年齢を重ねるにつれ、「体を動かした方がいい」とわかっていても、運動へのハードルを高く感じてしまう人は少なくありません。息が上がる、一人では続かない……そんな不安を解消してくれるのが、歩いてプレーする「ウォーキングサッカー」です。年齢や体力、サッカー経験の有無を問わず、誰もが参加しやすい新しい健康スポーツとして注目されています。

ウォーキングサッカー(歩くサッカー)は、走らずに歩いて行う新しい健康スポーツ。 一般社団法人日本ウォーキングサッカー協会(JWFA)が10年以上の研究をもとに開発した健康プログラムにより高齢者、運動が苦手な人、障害のある人まで、誰もが安全に参加できる“ユニバーサルスポーツ”として全国で広がっています。
推奨コートサイズは縦32~40m×横16~20m、1チーム5~8人制を基本に、環境や参加者に応じたカスタマイズが可能です。最大の特徴は、スピードを競うのではなく、ポジショニングやパスワークといった駆け引きを楽しむ点にあります。動きが緩やかな分、ボールを止める、蹴るといった基本動作を丁寧に行うことができ、視野の広さや身体と目の連動など、サッカーの基礎を自然に身につけることができます。
安全性を重視したルールも、ウォーキングサッカーの大きな特徴です。プレー中に走ることは禁止されており、両足が同時に浮いた状態は反則とみなされます。早歩きは認められていますが、かかとから着地することが推奨されており、体への負担を抑えながら運動を続けられます。また、選手同士の接触も禁止されているため、転倒や衝突によるけがの心配が少なく、女性や体力に不安のある方でも安心して参加できます。
さらに、ヘディングやスライディングは禁止され、キックの強さやボールの高さにも制限があります。相手がボールを保持している際に自分から奪いにいかないというルールも設けられています。一定の距離を保ちながら、相手の動きを読み、パスカットやミスを狙うことで、互いを尊重したプレーが生まれます。

日本ウォーキングサッカー協会の研究によると、ウォーキングサッカーには以下の特徴があります。
●中強度運動の維持
心拍数が安定し、体に負担をかけすぎない「中強度」の運動を継続しやすいため、生活習慣病の予防に最適です。
●全身運動
低負荷でありながら全身を使うため、ジョギング以上の多面的な健康効果が得られることも報告されています。
●身体機能の維持
筋力維持による転倒予防、骨密度の維持(骨粗鬆症予防)、血圧の安定、免疫機能の向上など、シニアが直面しやすい健康課題に対して幅広くアプローチします。
●認知症予防
「歩く」ことで血流が改善されると、脳内でBDNF(脳由来神経栄養因子 *)が増加し、記憶を司る「海馬」が活性化されます。さらに、プレー中に状況を判断するなど脳の複数領域を同時に使うため、認知機能の向上に非常に効果的です。
●メンタルケア
チームスポーツであるため、自然とコミュニケーションが生まれます。これにより、セロトニンの分泌が促進され、ストレス軽減や気分の改善につながります。
●社会参加の促進
シニア世代にとって、運動習慣と同様に大切なのが「孤立の防止」です。地域の仲間と一緒にプレーすることで、社会的なつながりが生まれ、フレイル(虚弱)予防やメンタルヘルスの改善に大きく寄与します。
*BDNF…脳内の神経細胞の成長、維持、再生を促進するタンパク質で「脳の栄養分」とも呼ばれる物質。

ウォーキングサッカーの魅力は、運動効果だけにとどまりません。年齢や性別、経験の差を超えて、誰もが同じフィールドで楽しめることから、自然な交流が生まれます。実際に、小学生から70代までが一緒にプレーを楽しんでいる教室もあり、世代を超えたコミュニケーションの場となっています。
シニア世代にとって、仲間との交流や若い世代との触れ合いは、心の健康にも良い影響を与えます。お子さんやお孫さんと一緒にボールを追いかける時間は、気分転換や生きがいにもなり、生活にハリをもたらします。仲間と笑顔で体を動かすことで、孤立を防ぎ、前向きな気持ちを保つことにもつながるでしょう。
ウォーキングサッカーは、「安全・低負荷・高効果」を科学的に実現したプログラムです。 単なる運動不足解消にとどまらず、認知症予防、フレイル予防、そして仲間づくりの場として、シニア世代の「健康寿命の延伸」に欠かせない活動となるでしょう。

健康のために運動を始めたいと思っても、「続けられるか不安」という声は少なくありません。ウォーキングサッカーは、スピードや体力を競わないため、運動が苦手な方でも達成感を得やすく、「楽しいから続けたい」と感じやすいスポーツです。
けがの心配が少なく、仲間と一緒にプレーできることで、自然と運動が生活の一部になります。始める際は、まず体験会に参加してみるのがおすすめです。動きやすい服装と歩きやすい靴があれば十分で、特別な準備は必要ありません。何よりも大切なのは、上手い下手を気にせず、楽しむことを優先する姿勢です。
ウォーキングサッカーは、フットサルコートや体育館に限らず、地域のグラウンドやイベントスペースなど、さまざまな場所で実施できます。発祥地のイギリス(イングランド)では、シニア世代を中心に1,200以上のクラブが活動しており、世界53カ国以上が国際連盟に加盟しています。
日本では、日本ウォーキングサッカー協会が中心となり、普及活動を進めています。競技としての普及だけでなく、健康増進や介護予防、地域交流を目的とした体験会や教室も各地で開催されています。たとえば、神奈川県川崎市では定期的に教室(コスギ倶楽部ウォーキングサッカー教室)が開かれており、初めての方でも気軽に参加できます。

実際にウォーキングサッカーを体験した方からは、「運動が苦手でもゴールを決められて楽しい」「接触がないので安心してプレーできる」「仲間と続けるうちに体力がついた」といった声が聞かれます。退職後に始め、生きがいになったという方も少なくありません。
日本ウォーキングサッカー協会理事の佐藤光則さんは、「走ることや接触、強いキックを禁止し、駆け引きを楽しむのがウォーキングサッカーの基本です。健康寿命の延伸やフレイル予防、認知症予防にもつながるスポーツです」と話しています。
ウォーキングサッカーは、シニア世代が安全に、そして楽しく体を動かしながら社会とつながり続けることができる、新しい選択肢です。ぜひ、健康のために、仲間やご家族と一緒に「歩くサッカー」を体験してみてはいかがでしょうか。
監修:一般社団法人 日本ウォーキングサッカー協会
一般社団法人 日本ウォーキングサッカー協会HP…広く一般市民を対象に、ウォーキングサッカーの普及と競技力の向上を推進する専門団体。「歩くサッカー」という特性を生かし、老若男女、さらには多世代が共に楽しめる運動環境の創出と、地域コミュニティーの活性化を目的とした社会の実現に寄与している。
事業活動は、競技の普及・振興にとどまらず、選手や指導員、審判員の育成から、国内競技大会の企画・開催まで多岐にわたる。さらに、スポーツを通じた社会貢献や国際交流も積極的に実施しており、日本発のウォーキングサッカーの魅力を世界へ発信する活動も展開。「誰もが参加できる活力あるスポーツシーン」の確立を目指し、健康増進と多世代交流を軸にした新しいスポーツコミュニケーションを提唱。豊富な指導実績と競技運営の知見に基づき、本記事の専門的な監修を行っている。
構成:研友企画出版
著者:MySCUE編集部
MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。