母と娘の関係性とその介護について考える連載。今回は「母親側の意見も聞いてみよう!」ということで、母親世代(70代)のKさんの自らの介護に対する考えや、その友人たちに行った自身の介護に対するアンケート結果などをお伝えする。
その関係の距離感が近い故に、悩ましかったり、愛おしかったり……。「娘の母親に対する思いや介護経験」をお伝えしているこの連載。今回は「母親たちは娘に介護してもらうことをどのように考えているのだろう?」という疑問を、娘をもつ母親にぶつけてみました。
インタビューに応じてくださったのは、私の母親世代の知人のKさん(70代)。Kさんは、「絶対に娘に介護して欲しくない!」と言い続けています。この連載を始めるきっかけの1つでもある、私の母親の友人たちは「介護が必要になったら、やはり何でも言いやすい娘がいい!」という意見が多かったため(「娘はつらいよ!?①」を参照)、Kさんの発言に「本当に?」とすごく驚いたことを覚えています。私の話を聞いたKさんも「みんな娘に介護して欲しいの?」と、私とは反対の立場で驚いたといいます。
そこで、母親世代にもいろいろな考え方がある、ということを検証すべく、「娘の介護はイヤ派」のKさんの思いを伺うとともに、同世代の友人たちはどう考えているのか気になっていたというKさんが友人たちに実施してくれたアンケート結果もお伝えします。
まずは「娘の介護はイヤ派」のKさんは、40代の息子と娘がおり、それぞれが結婚をして、独立しています。現在、Kさんは要介護3の夫の在宅介護を介護サービスも活用しながら担い、趣味のテニスを楽しんだり、パートの仕事も続けています。
要介護度が上がっていく夫の介護が大変なときもありますが、夫の介護に関しても、娘はもちろん、息子にもできる限り手を煩わせないようにしたいという考えがあるそうです。そのため、夫の在宅介護に限界を迎えたら、もし、子どもたちが手伝うと言っても、夫には施設へ入所してもらいたいと考えているそうです。
Kさんが「娘の介護はイヤ派」になった背景には、義父の介護と自身の母親の最期から考えさせられた経験があったからだといいます。
Kさんは、ほぼ最期まで在宅で義父の介護をし、大変だったという経験があります。娘の性格的には誰かの介護をすることはできないだろうし、自分が大変だと思ったことを娘にはやらせたくはないのです。さらに、義父や要介護になった夫をサポートしてくれている介護のプロたちの素晴らしさを知っているので、介護の素人の娘よりも、自分は他人である介護のプロたちにお願いしたいと思うようになったそうです。
また、Kさんの息子の嫁は介護福祉士として、長く介護の仕事をしています。介護のプロとして活躍している嫁が、自ら納得して自分の介護をしてくれるのならば、嫁にお願いするかもしれないが、それは嫁が介護のプロであるというベースがあるから。もし、嫁が介護の仕事をしていなかったり、自らが望まないのであれば、やはり介護はプロの他人にお願いしたいと考えています。
自身の母親の最期の日々のことも、Kさんが「娘の介護はイヤ派」となる1つの要因になっています。母親のことが大好きだったKさんは「もし、母親が娘(Kさん)に介護をして欲しいと望むのならば、介護をしていたと思う」という一方で、今、Kさんが娘に対して思っていることと同様に「娘(Kさん)には介護は無理だろう」と母親は思っていただろうと振り返ります。「介護して欲しい」と思っていたとしても、娘のことを思って母親は絶対にそう言わなかったはずだと想像しているのです。
Kさんの母親は入院からたった1ヶ月で亡くなってしまったのですが、死が近づき苦しむ母親の身体をさすり続ける娘に、「もう、寝ていいから」と自分のことよりも娘の身体を心配していました。その場面をたびたび思い出すというKさんは、「自分が同じ立場になっても、娘に同じ言葉を掛けるだろう」と、母親から引き継いだ娘に対する思いを語りました。
そして、最後に「今は40歳を超えて、彼らには子どもがいるけれど、いくつになっても息子や娘は自分にとっては子どものまま。ケアしてもらうよりもケアしてあげたい対象なんだよね」と、「そもそも、“介護ができる”“できない”ではなく、自分のために子どもの時間が犠牲になることはイヤだな」と続けました。
Kさんの子どもに対する親としての強い思いを聞いてもなお、「でも、やっぱりKさんみたいな人ばかりではないですよ」と、狭い視野から抜け出せずブツブツ言っている私に「そこは私も気になるし、私と同世代の友人たちにアンケートを取ってみるよ!」と、Kさんが友人たちの意見を聞くという流れになりました。
Kさんは7人の友人(母親世代の方たち。Kさんを含めて8人、1人は娘はおらず息子のみ、1人はすべて未回答を希望)に自らの介護について、メールや直接の声掛けでアンケートを行ってくださいました。母数は少ないですが、あくまで参考までに…。
「自分が介護される状態になったら……」という想定で、以下の4つのアンケート項目について答えていただきました。
Q1:誰に介護をしてもらいたいか?
A:「他人である介護のプロ」6人
「娘」1人
Q2:なぜその人なのか(理由も)?
A:「子どもに迷惑を掛けたくない」3人、
「子どもには子どもの仕事があるから」1人
「プロに対価を支払うという正当なギブ&テイクが成立するから」1人
「子どもにシモの世話をさせたくない」1人
「深く考えていないが娘なら…」1人
Q3:娘と嫁ならば、どちらに介護してもらいたい? あるいは身内は絶対にイヤ?
A:「娘」2人
「嫁」1人
「嫁と娘」1人
「身内は絶対にイヤ」3人
Q4:娘は親の介護に対してどう思っていると考えるか?
A:「介護が必要な状況になったら自ら進んでやるかも」1人
「“介護=親への愛情”ではないと思っている」1人
「プロと一緒にできる範囲でやる」2人
「仕事があり、遠方に住んでいるため無理」1人
「聞いたことがないのでなんとも言えない」1人
「息子のため未回答」1人
よく知っていると思っていた友人の中にも「娘」を挙げている人がいたことに、Kさんはとても驚いていました。しかし、逆に私は「娘を挙げた人が意外に少ない」と、介護保険が始まって25年以上が経過するなど社会の環境などが変わり、「母親世代の“介護に対する考え方”が少し変わってきている?」という感じを受けました。この結果にみなさんはどんな感想を持ちましたか?
最後にいろいろとご協力してくださった、Kさんとそのご友人たちに心よりお礼申し上げます。
この著者のこれまでの記事
・母は心の支え、それでも揺れる娘の決断|娘はつらいよ!?㉓
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著者:岡崎 杏里
大学卒業後、編集プロダクション、出版社に勤務。23歳のときに若年性認知症になった父親の介護と、その3年後に卵巣がんになった母親の看病をひとり娘として背負うことに。宣伝会議主催の「編集・ライター講座」の卒業制作(父親の介護に関わる人々へのインタビューなど)が優秀賞を受賞。『笑う介護。』の出版を機に、2007年より介護ライター&介護エッセイストとして、介護に関する記事やエッセイの執筆などを行っている。著書に『みんなの認知症』(ともに、成美堂出版)、『わんこも介護』(朝日新聞出版)などがある。2013年に長男を出産し、ダブルケアラー(介護と育児など複数のケアをする人)となった。訪問介護員2級養成研修課程修了(ホームヘルパー2級)
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