フレイル、サルコペニア、ロコモ。どれも高齢者の衰えを示す言葉ですが、「違いがよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。
今回は、3つの定義と関係性をわかりやすく整理したうえで、今日からできる予防のポイントをお伝えします。
まずは、それぞれのことばの意味を確認しておきましょう。
■ フレイル=心身の「総合的な虚弱」
フレイルとは、加齢によって心身の機能が低下し、健康と要介護の中間にある「虚弱」な状態を指します。
身体面だけでなく、心理面や社会面も含めた「総合的な虚弱」を示しており、どの部分が衰えているかによって、身体的、精神・心理的、社会的フレイルなどに分類されます。
■ サルコペニア=筋肉の「量と質」の低下
サルコペニアは、加齢や病気、栄養不足などによって筋肉の量と質が低下し、「筋力や身体機能が衰えている状態」を指します。
■ ロコモ=運動器の障害による「移動機能」の低下
ロコモ(ロコモティブシンドローム)は、骨・関節、筋肉、神経などの運動器の障害によって、「立ち座りや歩行など、移動する機能が低下した状態」です。
いずれも加齢に伴う心身の衰えを指しますが、着目している部分や原因が異なります。
3つの違いはわかりにくいものですが、以下の比較表で全体像を把握しましょう。

【主な原因】
・フレイル:加齢、病気、運動不足、栄養不足、社会的孤立
・サルコペニア:加齢、病気、運動不足、栄養不足
・ロコモ:運動不足、病気(骨粗しょう症、変形性関節症、変形性腰椎症など)
【主な症状】
・フレイル:筋力・握力低下、体重減少、体力・活動量の低下、意欲低下
・サルコペニア:筋力・握力低下、体重減少、体力低下、歩行速度の低下
・ロコモ:関節痛、立つ・歩くなど移動動作の低下
【主なリスク】
・フレイル:要介護状態、入院・死亡リスクの増加
・サルコペニア:転倒・骨折、病気にかかりやすくなる、日常生活動作の低下、要介護状態
・ロコモ:転倒・骨折、要介護状態
【判断の目安】
・フレイル:筋力(握力)、歩行速度、5回立ち上がり、疲労感、体重減少、活動量、社会性低下、気分の落ち込み(総合的に判断)
・サルコペニア:握力、筋肉量、歩行速度(測定値で判断)
・ロコモ:立ち上がりテスト、2ステップテスト、ロコモ25(1つでも該当すれば判断)
■ 「サルコペニア」と「ロコモ」の違い
どちらも身体機能の低下を示していますが、サルコペニアは「筋肉の問題」に限定されています。握力や歩行速度の低下などの症状は、主に筋肉量の減少が原因です。
一方で、ロコモは「運動器」の問題です。ロコモの原因には、筋力低下だけでなく、「骨粗しょう症やひざ・腰などの関節の障害」も含まれます。
■ 「フレイル」と「サルコペニア・ロコモ」の違い
最も大きな違いは、対象とする範囲の広さです。サルコペニアとロコモは主に「身体機能」の問題に焦点を当てています。対してフレイルは、身体的な問題に加え、心理的・社会的な問題も含む「総合的な虚弱状態」を指しており、より広い概念とされています。
フレイル・サルコペニア・ロコモの関係性をみていきましょう。

図のとおり、フレイルは「身体的フレイル」「精神・心理的フレイル」「社会的フレイル」の3つに分類されます。
身体的フレイルには、サルコペニアとロコモが含まれており、この2つが身体的フレイルの要因となっています。
また、サルコペニアとロコモは互いに関連しています。筋肉が衰えるとひざや腰への負担が増し、関節の痛みや変形を引き起こしてロコモにつながることがあります。
つまり、サルコペニアからロコモへ、そして身体的フレイルへと悪化していく可能性があるのです。
■ 負の連鎖(フレイル・ドミノ)に注意
ひとつの問題が放置されると、次々と他の問題を引き起こし、最終的に要介護状態になりかねません。
【負の連鎖(フレイル・ドミノ)の例】
1.筋力が低下する(サルコペニア)
足腰の筋肉が衰え、階段の上り下りや長時間の歩行が大変になる

2.バランスが悪化する(ロコモ)
身体を支える力が衰え、ひざや腰に負担がかかり、関節の痛みや変形が起きる

3.外出を控える(社会的フレイル)
痛みや転倒への恐怖心から、外出する機会が減って社会的に孤立する

4.栄養不足になる(身体的フレイル)
活動量が減ると食欲が落ちるため、栄養(特にたんぱく質)が不足する

5.サルコペニアが悪化し気力も低下する(精神・心理的フレイル)
たんぱく質が不足すると筋肉量はさらに減少し、身体の衰えに伴う自信喪失やうつ傾向につながる

6.最終的に要介護状態となる
日常生活動作が一人では難しくなったり、寝たきり・死亡リスクの増大につながったりする

きっかけは「少し筋力が落ちた」程度の小さな変化かもしれません。しかし放置してしまうと、少しずつ悪化していくのがフレイル・ドミノの怖いところです。
フレイル・ドミノは怖いと感じられるかもしれませんが、早い段階で衰えに気づいて適切に対策すれば、元の健康な状態に戻れます。ここからは、フレイル・ドミノの予防と対策を解説します。
①運動習慣をつける
ウォーキングや筋力トレーニングなど、適度な運動を毎日続けましょう。身体を動かすと、筋力やバランス能力の維持・向上、骨密度の維持など、多くの効果が期待できます。
【ウォーキング】
1日30分程度を目安に行いましょう。
「買い物に行く」「散歩がてら郵便局に行く」など、歩くこと以外に目的をもつと続けやすくなります。
【筋力トレーニング】
椅子での立ち座り10回、つま先上げ・踵上げ・もも上げをそれぞれ20回ずつ、1日2〜3セット行いましょう。「テレビのCM中だけ」と決めておくと、気軽に続けられます。

②栄養状態を改善する
どんなに運動を頑張っても、栄養が不足していると筋肉は強くなりません。筋肉を維持するには、たんぱく質をしっかり摂ることが大切です。
肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などを「両手の手のひらに乗るくらいの量」を目安に、1日3食に分けて摂りましょう。また、以下の5つを組み合わせて、バランスの良い食事を心がけてください。
・主食(ご飯やパン)
・主菜(肉・魚・卵など)
・副菜(野菜・きのこ・海藻など)
・乳製品
・果物

③社会とのつながりを保つ
人と話したり一緒に趣味に励んだりすることで、脳が刺激され、意欲や気力が上がります。
予定を入れることも効果的です。
・「来週は〇〇教室がある」
・「△△さんと会う約束がある」
こうした予定があると、生活にメリハリが生まれ、外出する動機づけにもなります。
週1〜2程度、地域の体操教室や趣味のサークルに参加してみましょう。
人との交流は、孤独感や無気力感を和らげるだけでなく、社会的フレイルや精神・心理的フレイルの予防にもつながります。

著者:鈴木康峻
2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。
得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど
保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級