「毎月の介護費用が想像以上に高い」 「このまま支払い続けられるだろうか」

介護費用の支払いに不安を感じたとき、公的な支援制度を利用することで経済的な負担を軽減できる可能性があります。今回は、介護費用の負担を軽くする代表的な4つの制度と、困ったときに頼れる相談先や対処法について解説します。

【著者】中谷ミホ​​

 

1. ①月の自己負担に上限を設ける「高額介護サービス費」

介護保険サービスを利用して支払った1ヶ月の自己負担額が、所得に応じて定められた上限を超えた場合、超過分が払い戻される制度です。対象は介護サービスの利用者負担分(1割〜3割)です。

支給限度額を超えて利用した全額自己負担分や福祉用具購入費、住宅改修費、施設利用時の食費・居住費などは対象外となります。

月の上限額は、所得段階ごとに次のように定められています。



たとえば【市町村民税課税・課税所得380万円未満】の世帯で、1ヶ月の介護サービス自己負担額が10万円だった場合を見てみましょう。

10万円 - 44,400円(月の上限額)= 55,600円

このケースでは毎月55,600円が払い戻されます。年間にすると約67万円にもなり、家計の負担を大きく軽減してくれます。

◾️申請方法
上限を超えた月に自治体から申請書が届きます。初回に一度手続きをすれば、2回目以降は自動で指定口座へ振り込まれる仕組みです。心当たりのある方は、自治体からの通知を見落としていないか、ぜひ一度確認してみてください。

2. ②施設の食費・居住費を軽減する「負担限度額認定証」

特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院などの介護保険施設に入所した際(ショートステイを含む)の食費と居住費の負担を軽減する制度です。

市区町村に申請して「負担限度額認定証」の交付を受けることで、所得に応じた限度額まで負担が抑えられます。

対象となるのは、世帯全員(別世帯の配偶者を含む)が市町村民税非課税であり、かつ年金収入等や預貯金等の要件を満たす方です。所得状況によって以下の4段階に分かれており、段階ごとに食費・居住費の限度額が定められています。



たとえば、特別養護老人ホームの多床室に入所し、第3段階①に該当する方の場合で計算してみましょう。

食費・居住費の標準的な金額(基準費用額)は1日あたり食費1,445円+居住費915円で、月額にすると7万800円(30日換算)になります。

第3段階①では、食費が1日650円(月額19,500円)、居住費が1日430円(月額12,900円)に軽減されるため、月の負担額は約32,400円となり、月額約4万円の負担軽減となります。

◾️申請方法
申請は市区町村の介護保険担当窓口で行います。預貯金通帳のコピーなど資産確認の書類を提出し、認定されると「負担限度額認定証」が交付されます。これを施設に提示することで限度額が適用されます。

なお、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅、デイサービスなどは対象外です。

※2026年8月から制度の一部が改定され、特に第3段階②(年金収入等120万円超の方)では、食費が1日60円・居住費が1日100円の引き上げとなります。該当する方は、施設に最新の負担額を確認しましょう。

3. ③社会福祉法人の事業所で使える「利用者負担軽減制度」

社会福祉法人が運営する施設やサービス事業所で利用できる軽減制度です。ただし、すべての事業所で使えるわけではなく、制度の実施を申し出ている事業所に限られます。

軽減率は原則として利用者負担の4分の1(老齢福祉年金受給者は2分の1)です。実際の軽減率は、市町村が世帯の収入や状況を踏まえて個別に決定し、確認証に記載されます。

対象となるのは、住民税非課税世帯のうち、以下の要件をすべて満たし、生計が困難と市区町村に認められた方および生活保護受給者の方です。


●年間収入が単身世帯で150万円以下(世帯員が1人増えるごとに50万円加算)
●預貯金等が単身世帯で350万円以下(世帯員が1人増えるごとに100万円加算)
●日常生活に必要な資産以外に活用できる資産がない
●負担能力のある親族等に扶養されていない
●介護保険料を滞納していない

◾️申請方法 
申請は市区町村の福祉・介護担当窓口で行います。審査の結果、対象と認められると「社会福祉法人等利用者負担軽減確認証」が交付されます。これを軽減制度を実施している事業所に提示することで、軽減後の金額で利用できます。

4. ④年間の医療・介護費の負担を抑える「高額医療・高額介護合算療養費制度」

同一世帯で1年間の医療保険と介護保険の自己負担額の合計が、年齢や所得に応じた上限額を超えた場合、その超過分が払い戻される制度です。

医療と介護の両方を利用している世帯では、月単位で「高額療養費」や「高額介護サービス費」が適用されていても、年間を通すと大きな負担になります。そうした負担を軽減するために役立つのがこの制度です。合算の対象となる期間は、毎年8月1日から翌年7月31日までの1年間です。

◾️申請方法
該当世帯には、自治体から申請書が送付されます。届いた申請書に本人確認書類と振込先口座がわかるものを添えて、お住まいの市区町村の窓口へ提出してください。

なお、申請期限は基準日(7月31日)の翌日から2年間です。期限を過ぎると請求できなくなるため、対象になるか不明な場合は早めに窓口へ問い合わせましょう。

5. 介護費用の支払いに不安があるときの相談窓口・対処法

ここまでご紹介した4つの制度の活用とあわせて、介護費用の支払いに困ったときに頼れる相談窓口や対処法もご紹介します。


・地域包括支援センターに相談する:地域の公的な相談窓口です。社会福祉士や保健師、主任ケアマネジャーといった専門的な知識を持つ職員が常駐し、無料で介護に関するさまざまな相談に乗ってもらえます。

・生活福祉資金貸付制度を利用する:低所得世帯や高齢者世帯などを対象に、生活の立て直しに必要な資金を低利または無利子で貸し付ける制度です。介護費用を含む一時的な生活費の確保にも利用できます。相談・申請窓口は、お住まいの地域の社会福祉協議会です。

 参考:厚生労働省「生活福祉資金貸付制度について」

・リバースモーゲージを利用する:自宅を担保に金融機関から融資を受けられる、高齢者向けの貸付制度です。家を売らずに住み続けながら、生活費や介護費用のためにお金を用意できます。利用を検討する場合は、銀行などの金融機関へご相談ください。

・費用負担の軽い施設への住み替えを検討する :入居中の施設の費用負担が重く、支払いに不安がある場合は、より費用の安い施設への住み替えも選択肢の一つです。

施設費用を抑えるポイントについては「ケアマネ解説!介護施設・老人ホームの費用①」で詳しく解説しています。

それでもなお生活が維持できなくなった場合には、国が最低限度の生活を保証する「生活保護(介護扶助)制度」を申請するという選択肢もあります。申請はお住まいの地域の福祉事務所で行いますが、厳格な審査があります。

6. まとめ

今回ご紹介した4つの負担軽減制度は、いずれも申請手続きが必要となります。手続きに不安を感じるシニアも多いため、ぜひご家族がサポートしてあげてください。

※詳細は厚生労働省「介護サービス情報公表システム」をご参照ください。



写真(トップ):写真AC



この記事の提供元
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著者:中谷 ミホ

福祉系短大を卒業後、介護職員・相談員・ケアマネジャーとして介護現場で20年活躍。現在はフリーライターとして、介護業界での経験を生かし、介護に関わる記事を多く執筆する。
保有資格:介護福祉士・ケアマネジャー・社会福祉士・保育士・福祉住環境コーディネーター3級

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