「親の施設入所を検討しているけれど、特養や老健など種類が多くて違いがわからない。うちの親にはどちらが合っているのだろう?」

 

このような悩みを抱えるケアラーへ向けて、特養(特別養護老人ホーム)と老健(介護老人保健施設)の役割の違いを解説します。ご家族の状況に合った施設選びの参考にしてください。

1. 特養と老健「役割の違い」

特養と老健は、どちらも介護が必要な方のための施設ですが、その役割には大きな違いがあります。

この違いを知らずに入所を決めてしまうと、「1対1でリハビリをしてほしいのに、集団体操やレクリエーションばかり」「やっと入所できたのに、半年後には『次の行き先を探してください』と言われた」といったミスマッチが起こりかねません。

こうした事態を避けるために、まずはそれぞれの施設の役割を整理しましょう。

■特養(生活の場)
特養は、介護が必要な方が長期的に暮らすための「生活の場」です。「終の棲家」とも呼ばれ、食事や入浴などの生活支援を受けながら、最期まで暮らすことができます。看取りにも対応しているため、利用者は最期のときまで慣れ親しんだ場所で過ごせます。

ただし、入所できるのは原則として「要介護3以上」の認定を受けており、自宅での介護が困難な方に限られます。なお、要介護1・2の方でも、やむを得ない事情がある場合は「特例入所」として認められるケースもあります。

■老健(リハビリ・在宅復帰の場)
老健は、病院でけがや病気の治療を終えたものの、すぐには自宅での生活が難しい方が入所する「リハビリ・在宅復帰の場」です。

病院と自宅をつなぐ「中間施設」という位置づけで、医師や看護師、理学療法士などの専門職が配置され、医療的ケアやリハビリ体制が充実しています。

ただし、目的はあくまで「在宅復帰」であり、原則3〜6ヶ月程度の短期利用が基本となる点を押さえておきましょう。

2. 特養と老健「医療体制の違い」

一方、老健では、同様の配置基準に加え「看護・介護職員総数のうち、7分の2程度を看護職員とすること」が義務付けられており、看護師の配置が手厚くなっています。24時間看護師が常駐する施設も多く、夜間でも痰の吸引や点滴管理などの医療的ケアに対応可能です。医療ニーズが高い方にとって、安心して利用しやすい環境といえるでしょう。

3. 特養と老健「リハビリ体制の違い」

特養と老健では、リハビリを行う目的そのものが異なるため、体制や内容にも大きな違いがあります。ご本人の状態や希望に合っているのはどちらか、両者の違いを見ていきましょう。

■特養のリハビリ(機能を維持する「生活リハビリ」)
特養でリハビリを担当するのは、機能訓練指導員と呼ばれる職員です。

理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)などのリハビリ専門職が配置されている施設もありますが、看護師が兼務しているところも少なくありません。

特養のリハビリは、身体機能や日常生活動作を「維持すること」に重点が置かれています。生活そのものをリハビリとして活かす工夫がなされており「車椅子ではなく歩行器で食堂まで移動する」「できる限り自分で食事や着替えをする」といった生活動作の練習(生活リハビリ)が行われます。また、体操・歌・手工芸などのレクリエーションを通じて体を動かす機会も設けられています。

■老健のリハビリ(在宅復帰に向けた「集中リハビリ」)
老健には、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)などのリハビリ専門職が必ず配置されており、在宅復帰に向けてマシンや器具を使った専門的なリハビリを提供しています。

筋力トレーニングや歩行訓練はもちろん、着替えや入浴動作の訓練、言葉や飲み込みの訓練など、状態に合わせた「個別リハビリ」を行うのが特徴です。特に入所から3ヶ月間は「集中リハビリ期間」とされており、施設によっては毎日リハビリを実施することもあります。

また、入退所の前後には専門職が自宅を訪問し、階段の昇り降りやトイレ・浴室での動作方法を指導したり、手すりの設置場所を提案したりと、自宅環境に合わせたアドバイスも行います。こうした支援が受けられるのは、在宅復帰を目指す老健ならではの特徴です。

4. 特養と老健「看取り対応の違い」

特養も老健も看取りに対応していますが、特養は「終の棲家として最期まで」、老健は「条件付きで対応可能」という違いがあります。それぞれの特徴を確認しておきましょう。

■特養での看取り
特養は、最期まで暮らすことを前提とした施設です。病院のような延命治療とは異なり、住み慣れた部屋で家族やスタッフに見守られながら、自然な形で最期を迎えるケアが行われます。

場所を移すことなく最期まで過ごせるのは、本人にとっても家族にとっても大きな安心につながります。

■老健での看取り
老健は本来、在宅復帰を目指す一時的な入所施設ですが、近年は看取りに対応する施設も増えてきました。

ただし、特養のように「入所した時点から最期までいられる」というわけではありません。リハビリを続けても在宅復帰が難しいと判断された場合に限り、医師の判断と家族の意向を確認したうえで、看取りへと方針が切り替わります。

5. 親の状態と希望に合わせた選び方

ここまで特養と老健の違いを見てきましたが、最後に「結局、うちはどちらを選べばいいの?」と迷ったときの判断基準を整理しておきましょう。

■特養がおすすめな方
・要介護度が高く(原則として要介護3以上)、自宅での介護に限界を感じている
・場所を転々とせず、最期まで安心して暮らせる「終の棲家」を求めている

手厚いケアを長期間にわたって受けたい場合は、特養が適しています。

■老健がおすすめな方
・退院直後で、自宅に戻るにはまだ体力や身体機能に不安がある
・集中的なリハビリで、在宅復帰を目指したい
・痰の吸引や経管栄養など、夜間も含めた医療処置が必要である
・特養の入所待ちの間、一時的に利用できる施設を探している

しっかりリハビリを行い体調を整えながら、在宅復帰を目指したい場合は老健が適しています。

■両方を「組み合わせる」選択肢も
特養と老健は、必ずしもどちらか一方を選ばなければならないわけではありません。

「まず老健に入所してリハビリを受けながら体調を整え、その間に特養への申し込みを行い、空きが出るのを待つ」という方法も一般的です。特養は人気が高く、入所まで数ヶ月から1年以上かかることも珍しくありません。

この待機期間を老健で過ごせば、ご本人は専門的なリハビリを受けながら体力や生活機能を維持・向上でき、ご家族も安心して特養の順番を待つことができます。

担当のケアマネジャーとも相談しながら、ご本人の「今の状態」に最も合った選択をしていきましょう。

【特養と老健の比較】


特養と老健

◾️役割・目的 
特養:「生活の場」=終の棲家として長期生活を支援する 
老健:「在宅復帰の場」=中間施設として在宅復帰を支援する

◾️入所期間 
特養:長期利用(終身利用)が可能 
老健:原則3〜6ヶ月(短期集中で在宅復帰を目指す)

◾️医師の配置 
特養:配置医師(非常勤可)による健康管理が中心 
老健:常勤医師1名以上(常駐)による医療

◾️看護体制 
特養:日中のみの配置が一般的(夜間はオンコール) 
老健:24時間看護師が常駐している施設が多く、医療が充実

◾️リハビリ 
特養:機能訓練指導員による生活リハビリが中心 
老健:PT・OT・STによる専門的・集中的リハビリを提供

◾️看取り 
特養:生活の延長として自然な最期を支援 
老健:看取り対応は増加しているが、まだ限定的


 監修:中谷ミホ

 

この記事の提供元
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著者:鈴木康峻

2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。

得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど

保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級

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