1. 相談内容
「先日、70代の母親が自宅で転倒して入院しました。幸い大事にならずに退院しましたが、親の介護に不安を感じるようになりました。今後の介護に備えて、今のうちにしておくことはありますか?」
超高齢化社会を迎え、介護は他人事ではなくなっています。厚生労働省の資料によると、後期高齢者(75歳以上)のうち要介護認定を受けている人は31.5%と、約3人に1人は介護が必要な状況にあります。
介護は、病気やけがなどをきっかけに突然始まります。親の介護に備えて、今からできることを考えてみましょう。
2. 親の介護に対する希望を確認する
親が元気なうちに、「どのような介護を受けたいか」「最期はどこで迎えたいか」などを確認しておきましょう。
親が元気なときに「介護」や「最期」の話をするのは気が引けるかもしれませんが、こういった話は、元気なときだからこそ、明るく前向きに話せるものです。また、実際に介護が始まったときには、親の意思を確認することが難しい状態になっていることもあります。
介護が始まってから判断に迷ったり、困ったりすることがないよう、日ごろから、介護に対する希望を聞いておくことが大切です。
3. 親の経済状況を把握する
親の介護費用について、子どもが負担すべきと考えている方もいらっしゃるかもしれませんが、まずは「親の介護は親のお金で」ということが原則です。親のお金でまかなうことを前提に、介護にいくらかけられるかを確認しておきましょう。
親のお金で介護をするからには、親の経済状況を把握する必要があります。
年金などの収入や預貯金の額、加入している保険、不動産、ローン、日々の支出など、確認しておきたいことはいろいろありますが、お金のことは聞きにくいうえ、親自身が把握していない場合もあります。そんなときは、「エンディングノート」を活用するのも一案です。
エンディングノートとは、万が一に備えて、自分の思いや大切な情報を書き残しておくノートのことです。書き方は自由ですが、一般的に、保有財産の情報、医療・介護・葬儀に対する希望、親族や知人の連絡先などを記載します。
エンディングノートの作成をきっかけに、親に資産の棚卸しをしてもらい、その情報を共有するようにしましょう。これが、介護費用の負担について親と話し合うきっかけになればベストです。
4. きょうだい間で情報を共有し、役割分担をする
きょうだいがいる場合は、みんなで連携をしながら親の介護をすることで、一人ひとりの負担を減らすことができます。親がどのような介護を希望しているか、親の経済状況などの情報は、きょうだい間で共有するようにしましょう。そのうえで、介護時にそれぞれがどのような役割を果たすのか、あらかじめ話し合っておくとよいでしょう。
介護というと、食事や入浴の介助など、身体的なサポートをイメージすることが多いですが、実際は、買い物や掃除・洗濯、金銭管理、福祉サービスの情報収集、専門職との連絡・調整など多岐にわたります。誰か1人に負担が集中して不満が募ることがないようにそれぞれができることを確認し、役割分担をするようにしましょう。
また、親のお金だけで介護費用をまかなえない場合は、きょうだい間で負担し合えるかを話し合っておくことも大切です。
5. 介護保険制度やサービスの下調べをする
実際に介護が始まると、一般的に「介護保険サービス」を利用することになります。
介護保険サービスとは、公的な介護保険制度に基づいて受けられる介護サービスです。利用には「要介護認定」が必要です。サービスを利用したときは、所得に応じて、かかった費用の1~3割を自己負担します。
サービスの具体的な内容や実際の費用負担などは、現実に介護が始まらないと把握が難しいかもしれません。それでも、おおよそどのような仕組みになっているかは抑えておきましょう。
また、紙おむつの支給、福祉タクシー料金の助成など、自治体が独自に行っているサービスもあります。自治体のホームページなどで確認できますので、利用できそうなサービスはないか調べておきましょう。
6. まずは情報収集から
介護に対する不安は、知識不足、情報不足によって抱えることが多くあります。介護の情報は受け身ではなかなか得られません。親が高齢になったら、介護を自分事と捉え、情報収集を心掛けましょう。
各地域に設置されている「地域包括支援センター」を活用するのもよいでしょう。高齢者の暮らしを支える「総合相談窓口」として、介護に関するさまざまな相談に応じてくれます。介護を必要としない人でも参加可能な介護予防事業も実施しており、介護状態になる前から積極的に活用することで、いざ介護が始まったときにスムーズに介護に入ることができます。
地域包括支援センターは住所地ごとに管轄が決まっていますので、親の住んでいる地域のセンターの場所と連絡先を確認しておくとよいですね。