年齢を重ねると、生活習慣病予防に加えて、低栄養や筋力低下を防ぐ視点も重要です。特に食事量が減っている場合、好きなものを上手に活用しながら栄養を補う工夫が必要になりますが、具体的に何を選べばいいか迷ってしまうものです。

例えば、身近なおやつの定番である「おせんべい」と「ポテトチップス」なら、どちらを選ぶべきなのでしょうか。一人ひとりの健康状態や食事内容によって、選び方は異なります。今回は、エネルギーと塩分の考え方を踏まえ、高齢者の低栄養対策に役立つおやつ選びのポイントを紹介します。

1. 高齢者のおやつ選びでは低栄養予防も重要

高齢者の健康維持のためには、高血圧予防だけでなく、低栄養やフレイルを防ぐことも大切です。そのため、おやつを選ぶ際は塩分だけでなく全体的な栄養面にも配慮する必要があります。まずは、低栄養予防が重要な理由をみていきましょう。

●食事量が減ると起こりやすい高齢者の低栄養
低栄養とは、身体に必要なエネルギーやたんぱく質、ビタミン、ミネラルなどが不足している状態を指します。高齢者は食欲低下や噛む力の低下、病気の影響などによって食事量が減りやすく、知らないうちに低栄養に進行することがあるため注意が必要です。

低栄養が続くと体重減少が起こりやすくなり、筋肉量の減少にもつながります。筋肉が減ると歩行や立ち上がりなどの日常動作が難しくなり、転倒や要介護状態のリスクが高まる可能性があります。

生活習慣病予防のためにエネルギーや脂質を控える意識が重視されがちですが、高齢者の場合は「しっかり食べる」行為そのものが健康維持に直結することも少なくありません。そのため、脂質や塩分だけにとらわれず、全体の栄養バランスを見直す必要があります。

●フレイル予防では「食べられること」も大切
フレイルとは、加齢によって心身の機能が低下し、「健康な状態」と「要介護状態」の中間にある状態を指します。適切な対策を行えば改善が期待できる一方、放置すると介護が必要な状態へ進行する可能性があります。

フレイル予防では、栄養、運動、社会参加が重要とされています。その中でも栄養面では、必要なエネルギーやたんぱく質を確保することが欠かせません。

高齢者の場合、理想的な食事にこだわり過ぎることで、かえって食事量が減ってしまうことがあります。例えば「塩分が多いから食べない」「脂質が多いから避ける」と制限し過ぎることで、食べる楽しみそのものが失われてしまうケースもありますので、無理なく続けられる工夫をし、毎日の食事をおいしく楽しむ視点が何よりも大切になります。

●塩分制限だけを優先すると逆効果になることも
高血圧や心疾患の予防では減塩が重要です。実際に日本人は塩分摂取量が多い傾向にあり、適切な塩分管理は健康維持につながります。


塩

しかし、高齢者では減塩を意識し過ぎることで食事がおいしく感じられなくなり、食欲低下につながることがあります。その結果、食事量そのものが減少し、低栄養を招くおそれもあるのです。

医師から減塩指導を受けている場合は、もちろん優先して取り組む必要がありますが、体重減少が続いている場合や食事量が著しく少ない場合には、まずは栄養確保を優先したほうがよい場合もあります。大切なのは、塩分量のみを見るのではなく、現在の健康状態や栄養状態を総合的に判断することです。

2. おせんべいとポテトチップスの特徴

「おせんべいは健康的だけど、ポテトチップスはエネルギーが高そう」というイメージをもっている方は多いかもしれません。しかし実際には、それぞれに含まれる塩分やエネルギー、脂質量などの特徴が異なり、一概にどちらが良いとはいい切れません。どちらが自分に合っているかを見極めるために、まずはそれぞれのおやつの特徴を詳しく見ていきましょう。

●おせんべいのメリットと注意点
おせんべいの特徴は、ポテトチップスと比べて脂質が少ないことです。そのため脂質制限が必要な方でも比較的選びやすい間食といえますが、しょうゆ味や塩味のおせんべいでは塩分が多く含まれていることがあり、少量でも塩分摂取量が増える可能性があるため、高血圧が気になる方には注意が必要です。


せんべい

また、高齢者では歯の状態や噛む力の低下により、硬いおせんべいは食べにくい場合があります。無理に食べると誤嚥などにつながることもあるため、食べやすさも考慮したいところです。おせんべいが硬くて食べにくい場合は、口の中で溶けやすいタイプのもの(*)を選ぶことで、食べやすさに配慮しながら間食を楽しむことができます。

*参考商品:やわらかおかき

ポテトチップスのメリットと注意点
ポテトチップスは脂質が多い反面、少量でも効率よくエネルギーを補給しやすいという特徴があります。


ポテトチップス

食事量が少なく体重減少がみられる高齢者にとっては、少ない量でエネルギーを確保できることがメリットにつながる場合もあります。ただし、脂質や塩分が多いため、食べ過ぎには注意が必要です。特に大袋はつい食べ過ぎてしまうため、小袋タイプを活用するとよいでしょう。

●数字で比較!エネルギー・脂質・塩分はどれくらい違う?
次に、栄養成分の違いを数字で確認してみましょう。


せんべいとポテトチップスのカロリー等の比較

 エネルギー    脂質    食塩相当量 食品(100gあたり)  
・しょうゆせんべい    368kcal    1.0g    1.3g
・ポテトチップス    541kcal        35.2g    1.0g



ポテトチップスはエネルギーや脂質が高いため、食が細い方でも効率的なエネルギー源になる一方で、おせんべいは脂質が少ないものの、商品によってはポテトチップスより食塩相当量が多くなる傾向があります。

3. どちらの間食を選ぶ? 状態別の考え方

おせんべいとポテトチップスのどちらが適しているかは、高齢者の健康状態によって変わります。大切なのは食品そのものの良し悪しではなく、今の身体に必要なものを優先することです。ここでは、状態別のポイントを解説します。

●高血圧やむくみが気になる場合
高血圧やむくみが気になる場合、塩分管理が重要になります。ただし、おせんべいかポテトチップスかということだけではなく、食べる量にも注意が必要です。

大袋を食べ切ってしまう習慣がある方は、食べる量を決めて取り分けたり、小袋タイプを選んだりすることで塩分摂取量を抑えやすくなります。減塩タイプの商品を活用する方法もあります。無理なく続けられる方法で、塩分管理を行いましょう。また、腎臓病や心疾患などで食事制限がある場合は、主治医に相談しながら食品を選ぶようにしてください。

●体重が減ってきた・痩せている場合
体重減少がみられる場合は、低栄養のリスクが高まっている可能性があります。このような場合は塩分だけでなく、エネルギーやたんぱく質を確保することも重要です。

例えば、ポテトチップスのように少量でエネルギーを補給しやすい食品が役立つ場合もあります。また、チーズやヨーグルト、バナナなどを間食として活用するのもひとつの手です。まずは体重減少を防ぎ、必要な栄養を確保できるよう、食事量の維持を最優先に考えましょう。


チーズ



●食欲がなく食事を残すことが多い場合
食欲が低下し、毎食のように食事を残してしまう場合は、食べられることを優先しましょう。

好きなお菓子や間食を活用することで、エネルギー摂取量を増やせる場合があります。高齢者の場合、食事から十分な栄養を摂ることに加え、食べる楽しみを維持することも重要です。好きなものを取り入れながら、無理なく栄養やエネルギーを補える方法を考えていきましょう。

4. まとめ:食品のイメージだけで判断しないことが大切

高齢者の食事選びでは、食品を「身体に良い・悪い」というイメージだけで判断しないことが大切です。高血圧やむくみ対策として「減塩」を優先すべき人もいれば、食事量の低下による低栄養を防ぐために「エネルギー補給」を最優先すべき人もいるからです。

例えば、おせんべいは「和食=健康的」というイメージを持たれがちですが、先に触れたように、実は塩分が多く含まれている商品も少なくありません。一方、ジャンクフード的な印象のあるポテトチップスは、少量でも効率よくエネルギーを補給できるというメリットがあります。

どんな食品にもそれぞれの特徴があり、食べる人の健康状態によって最適な選び方は変わります。大切なのは、今の身体に何が必要かを見極め、塩分量やエネルギー量を確認して選ぶことです。

なお、治療中の疾患や主治医からの食事制限がある場合は、自己判断せず、必ず医師や管理栄養士に相談しながら進めましょう。


食事するシニア女性

 

参考:
高齢者の低栄養(公益財団法人長寿科学振興財団)
健康日本21アクション支援システム 高齢者の低栄養予防(厚生労働省)
フレイルとは(公益財団法人長寿科学振興財団)
フレイルの予防(公益財団法人長寿科学振興財団)
フレイル予防(東京都医師会)
令和6年 国民健康・栄養調査結果の概要(厚生労働省)
食品成分データベース 菓子類/<和干菓子類>/米菓/しょうゆせんべい(文部科学省)
食品成分データベース 菓子類/<スナック類>/ポテトチップス/ポテトチップス(文部科学省)
健康日本21アクション支援システム 高血圧(厚生労働省)
高齢者の低栄養対策のための食生活とは(公益財団法人長寿科学振興財団)


写真:写真AC、PIXTA


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この記事の提供元
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著者:下田由美(しもだ・ゆみ)

管理栄養士として約10年間、病院・施設・保育園で幅広い年代の「食と健康」に携わってきた。その中で「食」と「心」は密接に関係していると気づく。現場では、利用者様の気持ちに寄り添いながら、無理なく安全に食べられる方法を模索し続けてきた。利用者様から「ありがとう。美味しかった」と感謝された経験は今でも忘れられない。現在は管理栄養士として、栄養指導や記事執筆、監修、レシピ作りなどを行っている。

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