高齢者にとって、外出や誰かと交流する機会をもてるデイサービス(通所介護)は、身体機能や認知機能の維持・向上が期待できるサービスです。
 
実はデイサービスのなかには、認知症のケアに特化した「認知症対応型通所介護」というサービスがあります。今回は、認知症対応型通所介護についてご紹介します。

1. 認知症対応型通所介護とは

認知症対応型通所介護とは、認知症の方の利用を専門とした、定員12人以下の小規模なデイサービスのことです。
 
一般のデイサービスと同様に、高齢者が自宅からの送迎により施設に通い、そこで日中を過ごしながら、食事や入浴、排せつの介助、血圧測定などの健康チェック、レクリエーション、機能訓練などのサービスが受けられます。
 
これらに加えて、認知症対応型通所介護では、認知症の専門的なケアも受けられるので、認知症の進行予防や症状緩和などが期待できます。
 
●施設の種類は3つ
認知症対応型通所介護は、単独型、併設型、共用型の3種類に分類されます。
 
単独型:民家などを専用の施設として利用します。 
併設型:医療機関や介護老人保健施設、特別養護老人ホームなどに併設されています。
共用型:グループホームのリビングや食堂などの共用部分を利用します。グループホーム入居者と一緒に過ごします。この場合、1日の定員は3人です。
 
●利用条件・対象者
利用条件は、以下の通りです。
 
・医師から認知症と診断されていること
・利用する方の住民票が事業所と同じ市区町村にあること
 
 
認知症対応型通所介護を利用するには、医師による認知症の診断が必要です。市区町村によっては、認知症の症状や行動、意思疎通の程度を判定する「認知症高齢者の日常生活自立度判定基準」によって、条件を設定していることもあります。
 
また、認知症対応型通所介護は「地域密着サービス」という区分に属するため、利用する方の住民票が事業所と同じ市区町村にあることも条件です。
 
ただし、市区町村によっては、ほかの地域の方でも利用できる場合もあるため、担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに確認してみましょう。

2. 一般のデイサービスとの違い

一般のデイサービスと認知症対応型通所介護の違いは「専門的な認知症ケアが受けられる」かどうかです。
 
一般のデイサービスでも、認知症の方を受け入れてはいますが、症状に合わせた対応が十分に受けられないことがあります。
 
以下では、認知症対応型通所介護の特徴を紹介します。
 
●認知症についての理解度が深いスタッフが対応している
認知症対応型通所介護は、認知症の方のみを対象とした施設であるため、そこで働くスタッフは、認知症ケアに関する知識と経験が豊富です。
 
認知症の症状や対応方法を十分に理解しているので、日常生活上の介助から心のケアまで、本人の症状に合わせた適切なケアを受けることができます。
 
なお、事業所の管理者には、厚生労働大臣が定める「認知症対応型サービス事業管理者研修」を修了することが義務付けられています。そのため、認知症の方やご家族に対する理解が深く、気持ちに寄り添った対応をしてもらうことができます。
 
●少人数制で、手厚いケアが受けられる
認知症対応型通所介護は、1日の利用定員が12人以下と少人数制のデイサービスです。利用者一人ひとりの様子やわずかな体調の変化を把握しやすいため、個別の状況に合わせたきめ細かいケアを受けられます。
 
●一人ひとりに合ったメニューで過ごせる
一般のデイサービスでは、1日のプログラムが決まっていたり、レクリエーションや機能訓練が集団で行われたりするため、認知症の方がなじめないことも少なくありません。
 
それに対して、認知症対応型通所介護は、1日のプログラムは特に決まっていないため、利用者は自分の好きな過ごし方ができます。
 
また、少人数で行うレクリエーションや機能訓練の内容も、認知症の改善に効果的なものを取り入れるなど、一般のデイサービスではみられないような工夫がされています。
 
例えば、指先やスコップなどの道具を使って植物を育てる「園芸療法」や、昔の写真や音楽、道具などに触れる「回想法」を取り入れたレクリエーションでは、脳の活性化や、情緒の安定などの効果が期待できます。これらの効果が、認知症の進行予防や症状の緩和につながる可能性があるのです。
一般のデイサービスとの違い

3. 認知症対応型通所介護の料金

認知症対応型通所介護の基本料金は、施設の種類(単独型・併設型・共用型)と利用時間、要介護度により異なります。以下は、1日あたりの基本料金です。(自己負担1割の場合) 

 

◾️4時間以上5時間未満で利用した場合


厚生労働省「介護報酬の算定構造」 


◾️5時間以上6時間未満で利用した場合



 厚生労働省「介護報酬の算定構造


 ◾️6時間以上7時間未満で利用した場合

厚生労働省「介護報酬の算定構造

そのほかに、食費(昼食代・おやつ代)やおむつ代、日常生活費(レクリエーション材料費、理美容代など)が実費で必要になります。


また、以下のような特別なサービスを受けた場合は、加算料金もかかります

 

◾️加算料金の例

・入浴介助加算:40円/日(入浴介助のサービスを受けたときに加算)

・個別機能訓練加算(Ⅰ):27円/日(理学療法士などにより個別に機能訓練を受けた場合に加算)

4. さいごに

認知症対応型通所介護は、認知症の方だけを対象とした少人数制のデイサービスです。一人ひとりの症状に応じた適切なケアが行われるため、認知症の方がなじみやすく、安心して通い続けることができるでしょう。
 
なお、認知症対応型通所介護を利用するには、医師による認知症の診断を受けていることと、事業所のある地域に住民票があることなどの条件があります。
 
認知症のある方のデイサービス選びの選択肢のひとつとして、認知症対応型通所介護を検討してみてはいかがでしょうか。
この記事の提供元
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著者:中谷 ミホ

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級

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