アルツハイマー型認知症の患者さんの家族が対応に最も困っている症状は、「暴力的な行動」「徘徊する」「突然叫ぶ」の3つです。また、約8割の方が日常生活がこれ以上続けられない」 「我慢の限界のレベルにある」と回答しています。
同居する家族介護者に、患者さんの困っている症状や行動について聞いたところ、最も困っている症状は「物を投げる、たたく、壊したりと暴力的になる」で、85% の方が「日常生活がこれ以上続けられないレベル」、あるいは「日常生活の中で我慢の限界のレベル」であると回答しました。このほか、「徘徊するようになる」は 82% 、「突然叫ぶ」は78%の方が該当すると回答しました。
アルツハイマー型認知症では、もの忘れに代表される認知機能障害に加え、「BPSD(Behavioral and psychological symptoms of dementia)」と呼ばれる行動・心理症状が表れることがあり、適切なケアや治療によって改善できるケースもあります。
上図:アルツハイマー型認知症に伴う過活動、攻撃的発言・攻撃的行動の種類
●アルツハイマー型認知症に伴う過活動、攻撃的発言・行動とは
・過活動:文章や質問の繰り返し、全般的な落ち着きのなさ、拒絶症
・攻撃的発言、攻撃的行動:悪態をつく、あるいは言語的攻撃、叫ぶ、たたく(自分をたたく場合も含む)
一方、 適切なケアや治療によって BPSD が改善する可能性があると思うか聞いたところ、改善する可能性があると回答した人は 1 割未満という結果で、9 割以上の方が、改善する可能性はないと思っていることがわかりました。困った症状が出現していたとしても、「認知症と同様に悪化するしかない」(64%)、「年齢のせい」(55%)と捉えている人も多い状況が伺えました。
患者さんの行動への対応に困り、介護負担がつらいと感じる前に、まずは病気の症状としてかかりつけ医や、必要に応じて専門医療機関にご相談いただくことで何らかの対処法が見つかるかもしれません。
上図:「ご自身が介護を行っている方の以下の症状・行動について、困っている度合い」
●ものを投げたり、たたく、壊したりと暴力的になる(なった)(n=27)
日常生活がこれ以上続けられないレベル 41%
日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル 44%
日常生活に影響はあるがコントロールできるレベル 15%
日常生活にさほど影響はないレベル 0%
●徘徊をするようになる(なった)(n=49)
日常生活がこれ以上続けられないレベル 41%
日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル 41%
日常生活に影響はあるがコントロールできるレベル 12%
日常生活にさほど影響はないレベル 6%
●突然叫ぶようになる(なった)(n=27)
日常生活がこれ以上続けられないレベル 41%
日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル 37%
日常生活に影響はあるがコントロールできるレベル 15%
日常生活にさほど影響はないレベル 7%
●妄想で、物を盗られたり被害にあったりしたというようになる(なった)(n=72)
日常生活がこれ以上続けられないレベル 28%
日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル 46%
日常生活に影響はあるがコントロールできるレベル 19%
日常生活にさほど影響はないレベル 7%
●介護されることに抵抗する(抵抗するようになった)(n=46)
日常生活がこれ以上続けられないレベル 24%
日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル 33%
日常生活に影響はあるがコントロールできるレベル 35%
日常生活にさほど影響はないレベル 9%
●悪態・暴言が増える(増えた)(n=61)
日常生活がこれ以上続けられないレベル 23%
日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル 41%
日常生活に影響はあるがコントロールできるレベル 31%
日常生活にさほど影響はないレベル 5%
●幻覚を見たり聞いたりするようになる(なった)(n=59)
日常生活がこれ以上続けられないレベル 20%
日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル 39%
日常生活に影響はあるがコントロールできるレベル 27%
日常生活にさほど影響はないレベル 14%
●抑うつが激しくなる(なった)(n=49)
日常生活がこれ以上続けられないレベル 18%
日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル 45%
日常生活に影響はあるがコントロールできるレベル 33%
日常生活にさほど影響はないレベル 4%
●眠れなくなる(なった)(n=64)
日常生活がこれ以上続けられないレベル 16%
日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル 39%
日常生活に影響はあるがコントロールできるレベル 36%
日常生活にさほど影響はないレベル 9%
●失禁するようになる(なった)(n=95)
日常生活がこれ以上続けられないレベル 15%
日常生活の中でギリギリ我慢の限界レベル 52%
日常生活に影響はあるがコントロールできるレベル 27%
日常生活にさほど影響はないレベル 6%
調査概要
実施期間:2024年9月13日(金)~2024年9月24日(火)
実施方法:インターネット調査
調査対象:アルツハイマー型認知症と診断されている65歳以上の家族がいる40代以上の男女1,174人(小数点第一位を四捨五入しているため、構成比の合計が100%にならない場合があります)
アルツハイマー型認知症に伴う過活動、攻撃的発言・攻撃的行動(*1)は、認知症の方ご自身にとっても周囲との関係性の悪化や孤立を招き、認知症が悪化する原因となります。またご家族にとっても心身や社会的負担が増え、自宅介護が難しくなることがあります。
実は、これらの症状が表れる背景には、認知機能の低下に伴う物忘れをご本人が自覚することによって生じる不安や焦燥などを感じることが影響しているとされています。異変に気付いたら、まずは早めにかかりつけ医に相談することが進行を遅らせる鍵になります。
1. 些細なことで興奮して、家族に暴言を吐く
以前は穏やかに接していた家族に対して、ちょっとしたことで怒鳴る、暴言を吐く、物を投げつけるといった暴力的な行動が見られるようになった場合、まずは原因を探ります。怒りの背景には、本人の不安や混乱が隠れていることがあります。「どうして怒っているのか」を、本人の言葉や行動から推測するように努めましょう。家族は感情的になりやすい分、攻撃的な行動に対しても直接的に反応してしまいがちです。その場で解決しようとせず、認知症の方の気持ちに寄り添うことが大切です。また、デイサービスや訪問介護、主治医やケアマネージャーなど周りのサポートを受けることも有用です。
2.あぶないことを止めるように言うと怒り出す
例えば認知症の進行により自転車の運転が危険だと判断した家族が、「自転車はもう危ないから乗らないで」と言うと、「自分はまだ大丈夫だ」と怒り出し、時には1人で家を飛び出そうとします。こういったケースの場合、頭ごなしに禁止することは避けてください。「安全に自転車に乗れる方法がないか、一緒に考えよう」などと共感を示し、話し合うようにしましょう。
認知症の方にとって、自転車の運転を止めさせられることは、自分の自由や能力を否定され、楽しみを奪われるように感じる場合があります。本人のプライドを守りながら、危険を回避する道筋を一緒に探ることが重要です。やめるよう言うだけではなく、どうしたら本人のやりたいことができるかを考えてみてはいかがでしょう。
その他、年末年始の帰省や家族の集まりで久しぶりにご両親と会った際、「薬が正しく飲めなくなっている」「食事先でトイレに行った後、自分の席に戻れない」「熱心に取り組んでいた趣味をやらなくなった」といった異変に気がついた場合には、認知症の症状である可能性があります。まずは、主治医やケアマネージャーなど周囲に相談しましょう。
*1 参照:認知症 困りごとナビ
65歳以上で認知症の診断を受けており、かつ要介護認定で介護が3)必要と判断された場合、いつでも介護保険サービスを受けることができます。
利用できるサービスには、自宅で受けるものや、施設に通所・生活して受けるものなどがあります。利用したいサービスがあれば、ケアマネージャーに相談しましょう(*2)。
介護保険申請から認定までの流れ
①お住まいの市区町村の役所の窓口で要介護認定を申請します (地域包括支援センターでも申請できます)。
②市区町村の調査員が自宅や施設などを訪問して心身の状態を確認します。
③市区町村は主治医に意見書を依頼します。
④市区町村は介護認定審査会の判定結果に基づき要介護認定を行い、申請者に通知します(申請から通知までは原則30日以内)。
認定は要支援(1・2)、要介護(1~5)および非該当に分かれます。
⑤介護(介護予防)サービスを利用するには、「要支援」の場合は地域包括支援センターに相談して「介護予防サービス計画書」を作成してもらいます。「要介護」の場合は居宅介護支援事業者に相談し、介護サービス計画書(ケアプラン)の作成を依頼します。居宅介護事業者に所属する介護支援専門員(ケアマネジャー)は、本人や家族と相談しながら、希望や心身の状態にあったケアプランを作成します。
⑥介護サービスとの利用開始
*2 すまいるナビゲーター認知症ブックレットシリーズ
・情報提供:大塚製薬株式会社
写真(トップ):著作者:freepik
著者:MySCUE編集部
MySCUE (マイスキュー)は、家族や親しい方のシニアケアや介護をするケアラーに役立つ情報を提供しています。シニアケアをスマートに。誰もが笑顔で歳を重ね長生きを喜べる国となることを願っています。