実は今年の夏、取材でねぶた祭りに参加した私。動くねぶたは想像以上の迫力で、街もすごい熱気でした。「実際はこうやってあの部分が傾いて、ねぶたがこのあたりまで迫ってきてね」「最終日は選ばれたねぶたが海上を周遊して花火がきれいだった」と経験を語れたのもよかったです。

古民家風のブッフェレストランでは帆立やイカ、マグロなど青森ならではの海鮮を使った郷土料理や炉端焼き、牛肉鉄板焼きなどを割烹着姿のかっちゃ(お母さん)がふるまってくれます。旬のりんごがざくざくはいったカレーなども。夜も朝も、好きなものを好きなだけいただけるので自分のペースで食事ができます(仕入れ状況により提供内容が変わることがあります)。


写真上:館内の温泉、浮湯の前には縁日のような出店が並ぶじゃわめく広場。

4. ヒバ千人風呂で知られる酸ヶ湯温泉で山にこもって湯治気分

3泊目は八甲田山にある酸ヶ湯(すかゆ)温泉旅館へ。ここは江戸時代から続く湯治場であり、高い効能を持つ温泉として親しまれてきました。せっかく青森を訪れるのなら、ぜひ名物の総ヒバ造り、160畳の広さを誇るヒバ千人風呂に行こうと計画。海抜900mにある山深い酸ヶ湯温泉ですが、青森駅から無料送迎バスが1日2便出ているため、意外にアクセスしやすいんです。絶景を楽しみながら約1時間バスに揺られているうちに到着。風情のある湯治宿で、5つの源泉の泉質はすべて酸性・含硫黄泉であり、療養に適した温泉として認められたパワフルなお湯。血行を促して体温を上げるとともに、免疫力を高めて細胞を活性化させる効用が期待できます。施設内には看護師の資格を持つ相談員が常駐している温泉療養相談室やマッサージ室もあります。

ヒバ千人温泉は男女混浴。巨大な湯船には仕切りは一切ないのですが、女性の入り口には衝立があり、お湯は乳白色。湯気もすごいので、湯船に入ると周囲の目は気にならず、それほどハードルは高くありません。かつレンタルで湯あみ着があるので、勇気を出して入ってみるのもよし。朝と夜のそれぞれ8時からの1時間は女性専用の時間帯となるので、その時を狙って入るのもいいですね。そしてヒバ千人風呂には洗い場がないため、男女それぞれの大浴場も別にあり、そのお湯も素晴らしいのです。まさに疲れた体を癒すのための滞在。旅の疲れがじわっとほぐれていくようでした。

食事も湯治宿のため、ヘルシーで適量。ブッフェでご馳走を食べすぎていた胃が休まる気がしました。雪がしんしんと降る中での酸ヶ湯温泉も風情がありますね(実際に数日後には雪が降り積もっていたことをニュースで知りました)。


写真上:名物ヒバ千人風呂は混浴ですが、湯あみ着がレンタルできるため、入浴する女性も多い(画像:国民保養温泉地 酸ヶ湯温泉旅館公式サイトより)。

5. 縄文文化の常識を覆した三内丸山遺跡センターのツアーに参加

酸ヶ湯温泉からバスで青森駅に行き、三内丸山遺跡センターへ。ここは想像以上に近代的な施設で、展示も遺跡もわかりやすく驚きました。もともと観光誘致で野球のスタジアムが作られるはずが、縄文時代前期から中期の大規模な集落跡が見つかり工事は頓挫。1992年から始まった発掘調査はいまだに現在進行形で、2021年には「北海道・北東北の縄文遺跡群」として世界文化遺産に登録されました。

地図を手に縄文遺跡や竪穴式住居を自由に見学することもできますが、ぜひとも無料のガイドツアーに参加してほしい! ボランティアガイドの皆さんがそれぞれユニークな切り口で、縄文文化がいかに豊かで、精神性に優れていたかをわかりやすくレクチャーしてくれます。縄文時代の竪穴式住居や高床式倉庫が復元されているため、実際に中に入ってその空間を体感することもできます。当時のランドマークタワー、大型掘立柱建造物や大型竪穴式住居などを見ると、高い技術をもった技師が設計していたのだとしか思えず、圧倒されます。この遺跡の発見により、歴史の教科書での縄文文化の常識も大きく変わったそう。40年前の知識のままで生きてきました、私…! 

約1万年続いていた縄文時代は、資源の豊さで狩猟・採集・漁労を中心とした生活が成立し、農耕に頼らずとも十分な食料を得ることができたため、争いがなかったといいます。縄文時代に生まれていたら、いったいどんな人生をおくっていたのだろう、とロマンを感じました。高床式倉庫が3つ並ぶ背景にある八甲田山は、縄文時代から活動していない休火山なのだそう。縄文時代の人々も、同じこの風景と眺めていたのかと思うと感慨深かったです。


写真上:無料ガイドツアーで各遺跡に関してのレクチャーを受け、縄文時代の豊かさを実感しました。

三内丸山遺跡センターから東北新幹線の新青森駅は車で10分ほど。駅で駅弁を選び、車内で思い出にひたってお疲れさま会をし、ゆったりとした気持ちで帰宅しました。縄文文化と温泉を巡るルートは、豊かな気分になれる旅でした。

この記事の提供元
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著者:間庭典子(まにわのりこ)

中央線沿線の築30年以上の一軒家に後期高齢者の両親と同居する50代独身フリーランス女子。婦人画報社(現ハースト婦人画報社)「mc Sister」編集者として勤務後、渡米。フリーライターとして独立し、女性誌など各メディアにNY情報を発信し、「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」(講談社)などを発行。2006年に帰国し、現在は日本を拠点に、旅、グルメ、インテリア、ウェルネスなど幅広いテーマの記事を各メディアへ発信。旅芸人並みのフットワークを売りとし、出張ついでに「研修旅行」と称したリサーチ取材や、さびれた沿線のローカル列車で進む各駅停車の旅を楽しむ。全国各地の肴を味わえる地元の居酒屋やスナックなどの名店を探すソロ活動も大好き。

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