今回は、介護保険施設の1つである介護老人保健施設(老健)の費用の詳細や利用できる負担軽減制度についてご紹介します。

1. 介護老人保健施設の費用

介護老人保健施設では、入所にあたって前払いする入居一時金は不要です。利用者が負担するのは、月額費用のみとなります。

 

【老健の費用目安】
・入居一時金:不要
・月額費用:5〜15万円程

2. 月額費用の内訳①:施設サービス費

介護老人保健施設における月額費用の内訳をみていきましょう。

 

■施設サービス費
施設サービス費とは、入所する方が受ける介護サービスに対する費用です。介護保険が適用されるため、自己負担額は所得に応じた1〜3割です。

老健の施設サービス費は、入所者の要介護度が高くなるほど負担額が高くなり、さらに部屋のタイプによっても金額が異なります。

部屋のタイプは大きく分けて「従来型」と「ユニット型」の2タイプがあり、それぞれの金額は以下の表の通りです(自己負担1割の場合)。

 

◾️従来型個室・基本型

 

 

・要介護1 21,420円
・要介護2 22,770円
・要介護3 24,630円
・要介護4 26,220円
・要介護5 27,750円

 

◾️従来型 多床室・基本型

 

 

・要介護1 23,640円
・要介護2 25,080円
・要介護3 26,940円
・要介護4 28,470円
・要介護5 30,090円

 

◾️ユニット型 ユニット型個室、ユニット型個室的多床室・基本型

 

 

・要介護1 23,880円
・要介護2 25,230円
・要介護3 27,090円
・要介護4 28,680円
・要介護5 30,270円

3. 月額費用の内訳②:食費と居住費

老健に入所したきの食費と居住費は、介護保険給付の対象外となるため、原則として全額を自己負担します。※所得に応じて、減免制度が受けられます。

 

■食費
国による基準費用額が定められており、日額1,445円(月額約43,350円)が目安とされています。

■居住費
老健の居住費は、部屋のタイプにより異なります。

 

 

多床室 11,310円
従来型個室 50,040円
ユニット型個室 60,180円
ユニット型個室的多床室 50,040円

 

4. 月額費用の内訳③:サービス加算

サービス加算とは、職員の体制や介護サービスの内容などに応じて加算される費用です。介護保険が適用されるため、自己負担額は所得に応じた1〜3割です。

主なサービス加算は以下の通りです。

 

 

初期加算(入所日より30日間)30円
認知症短期集中リハビリテーション加算 240円
退所時情報提供加算(I)500円

5. 月額費用の内訳④:日常生活費

日常生活費として、理美容代やクリーニング代、日用品費用などの費用も必要です。個人差はありますが、毎月1〜2万円程度が目安です。

なお、老健は公的施設のため、おむつ代はかかりません。入所中に処方される薬代も基本的に施設が負担するため不要です。

6. 介護老人保健施設の費用例

要介護4の人が「従来型・多床室(基本型)」と「ユニット型個室・基本型」を利用した場合の費用例は、以下の通りです。

 

【要介護4・自己負担額1割・利用者負担第4段階(住民税課税世帯)の場合】

◾️従来型・多床室(基本型)の費用例

 

 

・施設サービス費(1割)28,470円
・食費 43,350円
・居住費 11,310円 
・サービス加算 5,000円
・日常生活費 10,000円

 合計 98,130円

 


◾️ユニット型・ユニット型個室(基本型)の費用例

 

 

・施設サービス費(1割) 28,680円
・食費 43,350円
・居住費 60,180円 
・日常生活費 10,000円
・合計 147,210円

 

従来型よりもユニット型の方が高額で、約1.5倍の差があります。

7. 介護老人保健施設の費用を抑える負担軽減制度

最後に介護老人保健施設で活用できる負担軽減制度をご紹介します。
市区町村へ申請しなければ受けられないものが多いため、老健の支援相談員や担当のケアマネジャーに相談して、対象となる場合は速やかに手続きを行いましょう。

 

◾️負担限度額認定制度(特定入所者介護サービス費)
居住費と食費の負担を軽減する制度です。第1段階から第3段階までの負担段階区分に応じて自己負担の上限が定められており、利用者はその分を支払うだけで済みます。

生活保護受給者や世帯全員が住民税非課税で、預貯金が一定額以下の方が対象になります。
詳しくは、こちらの記事をご確認ください。


◾️高額介護サービス支給制度
1ヶ月に支払った介護保険の自己負担額が一定の限度額を超えた場合に、その超過分が払い戻される制度です。
詳しくは、こちらをご確認ください

 

◾️高額医療・高額介護合算療養費制度
1年間に支払った医療費と介護費の自己負担額を合算し、その合計が一定の基準額を超えた場合に、超過分が支給される制度です。
詳しくは、こちらをご確認ください。

 

◾️医療費控除
1年間で10万円以上の医療費を支払った場合、超過分を所得から控除できる制度です。老健でかかる費用(施設サービス費・食費・居住費など)は医療費控除の対象となります。

8. まとめ

介護老人保健施設へ入所する場合、入居一時金は不要で、費用負担は月額費用のみとなります。

月額費用の目安は、5〜15万円程度で、所得に応じた減免制度が活用できます。入所に際し、金銭面で不安のある方は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、老健の支援相談員に一度ご相談ください。

この記事の提供元
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著者:中谷 ミホ

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級

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