シニアと行きたい旅行プランをトラベルライターの間庭典子がご提案。今回は「北総の小江戸」と呼ばれる千葉県香取市の佐原へ。都心から約80分、江戸情緒のある水郷へは日帰りでも十分楽しめますが、歴史ある蔵や商家を生かした宿に泊まる体験がおすすめです。

1. たどり着くとそこは江戸! 水郷・佐原の商家町で宿泊

春がほころび始めたら、ぜひ訪れたいのが千葉県香取市の佐原。佐原は、「江戸にも劣らない、勝っている!」として住民が誇り、「江戸優り(まさり)」と今も呼ばれています。町の中心に流れる小野川が水郷の風情をなす景勝地であり、醤油や味噌、日本酒などの発酵食品を江戸時代から製造してきました。小野川沿いに連なる古い町並みはまるで時代劇のセットのよう! タイムトリップした気分になれるのです。

徒歩圏内に見どころが集まり、どのアングルからも絵になる風景なので、町歩きが楽しいのも魅力。都心から約80分というアクセスを考えると、日帰りでも満足できますが、商家町の中に滞在するという1泊旅が断然、おすすめ。夕暮れていく町の風景はなんともノスタルジックですし、水面がきらめく朝のウォーキングも清々しい。漆黒の闇に包まれた夜から、江戸時代当時の暮らしを想像できます。観光客がいなくなった星空の下や、明け方の町並みを独占できますよ。


水郷佐原。舟巡り

舟めぐりは30分で1300円の気軽なコースから、宿泊者限定の豪華なものまでバラエティ豊か


「佐原商家町ホテルNIPPONIA(ニッポニア)」は、関東で初めて重要伝統的建造物群保存地区に選定された佐原の町全体が宿、という分散型ホテルです。フロント棟にチェックインしたら、町に点在する各客室へ。約600年の歴史がある町並みに残る商家や元料亭、重厚な蔵などの建物を保存し、カフェやレストランなどホテルの施設へ改修、町に溶け込ませています。チェックインして、食事のために移動することで、町を巡り、地元の人々と交流する機会が増え、暮らすような滞在ができます。

各施設は建築当時の在り方をできる限り忠実に修復しており、歴史の本質に触れるかのような体験が。小舟に揺られてお嫁入り、酒蔵の雰囲気をそのまま残した空間でのウェディングパーティ、なんて夢も、この商家町では実現できます。

2. 町並みになじみ、それぞれの建築の個性を生かしたモダンな客室

私が滞在したのは明治期に製綿業を営んでいた商家の蔵を保存・改修したYATA棟。フロントのあるKAGURA棟から徒歩2分と近いので便利。もともとは商家の母屋や蔵などであった3室がありますが、102は土蔵を改修した部屋でした。約90年前の建てられた当時から使われていたという重い扉を開くと、中にはモダンなメゾネットタイプの空間が。綿を作っていた1階はリビングと浴室、階段を上ると寝室があります。インテリアにはコットン素材を使っているなど、当時の趣も感じます。


NIPPONIA室内

製綿工場であり蔵であったYATA棟の102のリビング。浴槽はひのき風呂

旧伊能家の穀蔵、日用品雑貨荒物卸業を営み築120年の間取りが残された商家など、川沿いにあり、2階から水郷を見渡せる棟も。客室はそれぞれ違う歴史を刻み、そこからインスピレーションを感じた設計なので、まるで違う空間に仕上がっているのも魅力。フルフラットで幅広い方にとって過ごしやすい空間、子供たちが大喜びの周回できる空間、そしてドッグランになる広い庭付きの愛犬と滞在できる部屋など、楽しみ方に合わせて選べます。毎回、まったく違う体験ができるので、リピーターが増えているのだそう。

6棟14室は広々とした空間で、4人以上で泊まれる部屋も複数あるので、家族旅にはピッタリですね。あえて全く違うタイプの部屋を選び、訪ね合うのも楽しそう。さまざまなニーズにこたえてくれるので、予約時に相談してみるのもいいかもしれません。

3. 夜は佐原が誇る醸造発酵文化が決め手の「発酵フレンチ」に舌鼓!

佐原は利根川水運の中継地であり、日本酒、醤油、麴味噌などの醸造業が盛んでした。中でも馬場本店酒造の「最上白味醂」は江戸後期からの製法、味を守り続け、調味料ではなく、飲み物として親しまれているほどの上質さ。「佐原商家町ホテル NIPPONIA」のレストランやバーのある棟、KAGURAも、創業300年以上という「馬場本店酒造」が明治時代より白味醂をしぼっていた味醂蔵だったそう。ここでもカクテルなど、味醂の可能性をひきだしたメニューがたくさん。レストラン「LE UN(ルアン)」では、千葉の 旬の食材や名産物を美味しく仕上げた、醸造発酵文化に想いを馳せながら味わう発酵フレンチが人気です。


LE UN

コースは季節ごと、3か月ごとにリニューアル。いずれも発酵がテーマの創作フレンチ

例えば3~5月のコースでは、銚子の漁港より届いた鮮魚の炙りに豆腐と白味噌のクレームを添えた前菜、黒毛和牛 蔵元酒粕のジャガイモのピューレのメインなど、発酵食材が味に奥行きをもたらす創作フレンチが続きます。夏に訪れたとき感動したのが、佐原でつくられたモッツァレラチーズと桃のアミューズと千葉県産新馬鈴薯と麹の冷製スープ。桃やスープのスイカなど、フルーツの爽やかな酸味とほのかな甘みのバランスが絶妙でした。デザートも酒粕や発酵パイナップルをアクセントにしていて、発酵食品ってこんなに多彩なのかと感動。味わいながら、お勉強ができた気分です。

軽やかなフレンチで、シニア世代にとってありがたいのは、平日限定でハーフディナーコースも設定されていること。メインの魚料理か肉料理かを選べるので、食べきれるか心配な方にはおすすめです。

朝ごはんは、新鮮な地元食材を使った栄養たっぷりの和朝食。地元酒蔵「東薫酒造」の酒粕から作ったオリジナル甘酒で体を整え、1日が爽やかに始まります。

4. コースは季節ごと、3か月ごとにリニューアル。いずれも発酵がテーマの創作フレンチ

佐原には日本地図を作製した伊能忠敬も住んでいました。驚いたのは、伊能忠敬が遅咲きの学者だったということ。伊能家に婿入りした忠敬は米問屋や酒造りの商家として大成していたのですが、隠居する49歳にして一念発起。50歳にして31歳の若き学者に弟子入りします。そんな足どりをわかりやすいアニメーションで教えてくれるのが伊能忠敬記念館。その生きざまに心を打たれました。当時の測量の仕方などにクイズ形式で答えるワークシートなどもあり、自由研究にはぴったりな題材。孫とともに学ぶのもシニアにとってはうれしい体験になるかもしれません。すぐ近くには忠敬が30年余り過ごした住居や店舗も保存され、見学ができます。

小野川沿いの古い町並みには風情のあるカフェやショップがありますが、VMGのカフェ(★)もひとやすみスポットには最適。人気メニュー、自家製サツマイモモンブラン1,200円(ドリンクセット1,800円)はぜひ試して。中でも地元香取産の「紅はるか」(季節に応じて変わる場合もあります)をその場で絞ってくれるのです。これは迫力!


佐原の街並み

酒蔵や老舗の茶舗など今も営業している建造物が並ぶ風情ある町並み


宿泊ゲストには「VMGパスポート」なる町歩きの案内マップが配られ、耳かき専門店や老舗茶舗など、佐原らしい老舗や食事処の情報を掲載。さらには各お店からのおもてなしとして、さまざまな特典やギフトが。佐原散策がますます楽しくなりそうですね。


★VMGカフェ…バリューマネジメントグループ会社が運営する、歴史的な価値のある文化財や登録有形文化財を再生 したレストランやカフェ。佐原のほか、東京都千代田区の九段会館テラスや函館の赤レンガ倉庫にも店舗がある

5. 香取神宮参拝や船めぐりも、スペシャル感あるアクティビティを

佐原の中心地から2㎞ほど東には重要文化財であり、日本三大神宮の香取神宮が鎮座しています。ここへの参拝も佐原を訪れたら、はずせない名所のひとつ。「佐原商家町ホテル NIPPONIA」では宿泊ゲストのためのアクティビティとして、香取神宮の権禰宜(ごんねぎ)さんにご案内いただくツアーを企画。拝殿での正式参拝、三本杉や本殿、楼門などの歴史的背景やトリビアを知るなど、より奥深い参拝体験に。


香取神宮の権禰宜

宿泊者現地のアクティビティでお一人8,000円で参加できる。権禰宜さんに案内いただく香取神宮参拝ツアー


そして佐原のアイコンでもある舟めぐりも、宿泊者だけのスペシャルなプランを提案。夕暮れ時の風景の中で揺られながら乾杯する「黄昏舟」のプランでは、日本酒やスパークリングワインにおつまみも、お子様用にはお菓子とジュースが付くのもうれしい。舟めぐりは朝ごはんを水上でいただくユニークなプランも。

アクティビティには、発酵ドレッシングや酒粕入浴剤づくりなど、佐原ならではの体験も。小野川は鰻漁が盛んで、今もなお老舗の鰻店が並ぶのですが、明治創業の「戸村川魚店」で実施しているうなぎのつかみ取り体験も盛り上がりそう。
ちょっと足をのばすと、水郷佐原あやめパークや津宮鳥居河岸(つのみやとりいがし)などのフォトジェニックなスポットも。春の撮影旅行にはぴったりなエリアなのです。



この著者のこれまでの記事
年末年始に世代を超えてシェアしたい人生最高のごはん会|シニアと行きたい親子旅
実は親しみやすい!シニアと満喫するドバイ旅
発酵が育てた長寿の味。秋の軽井沢で楽しむ親子の美食旅|シニアと行きたい親子旅
・親子で非日常を味わう秋の「ヌン活」旅気分|シニアと行きたい親子旅

この記事の提供元
Author Image

著者:間庭典子(まにわのりこ)

中央線沿線の築30年以上の一軒家に後期高齢者の両親と同居する50代独身フリーランス女子。婦人画報社(現ハースト婦人画報社)「mc Sister」編集者として勤務後、渡米。フリーライターとして独立し、女性誌など各メディアにNY情報を発信し、「ホントに美味しいNY10ドルグルメ」(講談社)などを発行。2006年に帰国し、現在は日本を拠点に、旅、グルメ、インテリア、ウェルネスなど幅広いテーマの記事を各メディアへ発信。旅芸人並みのフットワークを売りとし、出張ついでに「研修旅行」と称したリサーチ取材や、さびれた沿線のローカル列車で進む各駅停車の旅を楽しむ。全国各地の肴を味わえる地元の居酒屋やスナックなどの名店を探すソロ活動も大好き。

この著者のこれまでの記事

年末年始に世代を超えてシェアしたい人生最高のごはん会|シニアと行きたい親子旅

2025年12月26日

実は親しみやすい!シニアと満喫するドバイ旅

2025年12月6日

発酵が育てた長寿の味。秋の軽井沢で楽しむ親子の美食旅|シニアと行きたい親子旅

2025年11月17日

関連記事

高カロリーおやつが救世主になる理由|管理栄養士が教える高齢者のための裏ワザ栄養学①

2026年2月27日

<シニアと行きたい親子旅>お湯は東北!湯治気分のみちのく温泉旅 ⑥

2023年12月21日

Cancel Pop

会員登録はお済みですか?

新規登録(無料) をする