介護だけじゃない！ 見落とされがちな家事負担は民間サービスに頼ろう！

関東地方に住むNさんは、夫と二人暮らしです。車で15分ほど離れた実家には、70代後半の両親が暮らしています。ある日、母親が自宅で転倒して足の骨折で緊急入院しました。病院での手続きを終えた後、実家に立ち寄ったNさんは、父親から「昼飯はどうするんだ？」と尋ねられました。

Nさんが「コンビニのおにぎりで済ませたよ」と答えると、父親は「俺の飯だよ！」と怒鳴りました。驚いたNさんは、「私はお母さんの入院対応で忙しかったの。自分のことは自分でやってよ」と返しましたが、父親は「なんだその言い方は！」と声を荒らげる始末です。

母親の入院に加え、家事がまったくできない父親の世話まで必要になり、Nさんはその負担の大きさにがくぜんとしました。父親は母親に生活全般を頼りきっていたため、電子レンジや洗濯機の使い方も分からず、ゴミの出し方すら知らなかったのです。

Nさんのように、倒れた親ではなく、元気で問題がないはずの家族の世話に追われ、途方に暮れた経験を持つ人は少なくありません。

家族が病気やけがで介護が必要になったときは、その人が担っていた家事や地域活動などの役割も、引き継がなければならなくなります。特に長年家事を任せてきた家族が突然いなくなると、残された家族が何もできず、介護者の負担が倍増するケースが多いのです。


写真（下）：著作者：zinkevych／出典：Freepik

介護の負担を完全になくすことはできませんが、家事負担は民間サービスを上手に活用することで大幅に軽減できます。

Nさんも、母親が退院して回復するまでの間、実家の家事負担を減らすために宅配弁当や家事代行サービスなどを利用しました。費用はかかりましたが、実家に通う回数や時間が減り、精神的にも身体的にも助かったそうです。

宅配弁当は、事業所によって塩分やタンパク質などの栄養面や柔らかさに配慮したものなど、さまざまな選択肢があります。また、シルバー人材センターを利用すれば庭の木の剪定や電球交換などのちょっとした家事も頼めます。Nさんは、情報収集をするうちに「助けてもらえるサービスがこんなにあるんだ！」と、少し気持ちが楽になったそうです。

Nさんの母親は退院し、家事ができるまでに回復しました。水回りの掃除は、継続して家事代行サービスを利用しており、母親自身も「助かる」と喜んでいるそうです。

さらに、思わぬ変化もありました。先日、実家を訪れたNさんは「お父さんが野菜炒めを作ってくれたの」と、嬉しそうな母親から報告を受けました。なんと父親が、市民センターで開催されている「男性のための料理教室」に通い始めたそうなのです。Nさんは「宅配弁当に飽きてしまったのか、父親なりに『このままではだめだ』と危機感を覚えたのかわからないけれど、嬉しい驚きです」と話してくれました。



写真上：著作者：Lifestylememory／出典：Freepik


地域によっては、介護保険などの公的サービスだけでなく、民間サービスを提供している事業所の一覧が載ったパンフレットを用意しているところもあります。病院や市区町村窓口、地域包括支援センターで入手できるので、確認しておきましょう。

「近い将来、介護問題が起きるかもしれない」と感じながらも、何を準備すればいいのかわからず、相談や情報収集を先延ばししてしまっている人は多いでしょう。まずは、お住いの地域のパンフレットを入手することからはじめてみてください。情報を持っているだけでも心の負担は軽くなります。介護は決して一人で抱え込むものではありません。頼れるサービスを活用しながら、無理のない形で向き合っていきましょう。


写真（トップ）：PIXTA


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