シルバーカーは、シニア世代が外出や移動をより安全かつ快適に行えるようサポートする歩行補助用具です。
今回はシルバーカーの種類と選び方、歩行器との違いについて解説します。最適なシルバーカー選びのヒントをお届けしますので、ぜひ参考にしてください。
シルバーカーと歩行器は、どちらも歩行の補助を目的とする福祉用具ですが、使用対象者や役割などに違いがあります。それぞれの違いを理解して、適切に選ぶことが大切です。
◾️シルバーカーの特徴
シルバーカーは、歩行が自立している方を対象にした用具です。荷物の運搬や腰をかけて休むこともできます。
ただし、体重を強くかけられる構造になっていないため、過度にもたれかかるとキャスター(前輪)が浮いてしまい、後ろに転んでしまう場合があります。そのため、軽く押しながら使うのが原則です。
◾️歩行器の特徴
歩行器は、足腰の力が衰えて一人で歩くことが難しい方に適しています。
使用する人の体重をしっかり支える安定感があるのが特徴です。車輪も浮きにくいため、転倒のリスクを抑えることができます。
歩行器は、日常的にケアが必要な方やリハビリでの使用にも向いており、安全な移動をサポート
します。
シルバーカーは大きく4種類に分けられます。それぞれのメリットやデメリット、おすすめの利用シーンは、以下の通りです。
①ボックスタイプ
車体が大きく安定感があるのが特徴です。荷物を収納できるスペースが備わっており、蓋を閉じれば座面として利用できるため、休憩時にも便利です。
〇メリット
・安定性が高い:大きめの車体で安心感がある。
・多機能:荷物の運搬だけでなく、座って休憩できる。
△デメリット
・重量がある:段差を超える際に腕力が必要。
・小回りがきかない:狭い場所での操作には不向き。
<おすすめの利用シーン>
・買い物や長時間の外出、荷物の運搬、休憩することを想定している方に適しています。
②コンパクトタイプ
軽量で持ち運びが簡単にできるのが特徴です。折りたたみが可能なため、さまざまな移動シーンに対応します。
〇メリット
・軽量で持ち運びやすい:電車やバスへの持ち込みが容易。
・収納性に優れる:折りたたむとコンパクトになり、車の後部座席やトランクにも収納可能。
・小回りがきく:狭い場所でもスムーズに操作可能。
△デメリット
・収納力が少ない:荷物をたくさん運ぶ場合には不向き。
・座面がない場合もある:休憩することを想定している方には注意が必要。
<おすすめの利用シーン>
・狭い場所での移動や、短時間の外出に適しており、持ち運びやすさを重視する方におすすめです。
③ミドルタイプ
ボックスタイプとコンパクトタイプの中間に位置するシルバーカーです。安定性や収納力を確保しつつ、大きすぎないサイズ感が特徴です。
〇メリット
・バランスの良さ:安定性とコンパクトさを兼ね備えている。
・使いやすさ:ボックスタイプほどの大きさや重さを求めない方に最適。
△デメリット
・中間的な性能:コンパクトタイプほどの軽量さや、ボックスタイプほどの安定性は期待できない。用途がはっきりしている方にはやや物足りない場合も。
<おすすめの利用シーン>
・どのタイプが自分に合っているか分からない場合、まずミドルタイプを試し、使い勝手を確認するのがおすすめです。
④ワゴンタイプ
ボックスタイプに似た安定性を持ちながら、荷物の運搬に特化しています。買い物や荷物の移動が多い方に最適です。
〇メリット
・荷物の運搬力が高い:2ℓのペットボトルが約6本入る大容量。
・買い物に便利:スーパーの買い物かごをそのまま載せられるタイプもあり、買い物時の手間を軽減できる。
△デメリット
・重量感がある:荷物を多く積む場合、操作時に力が必要。
・収納スペースを取る:車や室内での保管には場所を選ぶ場合がある。
<おすすめの利用シーン>
・頻繁に荷物を運ぶ方や、買い物の際にスムーズに荷物を移動させたい方におすすめです。
上段左から、ワゴンタイプ、コンパクトタイプ、ミドルタイプ、ボックスタイプ。
下段左から、電動シニアカー(電動カート)、コンパクトタイプ、ワゴンタイプ、コンパクトタイプ。
シルバーカーを選ぶ際には、次に解説する4つのポイントを押さえておきましょう。
■安定性の高さで選ぶ
歩行に不安がある方は、安定性の高いシルバーカーを選びましょう。
ボックスタイプやミドルタイプは4~9kg程度の重量で安定感があり、安心して歩くことができます。
一方、コンパクトタイプは3~6kgと軽量で持ち運びしやすい反面、、誤って強く体重をかけるとぐらついて転倒する危険性があります。
足腰に自信がなく不安な方は、重量のある安定性の高いシルバーカーがおすすめです。
■利用目的に応じて選ぶ
シルバーカーは用途によって適したタイプが異なります。どのタイプが利用目的に合っているかを検討し、使うシーンに合うものを選びましょう。
・買い物や長時間の外出
:ボックスタイプ
・短時間の外出や旅行
:コンパクトタイプ
・重い荷物の運搬
:ワゴンタイプ
・安定性・収納力・軽さのバランス重視
:ミドルタイプ
■身長に合わせてハンドルの高さを調整する
シルバーカーのハンドルは、使う方の身長に応じて高さを調整しましょう。適切な高さで使用することで、安全性と快適性が向上します。
高さの目安は、身長の半分に5~15cmを足した高さです。
例)身長160cmの場合
160÷2+5〜15cm=85~95cm
目安から外れると、転倒や身体の痛みにつながりやすくなります。適切な高さが分からない場合や調整がうまくいかない場合は、販売店のスタッフや福祉用具の専門業者、理学療法士などに見てもらうことをおすすめします。
■キャスターの種類から選ぶ
シルバーカーのキャスターは、主に次の3種類に分けられます。使用シーンや環境を考慮して、シルバーカーを選んでみましょう。
◾️直進固定(直進のみ可能)
・凹凸のある屋外でも、キャスターがぶれずに進める
・向きを替えるときに力がいる
・キャスターがシングル(一つのみ)の製品では、道の溝にはまることがある
◾️2WAY(直進固定+角度調整)
・直進固定と左右の角度調整(機種により45度や60度など)との切り替えが可能(直進固定+360度回転する機種もあり)
・屋外は直進固定にし、屋内は小回りのきく角度に調整することで、路面の状況に応じて使い分けられる
・キャスターがダブル(二つ)の製品が多く、溝にはまりにくい
◾️3WAY(直進固定+角度調整+360度回転)
・2WAYの機能に加え、360度回転への切り替えもできる
・屋内、凹凸のある屋外、狭い道などさまざまな路面に対応可能
シルバーカーを選ぶ際は、安定性や利用目的、使う方の身長、そして使用場所に適したキャスターの種類を確認することが大切です。これらを踏まえることで、より安心で快適に使えるシルバーカーを見つけられるでしょう。
本記事が、シニアの方が安心して使えるシルバーカーを選ぶ際の参考になれば幸いです。
監修:中谷ミホ
著者:鈴木康峻
2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。
得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど
保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級