トラベルライターの間庭典子がシニア層の親と行く旅をプランニング。今回はいつか訪れたい夢の海外旅行としてアラブ首長国連邦のひとつ、ドバイの楽しみ方をご提案。多くの方にとって高そう? 暑そう? 遠そう? そして、怖そう! というイメージがありそうなドバイですが、実は効率よく快適に観光できるフレンドリーな都市なのです。意外なその現地事情や旅のコツを伝授いたします!
ドバイといえばアラブの石油王をはじめ、世界のセレブリティが集まり、未来都市のような高層ビルがそびえ立つ富裕層のための街。そんなイメージを持っている人が多いはず。実は私自身もそうでした……! 7つ星ホテルと称される世界最高級ホテル「バージュ・アル・アラブ」や、世界一高い高層ビル「バージュ・カリファ」、人口島群の「パーム・ジュメイラ」など、規格外なラグジュアリー空間も多く、リッチじゃないと楽しめない……と敬遠しがちですが、アイデア次第で限られた予算でも豊かな旅ができるのです。
徴的なのが、ダウンタウンの噴水ショー、ドバイ・ファウンテンでしょう。ドバイ・モールのふもとに広がる人工湖をステージに、1回あたり140mの高さ、およそ8万3,000ℓの水を吹き出す迫力のパフォーマンスが楽しめます。さらに、ライトアップされ、音楽とシンクロした壮大なショーが30分おきに開催されるのです(通常は午後6時から11時スタート回まで。日中に開催される曜日もあり)。水がこのように動きを変え、流れ、美しく光り輝くとは! と圧倒されます。空いた場所を見つければ、立ったまま眺めることもできますし、周辺にはテラス席のあるレストランも多く、食事しながら眺めることも可能。公園のようなパブリックな場所なので、無料で鑑賞できるのです。
約12万㎡の巨大な人口湖、バージュ・レイク。大迫力の噴水ショーを誰でも鑑賞できる
おすすめは「タイムアウト マーケット ドバイ」のベランダ席! これは世界各地の街から情報を発信するメディア「タイムアウト」が厳選した人気店がフードコートスタイルで並ぶ施設。イスラム教徒が多いドバイですが、気軽にビールやカクテルなどのアルコールも味わえるスポットでもあります。中東料理だけでなく、ピザや中華、YAKITORIなどの各国料理もあるので、食べたいものをそれぞれ選んで、という食事ができるのも魅力。軽くつまみながらちょっと一杯、その隣でデザートを、という楽しみ方も。
広いフードコート「タイムアウト マーケット ドバイ」には噴水ショーを見下ろせるベランダ席もあり
無料で施設やショーを満喫できるこの感じ、どこかで体験した……と思ったらラスベガスでした! ラスベガスはカジノ目的で来る人が多く、そこでしっかり収入が得られるので、ホテルのビュッフェが驚くほど豪華で、無料で見られる超一流のパフォーマーによるショーが充実していることでも有名。ドバイも富裕層が経済を活発にしてくれる恩恵で、コスパよく観光できる面があるのかもしれませんね。
例えば街の各所にウォーターサーバーのあるステーションがあり、飲料水を無料で提供しています。これで脱水対策もばっちり。飲み物代もセーブできます(笑)。 ドバイ政府が企業と連携してサステナブルな環境を推進し、ペットボトルを使わない取り組みの一つとしてウォーターサーバーが充実しているのです。このように街のインフレも整備され、誰もが楽しめるパブリックアートも点在。リーズナブルに観光できる都市でもあるのです。
多くの人にとって次なる不安は猛烈な暑さでしょう。確かに砂漠もあって灼熱のイメージがあるため、私も熱中症になるのではと恐れていました。私が訪れたのは3月でしたが、日本の真夏並みで昼に外に出るのは怯むほど。けれど、1年のほとんどが暑いせいか、街が整備され、車での移動が当たり前。しかもタクシーがそれほど高くないのです。初乗りが約12ディラハム(約360円)で、例えば空港から約30分の市街地ダウンタウンまで2000円前後で行けて、チップも不要。英語も通じ、アプリを活用すれば、より利用しやすくなります。日本のタクシーよりよっぽど利用しやすいかも。滞在中はタクシーでしか移動しないと割り切ってしまうのも手です。海外の公共機関って迷ったらドツボですから。
高級ブランドやドバイチョコレートのブティックなど、ショッピング天国のドバイ・モール
外に出なくても、百貨店の連絡通路のように、ビルとビルをつなぐチューブのような空中通路もあり、常に外気にあたることは避けられる街のシステムが構築されていると感じました。その面でもSFの世界の未来都市の様でした。高さ150mの巨大な額縁「ドバイ・フレーム」や建物そのものがオブジェのような「ドバイ未来博物館」など、車内から眺めるだけでわくわくするスポットも多いので、ドライブそのものも楽しめます。
ドバイ・モールなどの巨大なショッピング施設の涼しくて快適な環境でショッピングし、食事し、また、映画館や水族館、人工スキー場があるモールもあるので、終日楽しく遊べます。さらに、モールに連結したホテルもあり、滞在中全く外に出ることなく、施設内で快適に過ごせるのです。体力を消耗することなく滞在でき、トイレ問題に悩むこともなく、シニア層も安心だと思います。
アクティブに観光するのなら、ドバイを拠点にUAEに10施設を展開するローカルブランド「Rove Hotels」が秀逸でした。そのエリアの特色にあわせたデザインで、フォトジェニック! テーマパークを訪れたような世界観があるのです。ロッカールームやランドリーまでスタイリッシュなデザインなのに、友人のリビングでくつろぐような心地よさもRoveブランドらしさ。
私が今回、滞在したのはビーチサイドの「Rove La Mer Beach」と市街の中心地にある「Rove Downtown」の2施設でした。それぞれ全く違ったロケーション、デザイン、コンセプトなのも興味深かったですね。ドバイの街には気分や目的に合わせたRove Hotelsが点在しているので、数ヵ所に滞在してみるのもきっと楽しいですよ。
スタイリッシュなインテリアにプライベートなビーチなど、リゾート気分を満喫できる
「Rove La Mer Beach」はビーチの目の前。朝食ブッフェは品数も多く美味! 野菜中心な中東料理も多く、いろいろ食べても罪悪感がない(笑)。チーズやヨーグルトなど、腸内環境を整えてくれそうな発酵食品もずらりと並び、目が泳ぎます。テラスからはビーチやプールサイドが見渡せ、遠くには世界一高いビル「バージュ・カリファ」も拝めました! 映画のような風景が広がっていて感動! 午前中は目の前のプライベートビーチで過ごしたり、ドバイで一番、トレンディといわれるビーチリゾートのおしゃれなレストランを訪れてみても? 館内には24時間営業のコンビニもあり、機能的なホテルでした。
「Rove Downtown」は打って変わって大都会。ドバイ・モールへも徒歩圏内で(といって道が広く、地図で見るよりずっと遠いから注意!)観光にも便利。ビジネスユースも多いらしく、会議室やオフィススペースもありました(そしてそれらの空間もおしゃれ!)。ルーフトップには摩天楼に囲まれたプールやジムもあり、非日常感も味わえます。
未来都市のようなダウンタウンの中心部に位置する「Rove Downtown」は観光に便利
Rove Hotelsの一番の特徴は、ホテルから発着する街の中心地や観光スポット行きの無料シャトルバスを運行していること。このサービスを賢く使えば、安全に、効率よく、街を巡れるのです。施設や時期によっては2人で1泊9000円くらいから滞在でき、外資ラグジュアリー系のホテルと比較するとかなり経済的。しかも各スペースで記念撮影したくなるようなフォトジェニックさ。満足度が高く、他の国でもRoveブランドが展開されればいいのに、と心から願いました。
近未来の大都市とともに、ドバイの街にはアラビアンナイトの世界そのものの風景もあります。スーク(市場)はスパイス、布など、取引されている商品ごとに分かれていて、自分好みのフレグランスを調香してくれるパフュームスークにはわくわくしました。ゴールドスークは視界全体が黄金に染まるくらい市場が輝いており、華やか!
アラブ首長国連邦はイスラム教の国なので、ある一定の時間になるとモスクから祈りの声が聞こえ、異国情緒が。自分たちは異邦人なのだなあとしみじみしちゃいます。
私が訪れた時は夜明けから日没までは断食をするラマダン期間中でした。敬虔な信者は水も飲まないというストイックな断食ですが、日が暮れると断食明けの食事、イフタールを家族や仲間と楽しみ、街にはクリスマスのように華やかなイルミネーションが。自分を律して、困っている人に寄付を集めるのもラマダンの目的なので、深夜までレストランやショップが営業し、商業活動は活発でした。
SMCCUのアクティビティにはイスラム文化について楽しく体験するプランが満載
そんなイスラム文化や暮らしについて、「シェイク・ムハンマド文化理解センター(SMCCU)」のさまざまなアクティビティに参加することで学び、体験することができました。私が参加したのは、伝統的なイフタールを皆で味わいながら、慣習やなぜラマダン期間があるのか、実際、どのように過ごすのかをレクチャーしてくれ、皆でモスクを訪れ、礼拝後にイスラムの教えについて学ぶという内容。最後は鷹狩りの鷹と触れ合ったり、伝統的なボードゲームに挑戦したり、交流も楽しめます。朝の礼拝に参加し、朝食をともにいただくプランもあるので、予定に合わせて参加できます。英語での開催なので、アラビア語よりコミュニケーションはとりやすかったです。
イスラム教を国教とするドバイですが、他のアラブ諸国に比べると戒律が緩やかで、他宗教を尊重し合い、自由度が高い印象です。住んでいるのはインド系移民、中国系を中心とするアジア系、欧米系と多様。エミラティと呼ばれるUAE人で、ドバイの街で生まれ育った人は全体のわずか10%程度だそう。つまり9割近くが外国人。法人税がないなど、タックスヘイブンでもあるので各国の富裕層が集まり、経済が発達しています。雇用機会も多く、安全に働けるなどの理由で出稼ぎに来る移民が集まるのです。中東屈指のメトロポリタンであり、さまざまな文化が交じり合い、世界中の料理を味わえるのも魅力です。
ドバイには多様性豊かな社会を目指し、寛容・共存省(Ministry of Tolerance and Coexistence)があり、大臣がいるほど。国を挙げて民族や文化、宗教、性別の垣根がないダイバーシティでもあるのです。また、ドバイは東半球で初めて「認定自閉症観光地」に認定されました。ドバイ国際空港をはじめ、家族向けの施設の多くが、高度な訓練を経たスタッフと必要な設備を整え、自閉症や感覚過敏のある方々に配慮したサービスを提供しています。
そして、都市と古き良き街並み、ビーチ、砂漠がそれぞれがアクセスしやすい立地。異文化を尊重し、フレンドリーなドバイの街は親子旅にも最適なのです。
市街地から40分程度で砂漠にたどり着けます。砂漠でのサファリやキャンプを楽しむプランも
この著者のこれまでの記事
・発酵が育てた長寿の味。秋の軽井沢で楽しむ親子の美食旅|シニアと行きたい親子旅
・親子で非日常を味わう秋の「ヌン活」旅気分|シニアと行きたい親子旅
著者:間庭典子(まにわのりこ)
中央線沿線の築30年以上の一軒家に後期高齢者の両親と同居する50代独身フリーランス女子。婦人画報社(現ハースト婦人画報社)「mc Sister」編集者として勤務後、渡米。フリーライターとして独立し、女性誌など各メディアにNY情報を発信し、「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」(講談社)などを発行。2006年に帰国し、現在は日本を拠点に、旅、グルメ、インテリア、ウェルネスなど幅広いテーマの記事を各メディアへ発信。旅芸人並みのフットワークを売りとし、出張ついでに「研修旅行」と称したリサーチ取材や、さびれた沿線のローカル列車で進む各駅停車の旅を楽しむ。全国各地の肴を味わえる地元の居酒屋やスナックなどの名店を探すソロ活動も大好き。