熱中症で救急搬送される高齢者の半数以上が自宅で発症しています。本人が「暑くない」と感じていても、体はすでに危険な状態になっていることがあります。大切な人を守るために、在宅介護で実践したい熱中症対策を解説します。

1. 高齢者が熱中症になりやすいのはなぜ?

高齢者が若い世代に比べて熱中症のリスクが高いのは、加齢に伴う「体の変化」が大きく影響しています。主な理由は以下の4つです。

 

・暑さを感じにくい
皮膚の温度センサーが鈍くなり、危険な室温でも「暑くない」と感じがちです。


・熱がこもりやすい
発汗機能の低下により、体内の熱をうまく外へ逃がせません。


・のどの渇きを感じにくい
自覚症状が出にくいため、水分補給が遅れがちになります。


・体内の水分量が少ない
もともと若い人より水分量が少なく、わずかな脱水でも重症化しやすくなります。


こうした体の変化が重なることで、本人が気づかないうちに熱中症が進行してしまうのです。

 

2. 熱中症は「自宅」で最も多く発生している

高齢者の熱中症は、屋外よりもむしろ「自宅」で発症するケースが多いのが特徴です。厚生労働省の資料によると、熱中症による死亡者の約8割を65歳以上が占めており、さらに屋内で亡くなった方の約9割がエアコンを使用していなかったとされています。

 

高齢者がエアコンを使いたがらない理由は、「体が冷えるのが嫌」「電気代がもったいない」「暑いと感じないから必要性を感じない」などさまざまです。

 

しかし、「暑さを感じにくくなっている」こと自体が大きなリスクであり、本人の体感だけに頼るのは危険です。

 

さらに、夜間も注意が必要です。日中に壁や天井にたまった熱が室内にこもるため、外気温が下がっても室温は高いままになりやすく、寝ている間に脱水が進むケースも少なくありません。就寝中もエアコンを適切に使用することが大切です。

 

参照:厚生労働省 リーフレット「高齢者のための熱中症対策

 

 

3. 現場で実際にあったヒヤリ事例

筆者が介護職員として施設で勤務していた頃、夏場に特に気になったのが認知症の方の「厚着」の問題です。


ある利用者の方は、冷房の効いた部屋を寒がり、入浴後に厚手の上着を羽織っていました。入浴で体温が上がった状態で厚着をしたことで体に熱がこもり、脱水症状を起こしてしまったのです。 


また別の方は、真夏にもかかわらず何枚も服を着込んでいました。理由を聞くと「かぜをひいたらいけないので」とのことでした。一度は上着を脱いでいただきましたが、しばらくすると、またしっかりと着込んでしまう場面もありました。認知症の方の場合、季節感の判断が難しくなっていたり、説明を覚えていられないことがあったりするため、こうしたことが繰り返し起こりやすいのです。


このようなケースでは、「脱水症になるから脱いで」と一方的に伝えてもうまくいきません。室内の温度計を一緒に確認しながら「今日は〇度あるので、このくらいの服装で大丈夫ですよ」と説明したり、季節に合わない衣類はあらかじめ見えない場所にしまっておくなど、環境面からの工夫が有効です。

 

4. 在宅介護で実践したい「4つの熱中症対策」

■室温と湿度を「見える化」する 
部屋に温湿度計を置き、室温28℃以下、湿度50〜60%を目安に、こまめに確認する習慣をつけましょう。エアコンの冷風が直接体に当たるのを嫌がる方には、風向きを上向きに調整したり、扇風機を併用して空気を循環させたりする工夫が有効です。


■水分補給はこまめに声をかける 
厚生労働省は、熱中症予防に「1日あたり1.2ℓ」の水分補給を推奨しています。のどが渇いていなくても、「1時間ごとにコップ1杯」や「起床時・入浴前後」などタイミングを決めて促すことが大切です。


冷たい飲み物が苦手な方には、常温の水やぬるめのお茶でも問題ありません。きゅうりやトマト、スイカなど水分の多い食材や、汁物を食事に取り入れるのも効果的です。

 

■離れて暮らす家族はスマート家電を活用する
Wi-Fi環境があれば、スマート温湿度計やスマートリモコンの活用を検討してみましょう。スマート温湿度計があれば、離れた場所からでもスマホのアプリでリアルタイムに室温や湿度を確認でき、危険な温度になると通知も届きます。


さらにスマートリモコンと組み合わせれば、エアコンの遠隔操作や「室温が28℃を超えたら自動冷房をON」といった設定も可能です。いずれも工事不要で、5,000円前後から手軽に導入できます。

 

ただし、建物の構造や日当たりによってはエアコンの効き方に差があるため、アプリで実際の室温を確認する習慣をつけておくと安心です。


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■環境省のLINE公式アカウントを活用する
環境省のLINE公式アカウントでは、熱中症警戒アラートや「暑さ指数」の通知を無料で受け取れます。通知先の都道府県を最大5箇所まで登録でき、お知らせのレベルも5段階から選べます。親が暮らす地域をあらかじめ登録しておけば、危険な暑さの日にスマホへ通知が届くため、離れていても早めの声かけや対応が可能です(詳しくはこちらをご確認ください)。

 

 

5. 熱中症のサインと応急処置

高齢者は熱中症の初期症状が出にくいことがあります。「いつもと様子が違う」と感じたら、早めに対応することが大切です。

 

初期のサインとして見られるのが、めまい・立ちくらみ・手足のしびれ・筋肉のこむら返りです。さらに頭痛や吐き気、ぐったりしている、呼びかけへの反応が鈍いといった症状が現れたら、重症化が疑われます。

 

応急処置はまず、涼しい場所への移動と体を冷やすことが優先です。首筋・脇の下・太ももの付け根など、太い血管が通る部位を集中的に冷やすと効果的です。意識がはっきりしていれば水分と塩分を補給します。自力で飲めない場合や意識がもうろうとしている場合は、ためらわず救急車を呼びましょう。


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6. まとめ|日々の工夫が熱中症予防につながる

高齢者の熱中症は、「暑さを感じにくい」「エアコンを使いたがらない」「のどの渇きを感じにくい」といった複数の要因が重なり、自宅で気づかないうちに進行するケースが少なくありません。


だからこそ、ご本人の感覚だけに頼らず、室温を数値で確認し、過ごしやすい環境を整え、こまめに声をかけることが大切です。


こうした日々の小さな積み重ねが、大切なご家族を熱中症から守ることにつながります。

 

写真:PIXTA

 

 

この記事の提供元
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著者:中谷 ミホ

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級

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