耳鳴りは単なる耳の不調ではなく、実は「脳」が深く関わっている現象です。耳鳴りを訴える人の多くに難聴(聞こえの悪さ)があり、脳がその聞こえにくさを補おうとして神経の働きを過剰に高めた結果、耳鳴りが起こると考えられています。症状を悪化させないためにも、早めの受診と日常生活の見直しが大切です。

1. 耳鳴りの正体は「脳の過剰な働き」だった

耳の構造

静かな部屋にいるときや夜寝る前に、「キーン」「ジー」といった音が耳の奥で鳴り響く。そんな耳鳴りの背景には、「脳の過剰な働き」が関係していると考えられています。

私たちが音を感じ取る仕組みは、内耳にある「蝸牛(かぎゅう)」が音の振動を神経の信号に変換し、聴神経を通じて脳へ送ることで成り立っています。しかし、加齢や病気によって聴力が低下すると、一部の音の信号が脳へ十分に伝わらなくなります。

すると、脳は音の不足を補おうとして活発に働き始めます。わずかに届く信号を強めて「聞こえやすく」しようとするのです。その結果、通常は意識しないようなかすかな音まで増幅され、「キーン」という耳鳴りとして感じられると考えられています。

つまり、耳鳴りの原因の一つは「脳の過剰な働き」にあります。耳鳴りのある人の多くに、加齢性難聴などの難聴がみられます。『耳鳴りがあるから聞こえにくい』のではなく、『聞こえにくいから耳鳴りが起こる』のです。耳鳴りばかりに気を取られ、肝心の「聞こえの低下」に気づいていない人も少なくありません。

2. 要注意! すぐに病院へ行くべき危険なサイン

救急診療のイメージ

耳鳴りの多くは加齢性難聴に伴うものですが、中には命に関わる危険な病気が隠れていることがあります。以下の症状がある場合は、放置せず、すぐに医療機関を受診しましょう。

【すぐに救急車を呼ぶべきサイン:脳梗塞などの疑い】
耳鳴りとともに、以下の症状が同時に現れた場合は、脳梗塞など脳の血管の病気が疑われます。これらの症状が見られたら、ためらわず救急車を呼びましょう。

・体の片側に力が入らない(まひがある)
・ろれつが回らない、言葉が出にくい
・物が二重に見える

3. 最新の治療法:「音」を聞いて耳鳴りをやわらげる?

診療時のやりとりの様子

耳鳴りを完全になくす特効薬は現時点ではありませんが、研究により「耳鳴りの苦痛をやわらげる治療法」が確立されてきています。代表的な治療法をご紹介します。

●教育的カウンセリング
耳鳴り治療の基本です。医師から「耳鳴りの仕組み」や「命に関わる病気ではないこと」の説明をしっかり受けることで、不安や疑問の解消が期待できます。強いストレスや不安は、脳に耳鳴りを「危険な音」と認識させ、さらに症状を強く感じさせる悪循環を生みます。正しく理解するだけで、苦痛が軽くなる方も少なくありません。

●音響療法・TRT療法
あえて「音」を聞くことで、耳鳴りに慣れていく治療法です。サウンドジェネレーターという機器を使い、自分が心地よいと感じる治療音(川のせせらぎや雑音など)を聞き続けます。最初は短時間から始め、医師の指導のもと装着時間を調整します。耳鳴りを完全に消すのではなく、「気にならない状態」に近づけることを目指します。効果には個人差がありますが、半年から1年ほど続けると、耳鳴りが気にならなくなる人が多いとされています。

●補聴器の活用
難聴を伴う耳鳴りでは、補聴器が有効な場合があります。補聴器で「周囲の環境音」を脳に届けることで、脳の過剰な活動が落ち着くことが期待できます。また、背景の雑音が入ることで、耳鳴りの音が相対的に目立たなくなる効果もあります。効果を実感するまでの期間には個人差があり、数週間から数ヶ月かかることもあります。

4. 今日からできる耳鳴りを遠ざける7つの生活習慣

リラックスしているシニア女性

耳鳴りは、自律神経の乱れや睡眠不足、精神的ストレスによって悪化することがあります。日常生活の中で「耳鳴りが気にならなくなる工夫」を取り入れましょう。今日からできる7つの緩和につながる生活習慣を紹介します。

習慣1:いつも音楽をかけておく(静寂を避ける)
ほとんど音のしない静かな部屋にいると、どうしても耳鳴りを強く感じてしまいます。普段の生活の中では、小さめの音量でテレビやラジオ、リラックスできる音楽を流しておきましょう。ただし、イヤホンやヘッドホンの大音量や長時間の使用は、音響性難聴(イヤホン難聴)を引き起こして耳に負担をかける恐れがあるため避けてください。

習慣2:趣味や地域活動などで気を紛らす
何もしないでのんびりしていると、どうしても耳鳴りに意識が向いてしまいます。熱中できる趣味や、地域の集まりに参加するなどして、気持ちが耳鳴りに向かない時間を持つことが大切です。

習慣3:体を動かす習慣をつける
体を動かしている間は、耳鳴りが気にならなくなる傾向があります。また、耳鳴り悪化の引き金となる「ストレス」の解消にもつながります。1日合計30分程度を目安に、ウォーキングなどを始めてみましょう。

習慣4:睡眠時間を十分に確保する
夜、布団に入って静かになると耳鳴りが気になって眠れなくなり、睡眠不足でさらに耳鳴りが悪化するという悪循環に陥りがちです。眠れないときは小さな音量で音楽や自然環境音を流すなどして、ご自身に合った十分な睡眠時間を確保するよう心がけてください。

習慣5:栄養バランスのよい食事をとる
栄養不足で体調が崩れるとストレスに弱くなり、耳鳴りが悪化しやすくなることがあります。ビタミンB群、ビタミンC、カルシウムなどをバランスよくとりましょう。一方で、カフェインや香辛料の摂取は耳鳴りに影響を与えることがあるため、とりすぎには注意しましょう。

習慣6:耳や鼻へのダメージに注意!
日常の何気ない癖が耳鳴りを引き起こすことがあります。「耳かきのやりすぎ」「左右の鼻の穴を同時に強くかむこと」「イヤホンでの大音量」は耳に強い負担をかけるため、できるだけ控えましょう。

習慣7:「耳鳴り日記」をつける
どんなときに耳鳴りがひどくなるのかをメモしておきましょう。天候、最近の生活の変化(外出が減ったなど)、どんな音がどれくらいの大きさで鳴っているかを記録することで、悪化の「引き金」を避ける対策が立てやすくなります。

5. まとめ

そのほか、全身を緩めることも大切です。ストレスを感じると無意識に体に力が入ります。鼻からゆっくり息を吸い込みおなかを膨らませ、次に口からゆっくり息を吐き出しておなかをへこませる「腹式呼吸」を取り入れて、自律神経のバランスを整えましょう。肩や首をすくめて一気にストンと力を抜く体操も効果的です。

耳鳴りがあっても、適切な対処で楽になる可能性があります。まずは耳鼻咽喉科できちんと検査を受け、難聴がないかを確認しましょう。そして、音楽を楽しんだり、趣味に出かけたりと、できることから生活を見直すことが、豊かなシニアライフへの第一歩です。


写真:PIXTA

監修:笠井 創先生


【監修者プロフィール】
笠井 創(かさい・はじむ)
自由が丘耳鼻咽喉科笠井クリニック院長。千葉大学医学部卒業後、同大学耳鼻咽喉科学教室に入局し、大学病院での麻酔科研修や千葉労災病院耳鼻咽喉科研修、国保君津中央病院耳鼻咽喉科医長、国立がん研究センター(現・国立がんセンター)中央病院頭頸部外科医員、横須賀共済病院耳鼻咽喉科医長などを経て、1990年に耳鼻咽喉科気管食道科笠井クリニックを開設。1999年より笠井耳鼻咽喉科クリニック・自由が丘診療室(現・自由が丘耳鼻咽喉科笠井クリニック)を開院し、アレルギー性鼻炎やいびき・睡眠時無呼吸症候群、扁桃膿栓症などに対するレーザー治療やラジオ波手術など日帰り手術を積極的に行う耳・鼻・のどの専門医。「できるだけ短期間に、できるだけ痛みを少なく」をモットーに、外来手術とわかりやすい情報提供に注力する。
自由が丘耳鼻咽喉科 笠井クリニック公HP


笠井創先生


構成:研友企画出版

この記事の提供元
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著者:MySCUE編集部

MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。

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