1. 小規模多機能型居宅介護の特徴
小規模多機能型居宅介護は、1つの事業所と契約するだけで「通い」「宿泊」「訪問」の3つの介護サービスを利用者の状況に合わせ、自由に組み合わせて利用することのできる介護サービスです。
自宅での生活を基本としながら、必要に応じて事業所へ通い、時には宿泊をし、同じ事業所のスタッフによる自宅への訪問サービスを受けながら、住み慣れた地域での生活を続けられます。
1事業所あたりの登録定員が29人以下と少人数制のため、家庭的な雰囲気のなかで、利用者一人ひとりに寄り添ったサービスを受けられるのが特徴です。
●登録定員:29名以下
「通い」の利用定員:1日18人以下
「泊まり」の利用定員:1日9人以下
●利用できる条件
・要支援か要介護の認定を受けていること
・サービスを提供する事業所のある市区町村に住んでいること
「地域密着サービス」という区分に属するため、サービスを提供する事業所のある市区町村に住んでいることが条件です。
なお、要支援の人は、介護予防を目的とした「介護予防小規模多機能型居宅介護」の対象となります。
2. 小規模多機能型居宅介護を利用するメリット
小規模多機能型居宅介護を利用するメリットは以下の通りです。
・顔なじみのスタッフからケアを受けられる
・3つのサービスを柔軟に利用できる
・事業者との契約が1箇所で済む
それぞれ詳しく見ていきましょう。
・顔なじみのスタッフからケアを受けられる
通い・宿泊・訪問のどのサービスを利用しても、顔なじみのスタッフからケアを受けられることがメリットです。
サービスの違いによって担当するスタッフが変わらないので、安心してサービスを受けることができます。
とくに、環境やスタッフの変化にうまくなじめない認知症の方にとっては、利用しやすいサービスといえるでしょう。
・3つのサービスを柔軟に利用できる
利用者や家族のニーズに合わせて、「通い」「宿泊」「訪問」の3つのサービスを柔軟に組み合わせて利用できることもメリットです。
単独のデイサービスや訪問介護では、利用時間や回数が決められています。また、施設に短期間宿泊するショートステイのサービスは人気が高いサービスのため、利用するには事前予約が必須です。
しかし、小規模多機能型介護の訪問サービスでは「短時間の安否確認を1日数回」といった利用方法や、通いのサービスでは「入浴のみ」や「午前/午後のみ」といった使い方ができます。
家族の都合で急に宿泊したい場合にも、その日の定員に空きがあれば宿泊が可能です。利用するご本人にとっても「知らない場所に初めて泊まる」というわけではないので安心感があります。
さらに、通所サービスの利用後に、そのまま施設に宿泊したり、通所サービスの後、スタッフが自宅へ送迎し、家族が帰宅するまでの間に夕食の介助や排せつ介助を行ったりと、家族の都合に合わせて柔軟に対応してもらうことも可能です。
・事業者との契約が1箇所で済む
1人の利用者が、単独のデイサービスと訪問介護、ショートステイを利用する場合は、それぞれの事業者との契約が必要です。
一方で、小規模多機能型居宅介護を利用すると、1つの事業者と契約するだけで、通所・泊まり・訪問のサービスを受けられます。契約の手続きや事業所との連絡が1箇所で済むため、家族の負担軽減につながります。
3. 小規模多機能型居宅介護の利用料金
次に、小規模多機能型居宅介護の利用料金をみていきましょう
・利用料は定額制
小規模多機能型居宅介護の基本料金は、サービスの料金や回数に関係なく、1ヵ月の定額制です。利用者の要介護度と小規模多機能型居宅介護のサービスを提供する建物に併設された施設に居住しているかどうかにより、金額が異なります。
なお、介護保険で居宅サービスを利用する場合は、1ヵ月間に利用できるサービスの量(支給限度額)が要介護度別に定められていますが、小規模多機能型居宅介護は何度利用しても定額のため、支給限度額を超える心配がありません。
以下は、小規模多機能型居宅介護の基本料金(月額)です。※1割負担の場合
・同一建物に居住する以外の人
・同一建物に居住する人
小規模多機能型居宅介護では、上記の基本料金に加えて、施設で食事をする場合は食費、宿泊する場合は宿泊費、日常生活費(おむつ代、理美容代、私物の洗濯代など)が実費で必要です。
また、特別なケアが提供される場合には、追加料金としてサービス加算が請求されます。サービス加算の種類は、利用する事業所によって異なるため契約時に確認しましょう。
・小規模多機能型居宅介護でのサービス加算の例
サービス提供体制強化加算
認知症行動・心理症状緊急対応加算
生活機能向上連携加算
口腔・栄養スクリーニング加算 など
・利用料金の例(月額)
ケース1:要介護2の人が、通所サービスだけを月14回利用した場合(自己負担1割)
ケース2:要介護4の人が通所サービスを月20回・訪問サービスを月3回・宿泊サービスを月2回利用した場合(自己負担1割)
4. 小規模多機能型居宅介護を利用する際の注意点
小規模多機能型居宅介護を利用する際の注意点は以下の通りです。
・併用できるサービスに限りがある
・ケアマネジャーが変更になる
・使うサービスが少ないと割高になる
・定員数に達すると利用できないことがある
・併用できるサービスに限りがある
小規模多機能型居宅介護を利用している間は、併用できるサービスが限られます。
また、小規模多機能型居宅介護で受けられる3つのサービスの一部に不満があっても、それだけを別の事業者に変更することができないことにも注意が必要です。
併用可能なサービス:
訪問看護、訪問リハビリテーション、福祉用具貸与、居宅療養管理指導、住宅改修
併用不可のサービス:
居宅介護支援(ケアマネジャー)、訪問介護、訪問入浴介護、デイサービス、通所リハビリテーション、短期入所生活介護・療養介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護
・ケアマネジャーが変更になる
小規模多機能型居宅介護を利用する場合は、その事業所に所属するケアマネジャーが担当のケアマネジャーになります。そのため、今まで付き合いのあったケアマネジャーがいる場合でも、担当のケアマネジャーが変更になります。
これは、小規模多機能型居宅介護を利用する場合は、その事業所のケアマネジャーがケアプランの作成を行うためです。
・使うサービスが少ないと割高になる
小規模多機能型居宅介護の料金は、定額制のため利用料がかさむ心配はありません。しかし、要介護度が低い方や、家族で介護が可能な方など、サービスの利用頻度が少ない方は、割高に感じることがあります。
そのため、サービスの利用頻度が少ない方は、単独のサービスを組み合わせて利用した方が費用を抑えられる可能性があります。小規模多機能型居宅介護と単独サービスの料金を比較したうえで利用を検討すると良いでしょう。
・定員数に達すると利用できないことがある
通いのサービスと泊まりのサービスは、1日あたりの利用定員が決まっています。利用したい日に定員が埋まっている場合は、利用を断られる可能性もあるため注意が必要です。
5. まとめ
小規模多機能型居宅介護は、1つの事業所で「通い」「宿泊」「訪問」の3つのサービスを自由に組み合わせて利用できる介護サービスです。
サービスの違いによって担当するスタッフが変わらないため、顔なじみのスタッフにケアしてもらえる安心感があります。とくに環境やスタッフの変化にうまくなじめない認知症の方におすすめのサービスといえます。
月々の利用料は、サービスを利用する頻度にかかわらず、1ヵ月の定額制ですが、利用頻度が少ない方は割高に感じることもあります。そのため、単独でサービスを利用する場合の料金と比較して利用を検討すると良いでしょう。
小規模多機能型居宅介護についてご不明な点がある場合は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、お住まいの市区町村の介護保険担当窓口に相談してみましょう。