手すりには、転倒・転落を防止し、歩行や立ち座りなどの動作を補助する役割があります。

しかし、種類が豊富なため、どのような手すりを選べばよいか迷っている方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、手すりの種類と選び方のポイントをご紹介します

1. 手すりの種類

まずは、代表的な手すりの種類をくわしく見ていきましょう。

■横手すり
水平型とも呼ばれる横手すりは、床面と平行に設置される最も一般的な手すりです。主に移動の補助を目的としており、手を滑らせるように使います。廊下やトイレなど、さまざまな場所に取り付けられています。

横手すり

■縦手すり
I型手すりとも呼ばれる縦手すりは、床面と垂直に設置されるタイプの手すりです。

腕の力を利用して引っ張ることで、立ち上がりや段差の昇り降りを助けたり、しっかり握ることで体を支え、転倒を防ぐ役割を果たします。

タテ手すり
写真上:写真AC

■L字手すり
横手すりと縦手すりを組み合わせた形状で、両方のメリットを兼ね備えています。

移動の補助や立ち座り、身体の支えなど、幅広い用途に対応できる汎用性の高さが特徴です。

L型手すり



■斜め手すり
階段や玄関の段差など、高低差のある場所での移動を補助するために設置されます。

特に足腰に不安のあるシニアにとって、転倒や転落を防ぐ上で重要な役割を果たします。


斜め手すり

■据え置き型手すり
床に置いて使用するタイプの手すりで、土台部分をベッドやソファーの下に差し込んで使います。

移動が可能なため、壁から離れた場所や壁材の関係で直接取り付けが難しい場所でも活用することができますが、重量があるため、持ち運ぶ際には注意が必要です。

据え置き型手すり

■突っ張り型手すり
床と天井の間を突っ張って固定するタイプの手すり。壁に設置できない場所や、工事を避けたい場合での使用に適しています。

立ち座りの補助が主な用途ですが、二本の突っ張り型手すりの間に横手すりを接続することで、移動の補助としても活用できます。

設置する際には、手すりが斜めにならないように固定してぐらつきがないか確認することが重要です。また、安全のため、設置は専門業者に依頼することが推奨されます。

突っ張り型手すり

■その他
その他、日常生活のさまざまな場面で活用できる専用の手すりもあります。

・ベッド用L字手すり:介護ベッドに直接取り付け、寝起きや立ち座りを補助する
・浴槽用手すり:浴槽のふちに固定し、出入りを補助する

浴槽用手すり

・肘掛け型手すり:トイレの便器両側に設置し、立ち座りを補助する

これらの専用手すりは、工事が不要で簡単に取り付けられます。

2. 手すりを選ぶ際のポイント

次に、手すりを選ぶ際のポイントを解説します。

■ポイント①:使う場所に応じて手すりの種類を決める

手すりは、設置する場所によってその用途が異なります。どの場所でどのような手すりが適しているか、以下を参考にしてください。

手すりを選ぶポイントの表

・廊下
主に移動のための手すりとして使用する場合は、壁に横手すりを設置することをおすすめします。

壁への設置工事が難しいときは、据え置き型で代用するか、突っ張り型手すりを複数設置して横手すりで接続する方法もあります。

・玄関
玄関には20cm程度の段差(上がりかまち)があるため、転倒・転落を防止するには縦手すりやL字手すりを壁に設置するとよいでしょう。

また、工事不要で上がりかまちに直接取り付けられる手すりもあります。

・階段
階段の傾斜に合わせて斜め手すりを設置します。

階段を登り切った場所で手すりが途切れると転倒のリスクが高まるため、歩行に不安がある方は斜め手すりを横手すりにつなげるとよいでしょう。

・トイレ
主に立ち座りと立った姿勢を保つために、L字手すりが多く使われます。

取り付けが困難な場合は、便器の両側に設置できる肘掛け型手すりや、トイレ用の据え置き型手すりを検討するとよいでしょう。

・ベッド
寝起きや立ち座りのために、介護ベッドに直接設置できるL字型の手すりが便利です。

L字型手すりが取り付けられない場合は、据え置き型手すりや突っ張り型手すりをベッドの近くに設置するとよいでしょう。

・浴室
浴室の入り口には縦手すりを設置すると、安全に出入りしやすくなります。

浴室内の移動には横手すりを、浴槽の出入りには浴槽のふちに取り付けるタイプの手すりを設置すると、事故のリスクを軽減できます。また、浴槽からの立ち上がりにはL字手すりを使用すると、よりスムーズに動けます。


■ポイント②:手すりの高さ・長さ・位置などを決める

使用する方の身長に合った高さや長さ、位置に調整することが重要です。適切に設置しないと、使いづらいだけでなく、転倒や転落の危険性が高まりますので注意しましょう。以下を参考にしてください。

手すりの高さ、長さ、位置を決める基準の表

・横手すり
床から75~85cmの高さが一般的な基準になります。

使用者の身長に合わせる場合は、「身長の約半分」「太もも付け根の外側にある骨の出っ張りの高さ」「腕を垂直に下ろしたときの手首の高さ」のいずれかを基準に決めるとよいでしょう。

・縦手すり
手すりの上端を肩よりもやや高い位置に設定し、そこから50~60cm以上の長さで下に向かって設置します。こうすることで、肩の高さでしっかり握れ、力を入れやすくなります。

・L字手すり
トイレでの立ち座りを想定する場合、縦手すり部分は便器先端から20~30cm離れた位置を目安にします。

横手すり部分は、座面から23~30cm程度の高さに設定しましょう。
小柄な方や腰・背中が曲がっている方は、横手すり部分を低めにすることで、より立ちやすくなります。

・斜め手すり
階段用の斜め手すりでは、段鼻(一段一段の先端部分)から手すり上端までが75~85cmの高さになるように設定します。


使用者の身長に合わせる場合は、横手すりと同じ方法で調整しましょう。高すぎると後ろへバランスを崩し、転落するリスクがあるため注意が必要です。

3. まとめ

手すりには多くの種類があり、それぞれの特徴に応じて適した使用場所があります。

また、動きやすさと安全性を高めるためには、使う方の身長に合わせて高さ・長さ・位置を調整することが重要です。

必要に応じて専門家に相談しながら、安全で快適な住環境を整えてみてはいかがでしょうか?


 監修:中谷ミホ


写真(トップ):写真AC

この記事の提供元
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著者:鈴木康峻

2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。

得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど

保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級

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