シニアケアが必要な家族のために杖(ステッキ)を選ぼうとしても、「どれを選べばよいかわからない」と悩む方も多いのではないでしょうか?

 

今回は、杖(ステッキ)の主な役割や機能、種類を紹介したうえで、選び方のポイントをわかりやすく解説します。

 

1. 杖(ステッキ)の主な機能

主な機能を見ていきましょう。

 

〈機能ごとの具体例〉
■ 体重を支える
・杖(ステッキ)に体重をかけ、不自由な足への荷重を避ける
・痛みを軽減したり筋力の低下を補ったりする


■ 身体を安定させる
・バランスをとれる範囲が広くなり、転びにくくなる


■ 歩きやすくなる
・疲れにくくなる
・リズミカルに歩ける
・歩行への不安を軽減する

 

こうした機能を十分に発揮するためには、自分に合った杖(ステッキ)を選ぶことが大切です。

2. 主な杖(ステッキ)の種類を紹介

杖(ステッキ)にはT字杖や多点杖など、さまざまな種類があります。
以下で主な種類を紹介しますので、それぞれの特徴を見ていきましょう。

 

■ T字杖
支柱にT字型の握りが付いている杖(ステッキ)です。シンプルな構造のため、体重をしっかりとかける使い方には適しておらず、主に自力で歩ける方が使います。

使用時には、杖(ステッキ)に過剰に体重をかけるのではなく、軽く地面に触れるようにするのが原則です。

 

■ 多点杖
杖先が3点や4点になっているものです。

T字杖よりも強く体重を支えられ、骨折や麻痺などにより足の機能が衰えている方に適しています。

 

バランスをとれる範囲が広く安定していますが、重量があるため長時間使うと疲れやすい点がデメリットです。

また、地面に対して垂直に体重をかけて使うため、凹凸のある場所では不安定になりやすく転倒の危険性があります。

 

■ ロフストランドクラッチ
カフ(腕をあてる部分)に腕を通し、握りをもって使う杖(ステッキ)です。

カフと握りの両方で体重を支えられるため、握力が弱い方や手首に痛みがある方に適しています。サイズが大きいため、狭い場所ではやや使いにくい場合があります。

 

■ 松葉杖
わき当てと握りが付いている杖(ステッキ)です。

主に骨折や手術後に、足を床につけられない方が片足で歩いたり、部分的に体重をかけたりする際に使います。うまく扱うためにはある程度の練習や、上半身の筋力が必要です。

また、半身麻痺などで片手が不自由な方は使用が難しいことを押さえておきましょう。

 

■ 二本杖
二本で使うことで、前後左右に広くバランスをとることが可能です。転倒予防や散歩、ウォーキング、トレッキングなど、幅広い用途に適しています。

ストラップに手を通して使用するため、転倒した際には危険が伴うこともありますので注意が必要です。

 

↓イラスト(下): 左から2本はT字杖、右から2本は多点杖。

杖イラスト1

↓イラスト(下):左より、フストランドクラッチ、二本杖、松葉杖、手すり杖。

杖イラスト2

3. 杖(ステッキ)を選ぶ際のポイント

杖(ステッキ)を選ぶ際の主なポイントを解説します。

 

■使う方の機能から選ぶ
以下を参考に、使う方の機能に合わせたものを選びましょう。

 

〈杖の種類とそれぞれの使用に適した方の身体機能の状態〉

●T字杖
自力で歩ける方
筋力低下や痛みが軽度の方


●多点杖
足の骨折や麻痺により筋力が大きく低下している方
立つとバランスが不安定な方


●ロフストランドクラッチ
握力が弱く、しっかりと握れない方
手首に腫れや痛みがある方


●松葉杖
足の骨折や痛みなどがあり、体重を部分的もしくはまったくかけずに歩く方


●二本杖
足腰に痛みがある方
二本の杖で左右に広くバランスをとらないと不安定になる方

身体の機能に合わない杖(ステッキ)を使うと、転倒や痛みのリスクが高まります。

例えば半身に強い麻痺がある方の場合、またはバランスの不安定な方がT字杖を使うと、体重を支えきれずに転倒する可能性があります。

 

 

■使う場所に応じて選ぶ
使う場所に応じて、以下のように杖(ステッキ)の種類を選びましょう。

・T字杖:屋内、屋外いずれも可能
・多点杖:屋内の平らな道
・ロフストランドクラッチ、松葉杖:広い場所

 

コンパクトなT字杖は屋内外を問わず使えますが、多点杖は凹凸のある屋外には適しておらず、平坦な道での使用に向いています。

ロフストランドクラッチや松葉杖はサイズが大きいため、狭い場所は避けましょう。

 

 

■使う方の体格に杖(ステッキ)の長さを合わせる
人の体格はさまざまです。以下の4つの方法のいずれかを参考にして、使う方に合った長さに調整しましょう。

①身長の半分+2~3cmの長さ(150cmの方なら75cmに2~3cmを足し、77~78cmとする)


②足の小指から外側15~20cmの位置に杖をつき、握ったときに肘が約30°曲がる長さ


③床と太もも付け根の外側にある骨の出っ張りまでの長さ


④「気をつけ」の姿勢をとったときの床から手首までの長さ

 

背中や腰が曲がっている方は、これらの方法でも合わない場合があります。
詳細な長さは、取り扱い業者や理学療法士などに確認してもらいましょう。

 

 

■支柱の素材から選ぶ
支柱は素材の種類によって重さや耐久性が異なります。
主な素材とその特徴を見ていきましょう。

 

〈支柱の素材の種類とその特徴〉
●アルミ製
軽さと耐久性のバランスに優れ、広く使われている
手や腕に負担がかかりにくい


●カーボンファイバー製
軽さと高い強度があり、衝撃を吸収しやすい


●木製
他の素材よりも重く、耐久性も低い

 

アルミ製やカーボンファイバー製のものは、体重をしっかり支える安定性に優れています。一方、木製のものは機能よりもデザイン面が重視される傾向があります。

 

 

■握りの素材から選ぶ
握りやすいものを使うことで、疲れにくく安定して歩けます。
握りは種類がとても多いため、以下の代表的なものを参考にしてください。

 

〈握りの素材の種類とその特徴〉
●木製
自然な質感で手に馴染みやすい


●アクリル製
表面がなめらかなため、汗をかくと滑りやすい


●ソフト製
衝撃を吸収し、握っても疲れにくい
汗をかいても滑りにくい


アクリル製のものは汗で滑ることがあります。疲れにくく安定して歩きたい方は、木製やソフト製のものを使いましょう。

4. まとめ

杖(ステッキ)を選ぶ際は、使用する方の体の状態や使用する場所に応じて、適切な種類と長さを決めましょう。また、支柱や握りの素材も使いやすさに大きく影響するため、実際に歩いて試してみることも大切です。

取り扱い業者や理学療法士などの専門家の意見も参考にしながら、ご自分に合った杖(ステッキ)を見つけてください。


 監修:中谷ミホ



この記事の提供元
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著者:鈴木康峻

2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。

得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど

保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級

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