介護休業給付金は、家族の介護のために仕事を休んだ際に、雇用保険から支給される給付金です。休業中の収入減を補い、介護と仕事の両立を支援することを目的としています。今回は、介護休業制度の基本から給付金の支給要件、具体的な支給額の計算例まで解説します。
介護休業制度は、育児・介護休業法に基づき、家族の介護が必要になった労働者が仕事を休むことができる制度です。介護そのものだけでなく、介護サービスの手続きや施設入所の準備など、仕事と介護を両立するための体制づくりにも活用できます。
◾️対象となる家族の範囲
介護休業の対象となる家族は、配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫です。親だけでなく幅広い家族が対象となっており、たとえば義理の父母の介護でも取得できます。
◾️取得できる期間と回数
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで、3回を上限に分割して取得できます。たとえば、在宅介護の態勢を整えるために1回目を30日間、施設入所の準備で2回目を20日間というように、状況に合わせて柔軟に使えます。
なお、93日には土日祝日も含まれるため、実際に休める「平日」はそれより少なくなる点に注意しましょう。
◾️取得できる労働者
正社員だけでなく、パートや契約社員なども対象です。ただし、有期雇用の場合は、介護休業開始予定日から93日経過後、6ヶ月以内に契約が満了しないことが条件となります。また、労使協定により、入社1年未満の方や週の所定労働日数が2日以下の方は対象外となる場合があります。
なお、ここでいう「要介護状態」とは、介護保険の要介護認定とは異なり、負傷・疾病・障害などにより2週間以上にわたり常時介護が必要な状態を指します。要介護認定を受けていなくても介護休業の対象となる場合があるので、「認定がないから使えない」と諦めず、まずは勤務先に相談してみましょう。
介護休業中の収入を支えるのが「介護休業給付金」です。ここでは、その支給要件や仕組みを確認します。
◾️支給要件
介護休業給付金を受け取るには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
・雇用保険の被保険者であること
・介護休業開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算12ヶ月以上あること
・休業期間中の就業日数が1支給単位期間(1ヶ月)あたり10日以下であること
・介護休業終了後に職場復帰を予定していること
退職を前提とした休業の場合は支給対象外となるため、注意してください。また、介護休業は取得できても、雇用保険の加入期間が足りないなどの理由で給付金は受けられないケースもあります。制度を利用する前に、勤務先の人事担当者やハローワークに確認しておくと安心です。
◾️支給額の計算方法
支給額は、以下の計算式で算出されます。
介護休業給付金 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
「休業開始時賃金日額」とは、休業開始前6ヶ月間の賃金総額(賞与を除く、保険料控除前の額)を180で割った金額です。支給日数は1ヶ月あたり原則30日(最終月は休業終了日までの日数)となります。
なお、休業中に勤務先から賃金が支払われる場合、賃金月額の80%以上が支払われていると給付金は支給されません。13%超から80%未満の場合は、80%との差額が支給されます。
◾️支給の上限額
給付金には上限額が設けられており、2025年度(2025年8月以降)の上限額は月額356,574円です。この上限額は毎年8月に改定されます。
実際にどのくらい支給されるのか、月収30万円のケースで計算してみましょう。
・月収30万円の場合
・休業開始時賃金日額:30万円 × 6ヶ月 ÷ 180日 = 10,000円
・1ヶ月あたりの支給額:10,000円 × 30日 × 67% = 約201,000円
つまり、月収30万円の方が1ヶ月間介護休業を取得すると、約20万円が支給されます。
月収ごとのおおよその支給額の目安は以下の通りです。
・月収15万円程度の場合 → 月額約10万円
・月収20万円程度の場合 → 月額約13.4万円
なお、介護休業給付金は非課税のため、所得税や住民税はかかりません。ただし、厚生年金や健康保険などの社会保険料は休業中も発生します。育児休業の場合は社会保険料が免除されますが、介護休業にはこの免除制度がない点は押さえておきましょう。
申請手続きの流れとポイントを見ていきましょう。
◾️申請の流れ
介護休業給付金は、原則として勤務先(事業主)を経由してハローワークに申請します。本人が希望すれば、自分で直接申請することも可能です。
申請のタイミングは介護休業終了後で、期限は介護休業終了日の翌日から2ヶ月後の月末までです。休業中には受給できないため、スケジュールに余裕をもって準備しましょう。
◾️必要書類
・介護休業給付金支給申請書(マイナンバーの記載が必要)
・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
・介護休業申出書
・住民票記載事項証明書等(対象家族との続柄が確認できるもの)
・出勤簿やタイムカード(休業日数が確認できるもの)
・賃金台帳(休業中の賃金支払い状況が確認できるもの)
書類の準備は勤務先の人事・総務担当者と連携して進めると確実です。
◾️注意したいポイント
・給付金は休業中ではなく、休業終了後の申請・支給となります
・介護休暇(年5日まで取得できる短期の休暇制度)は給付金の対象外です
・同じ対象家族について93日分を使い切ると、再度の支給は受けられません
・申請期限を過ぎると給付金を受け取れなくなるため、期限の管理には十分注意しましょう
著者:中谷 ミホ
福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級