8月は厚生労働省が定める「食品衛生月間」です。気温や湿度が高くなる夏場は、細菌性の食中毒が増える季節。免疫力が低下しやすいシニアは重症化のリスクも高まります。今回は食中毒予防の3原則と、在宅介護で気をつけたいポイントをまとめました。

 

【著者】中谷ミホ

1. 高齢者は食中毒に要注意

食中毒は誰にでも起こり得るものですが、高齢者は特に重症化しやすく、注意が必要です。その背景には、加齢にともなう次のような体の変化があります。

・免疫力の低下:少量の菌でも発症することがある

・胃酸の減少:体内に入った細菌を殺菌する力が弱まる

・味覚・嗅覚の衰え:食品のにおいや味の異変に気づきにくい

加えて、認知症のある方は、消費期限の確認や冷蔵庫の管理が難しくなり、傷んだ食品に気づかず口にしてしまうこともあります。

高齢者が食中毒にかかると、下痢や嘔吐で脱水状態を引き起こし、命に関わるケースも少なくありません。

だからこそ在宅介護では、日々の食事づくりの中で食中毒をしっかり予防することが大切です。

2. 食中毒予防の3原則「つけない・増やさない・やっつける」

家庭でできる食中毒予防の基本は、細菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」の3つです。それぞれ、具体的にどんなことに気をつければよいのかを見ていきましょう。


◾️つけない = 洗う・分ける 
食中毒予防でまず大切なのは、原因菌やウイルスを食べ物に「つけない」ことです。手にはさまざまな雑菌がついているため、次のような場面では必ず手を洗いましょう。

・調理を始める前
・生の肉や魚、卵などを扱う前後
・調理の途中で、トイレに行ったあとや鼻をかんだあと
・おむつ交換や口腔ケアのあと
・ペットに触れたあと

在宅介護では、おむつ交換や口腔ケアなど、菌に触れる場面も少なくありません。介護のあとは、必ず石けんで丁寧に手を洗うことを習慣にしましょう。

また、生の肉や魚を切ったまな板や包丁をそのまま別の食材に使うと、菌が移ってしまいます。使うたびに洗って消毒する、または加熱しない食材(野菜など)を先に切ってしまうのもひとつの方法です。冷蔵庫にしまうときも、ラップや密封容器で他の食材と分けておくと安心です。

◾️増やさない = 低温で保存する 
細菌の多くは10℃以下で増殖が遅くなり、マイナス15℃以下で止まります。買い物から帰ったらすぐに冷蔵庫へ入れ、調理後の食品も常温に長く置かないようにしましょう。冷蔵庫を過信せず、入れた食品はなるべく早めに食べ切ることも大切です。

◾️やっつける = しっかり加熱する
ほとんどの細菌やウイルスは、加熱すれば死滅します。肉や魚はもちろん、野菜も加熱して食べれば安心です。とくに肉料理は中心までしっかり火を通すことが大切で、中心部を75℃で1分以上が目安です。

在宅介護では、やわらかさを優先するあまり加熱が足りなくなることもあるので注意しましょう。

ふきんやまな板、包丁などの調理器具にも細菌やウイルスは残っています。肉や魚、卵などを扱ったあとは、洗剤でよく洗い熱湯をかけて殺菌しましょう。台所用の殺菌剤を使うのも効果的です。

3. 在宅介護で実践したい「6つのポイント」

「買い物」「保存」「下準備」「調理」「食事」「残った食品」の6つの場面ごとに、在宅介護ならではの注意点をまとめました。

◾️買い物 
生鮮食品は新鮮なものを選び、消費期限も確認しましょう。買い物に行く時間がなかなか取れない場合は、イオンネットスーパーなどの宅配サービスを上手に活用するのもおすすめです。ケアラーにおすすめの使い方はこちらの記事で詳しく紹介しています。

◾️保存 
冷蔵や冷凍が必要な食品は、帰宅したらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。冷蔵庫は10℃以下、冷凍庫はマイナス15℃以下が目安です。詰め込みすぎると冷気の循環が悪くなるので、7割程度を目安にしておきましょう。

筆者がケアマネジャーとして、ご利用者のご自宅を訪問した際、冷蔵庫の中が期限切れの食品でいっぱいになっているケースがありました。離れて暮らすご家族は、帰省や訪問の際に冷蔵庫の中身を一緒に確認し、古いものを整理しておくと安心です。

◾️下準備 
調理を始める前は、必ず石けんで手を洗いましょう。野菜は流水で丁寧に洗い、生の肉や魚を扱ったまな板や包丁は、次の食材を使う前に洗うことが大切です。

冷凍してある食材を解凍するときは、調理台に放置せず、冷蔵庫や電子レンジを使いましょう。室温に置くと食中毒菌が増えてしまうことがあります。使う分だけ解凍し、再冷凍はしないようにしましょう。

◾️調理 
在宅介護で特に注意したいのが、きざみ食やミキサー食などの嚥下調整食です。加熱後に食品を刻んだりミキサーにかけたりする工程が加わるため、通常の食事より二次汚染のリスクが高まります。食材の表面積が大きくなることで、細菌が付着・増殖しやすくなるのです。できあがったら常温に長く置かず、早めに提供するようにしましょう。

◾️食事 
食事の前には、介助する側もされる側も手を洗いましょう。温かい料理は温かいうちに(65℃以上)、冷やして食べる料理は冷たいうちに(10℃以下)出すのが目安です。 

調理した食品を室温に長く置くのも避けましょう。たとえばO157は、室温で15〜20分のうちに2倍に増えるといわれています。

◾️残った食品 
残った食品は清潔な容器に小分けにして冷蔵庫で保存し、早めに食べ切りましょう。温め直すときは75℃以上、味噌汁やスープは沸騰するまでしっかり加熱します。

時間が経ちすぎたものや少しでも怪しいと感じたものは、思い切って捨てる判断も必要です。高齢の方は「もったいない」という気持ちから古い食品を食べてしまうこともあるため、ご家族が一緒に確認してあげるとよいでしょう。

4. 気をつけたいシニアの脱水サイン

高齢者は脱水症状を起こしやすいため、次のようなサインに気づいたら注意が必要です。

・尿の回数や量が明らかに減っている
・口の中や舌が乾いている
・皮膚をつまんだあと、戻りが遅い
・ぐったりして元気がない、反応が鈍い
・微熱が続く

当てはまるものがあれば、早めに受診しましょう。

◾️受診までの水分補給
受診までの間は、少量ずつこまめに水分を補給しましょう。水やお茶よりも、塩分と糖分がバランスよく含まれた経口補水液(OS-1など)が吸収されやすくおすすめです。

ただし、心臓や腎臓の持病がある方は、水分や塩分の量に制限がある場合もあります。体調を崩したときの水分補給の方法について、普段からかかりつけ医に確認しておくと安心です。

シニアの脱水予防や日常の水分補給のコツについては、シニアの脱水症状を防ぐ水分補給のポイント|介護福祉士が解説!で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。

5. まとめ:今日からできる食中毒予防

高齢者は免疫力の低下により、少量の菌でも食中毒になりやすく、症状が重くなりやすい傾向があります。とくに在宅介護では、嚥下調整食の二次汚染や冷蔵庫の管理など、介護ならではの注意点も少なくありません。

日々の食事づくりでは、「つけない・増やさない・やっつける」の3原則と、6つの場面ごとのポイントを押さえておくことが大切です。

食品衛生月間をきっかけに、ご家庭での衛生管理や食の安全について改めて考えてみてはいかがでしょうか。

参考資料:
・政府広報オンライン「食中毒予防の原則と6つのポイント」
https://www.gov-online.go.jp/article/20110602/entry-8196.html

・厚生労働省「家庭でできる食中毒予防の6つのポイント」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/01_00006.html

・厚生労働省「大量調理施設衛生管理マニュアル」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000139151.pdf

・農林水産省「これで解決!食中毒予防のポイント」
https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/point.html

写真:PIXTA、写真AC



この記事の提供元
Author Image

著者:中谷 ミホ

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級

この著者のこれまでの記事

熱中症予防のために在宅介護で実践したい対策とは?|ケア活カレンダー①

2026年7月30日

2026年4月にスタートした「介護情報基盤」とは? 仕組みと利用者のメリットをわかりやすく解説

2026年7月2日

関連記事

熱中症予防のために在宅介護で実践したい対策とは?|ケア活カレンダー①

2026年7月30日

要注意な【薬と食品の飲み合わせ】 薬剤師が教えるシニアケアに役立つお薬情報

2023年12月23日

Cancel Pop

会員登録はお済みですか?

新規登録(無料) をする