「また片側にぶつかってる」「なんで気づかないの?」
脳卒中後のご家族との暮らしで、こうした戸惑いを感じる方は少なくありません。この見落としは「半側空間無視」と呼ばれ、脳が片側の空間を認識できなくなっている状態です。
今回は、半側空間無視がどんな場面で現れるのか、ケアラーが自宅でできる具体的な工夫とあわせて解説します。
■どのような症状か
半側空間無視(はんそくくうかんむし)とは、主に脳卒中(脳梗塞や脳出血)によって脳に障害を負った際に、後遺症として現れる症状のひとつです。
この症状は、視力が低下したり視野が欠けたりといった、「見る機能そのものの問題」とは異なります。実際には見えているのに、左もしくは右の片側の空間を認識できず、見落としてしまう状態です。
■半側空間無視は左側に多い
多くの場合、見落としの症状は左の空間や左半身に現れます。これは、右脳は左右両方に注意を向けられますが、左脳は右側しか意識できないためです。 左脳を損傷しても右脳が両側をカバーできますが、右脳を損傷すると、左脳の機能(右側への注意)だけが残り、左側に目が向かなくなってしまいます。 そのため、左側の空間を見落とす方が多いのです。
※本記事では、こうした理由から左側の見落としを中心に解説していきます。
■本人は症状を認識できていない場合が多い
特徴的なのは、本人が見落としていること自体を認識できない点です。 そのため、周囲の人に「どうして見えないの?」と指摘されても、本人は「え?ちゃんと見えているのに」と感じてしまいます。 このように、本人には自覚が乏しいため、「ちゃんと見て」「気をつけて」と責めるとトラブルになりかねません。 互いのストレスを減らすためには、ケアラーが症状を理解したうえで、接し方を工夫することが大切です。
日常生活では、さまざまな場面で半側空間無視の症状が現れます。
どのような形で現れるのか、場面ごとに見ていきましょう。
■食事
お皿に盛られた食事の右側だけを食べ、左側には手をつけずに残すことがあります。 本人は食べ終えたつもりですが、ケアラーがお皿を少し右に移動した瞬間に「あ、まだあったのか!」と驚くことがあるのです。 また、食後に左の口元を拭き忘れることもよく見られます。
■身だしなみ
顔の左側のひげを剃り残す、化粧を塗り残すといった姿が見られます。着替えでは、左袖に腕を通し忘れたり、ズボンの左側が上げきれなかったりと、左半身への注意がおろそかになります。 また、眼鏡のフレームが左耳にかかっていないのにも気づきません。
■歩行
左側の壁やドアの枠にぶつかってしまうほか、左へ曲がらなければいけないのに、曲がる場所に気づかずに直進してしまうことがあります。
■車椅子での操作や移動
右側のブレーキを確実にかけられても、左側をかけ忘れて立ち上がってしまいます。 また、フットレスト(足置き)に左足だけ乗っていなかったり、左の車輪が障害物にぶつかっても気づかずに進もうとしたりすることがあり、転倒やけがにつながりかねません。
■会話
左側から話しかけられても気づきにくく、周りの人は無視されているように感じる場合があります。
本人は、呼ばれたことがなんとなくわかるので返事をするものの、右側ばかりを探すため呼んだ相手を見つけられません。
■読書や新聞
ページの左側を読み飛ばしてしまうため、文章のつながりがわからず、内容を理解しにくくなります。本人は左側を見落としていることには気づいていない場合がほとんどです。
■電話の操作
電話をかける際、左側の数字列(1、4、7など)を見つけるのに時間がかかったり、かけ間違えたりしてしまいます。何度かけてもつながらず、本人が困惑するケースも見られます。
日常生活では、さまざまな場面で半側空間無視の症状が現れます。
どのような形で現れるのか、場面ごとに見ていきましょう。
■食事
お皿に盛られた食事の右側だけを食べ、左側には手をつけずに残すことがあります。 本人は食べ終えたつもりですが、ケアラーがお皿を少し右に移動した瞬間に「あ、まだあったのか!」と驚くことがあるのです。 また、食後に左の口元を拭き忘れることもよく見られます。
■身だしなみ
顔の左側のひげを剃り残す、化粧を塗り残すといった姿が見られます。着替えでは、左袖に腕を通し忘れたり、ズボンの左側が上げきれなかったりと、左半身への注意がおろそかになります。 また、眼鏡のフレームが左耳にかかっていないのにも気づきません。
■歩行
左側の壁やドアの枠にぶつかってしまうほか、左へ曲がらなければいけないのに、曲がる場所に気づかずに直進してしまうことがあります。
■車椅子での操作や移動
右側のブレーキを確実にかけられても、左側をかけ忘れて立ち上がってしまいます。 また、フットレスト(足置き)に左足だけ乗っていなかったり、左の車輪が障害物にぶつかっても気づかずに進もうとしたりすることがあり、転倒やけがにつながりかねません。
■会話
左側から話しかけられても気づきにくく、周りの人は無視されているように感じる場合があります。
本人は、呼ばれたことがなんとなくわかるので返事をするものの、右側ばかりを探すため呼んだ相手を見つけられません。
■読書や新聞
ページの左側を読み飛ばしてしまうため、文章のつながりがわからず、内容を理解しにくくなります。本人は左側を見落としていることには気づいていない場合がほとんどです。
■電話の操作
電話をかける際、左側の数字列(1、4、7など)を見つけるのに時間がかかったり、かけ間違えたりしてしまいます。何度かけてもつながらず、本人が困惑するケースも見られます。
半側空間無視の症状があっても、周囲が理解して環境や声がけを工夫すれば、日常生活の困りごとを減らすことができます。ご家族が自宅で実践できる工夫を紹介しますので、参考にしてください。
■食事の工夫
お皿を本人の真正面よりも少し右側に置き、全体を把握できるようにしましょう。
もし左側を食べ残す場合は、さらに右側へずらします。
食べ残しがなければ、少しずつ正面に寄せていき、徐々に左側への注意を促していきます。
また、品数を書いた紙を置いておくのもよい方法です。
たとえば「おかずは3品」と書いておけば、本人が数を確認する手がかりになります。
■身だしなみの工夫
整髪やひげ剃り、化粧では「ちゃんと見て」と言うのではなく、「右から左へ順番に確認しよう」と、具体的に伝えましょう。眼鏡のかけ忘れは、「左耳の眼鏡を触ってみよう」と声がけしてみてください。
着替えの前に、本人が左側の手や足を見たり触れたりして位置を確認するようにしましょう。そのうえで、袖を通す・ズボンを上げるといった動作に移ると、スムーズに進みやすくなります。
■歩行時の工夫
ぶつかりやすい家具や壁にクッション材を貼っておくと、万が一ぶつかってもけがを防げます。左に曲がる箇所では、目立つ色のテープや矢印などの目印をつけて、わかりやすくしましょう。夜間は左側の足元を照らすライトを設置し、視覚的な手がかりを増やすことも有効です。
■車椅子の操作や移動時の工夫
左側のブレーキは見落としやすいため、ブレーキレバーにラップの芯をかぶせて長くし、明るい色のテープを巻いておきましょう。こうすることで、視界に入りやすくなり、かけ忘れを防ぐことができます。
また、「ブレーキは、右・左、両方ロック」と声に出して、毎回確認するように習慣づけましょう。移動の際は、本人の右側から「私の方に向かって」といった、わかりやすい声がけをするとスムーズに進められることがあります。
■会話時の工夫
基本は右側から話しかけましょう。ただし、リハビリとして左側への意識を高めたいときは、反対側から声をかけつつ、肩に触れるのが有効です。
身体に触れることで、見落としやすい側へ気づきやすくなります。
■読書や新聞の工夫
本や新聞の左端に太い赤線を引いておき、読み始める前に一度確認してもらいましょう。
どこまで読めばよいかの目印になります。
また、以下の手順で読み進めると、左側まで確認しやすくなります。
1.左手をあらかじめページの一番左下に置く
2.文字を指でなぞりながら読み進める
3.指が左手に当たったら、そのページは終わりの合図としてページをめくる
4.1~3を繰り返す
■電話操作の工夫
左側の数字部分(1、4、7など)に目立つ印や色をつけると、番号を見つけやすくなります。また、番号を探すこと自体に負担がかかる場合は、よくかける相手を短縮登録しておくのもおすすめです。
半側空間無視の症状があっても、周囲が理解して環境や声がけを工夫すれば、日常生活の困りごとを減らすことができます。ご家族が自宅で実践できる工夫を紹介しますので、参考にしてください。
■食事の工夫
お皿を本人の真正面よりも少し右側に置き、全体を把握できるようにしましょう。もし左側を食べ残す場合は、さらに右側へずらします。
食べ残しがなければ、少しずつ正面に寄せていき、徐々に左側への注意を促していきます。
また、品数を書いた紙を置いておくのもよい方法です。たとえば「おかずは3品」と書いておけば、本人が数を確認する手がかりになります。

■身だしなみの工夫
整髪やひげ剃り、化粧では「ちゃんと見て」と言うのではなく、「右から左へ順番に確認しよう」と、具体的に伝えましょう。眼鏡のかけ忘れは、「左耳の眼鏡を触ってみよう」と声がけしてみてください。
着替えの前に、本人が左側の手や足を見たり触れたりして位置を確認するようにしましょう。そのうえで、袖を通す・ズボンを上げるといった動作に移ると、スムーズに進みやすくなります。
■歩行時の工夫
ぶつかりやすい家具や壁にクッション材を貼っておくと、万が一ぶつかってもけがを防げます。左に曲がる箇所では、目立つ色のテープや矢印などの目印をつけて、わかりやすくしましょう。夜間は左側の足元を照らすライトを設置し、視覚的な手がかりを増やすことも有効です。
■車椅子の操作や移動時の工夫
左側のブレーキは見落としやすいため、ブレーキレバーにラップの芯をかぶせて長くし、明るい色のテープを巻いておきましょう。こうすることで、視界に入りやすくなり、かけ忘れを防ぐことができます。
また、「ブレーキは、右・左、両方ロック」と声に出して、毎回確認するように習慣づけましょう。移動の際は、本人の右側から「私の方に向かって」といった、わかりやすい声がけをするとスムーズに進められることがあります。
■会話時の工夫
基本は右側から話しかけましょう。ただし、リハビリとして左側への意識を高めたいときは、反対側から声をかけつつ、肩に触れるのが有効です。
身体に触れることで、見落としやすい側へ気づきやすくなります。
■読書や新聞の工夫
本や新聞の左端に太い赤線を引いておき、読み始める前に一度確認してもらいましょう。どこまで読めばよいかの目印になります。
また、以下の手順で読み進めると、左側まで確認しやすくなります。
1.左手をあらかじめページの一番左下に置く
2.文字を指でなぞりながら読み進める
3.指が左手に当たったら、そのページは終わりの合図としてページをめくる
4.1~3を繰り返す
■電話操作の工夫
左側の数字部分(1、4、7など)に目立つ印や色をつけると、番号を見つけやすくなります。また、番号を探すこと自体に負担がかかる場合は、よくかける相手を短縮登録しておくのもおすすめです。
半側空間無視による見落としは、本人の怠慢や性格が原因ではありません。脳の障害によって、片側の空間を認識できなくなっているためです。
そのため「なぜ見えていないの!」と責めてしまっても、ご本人には否定された気持ちだけが残ってしまいます。
症状を理解し、接し方を工夫することで、心にゆとりをもって向き合えるようになり、日々のケアも継続しやすくなります。
今回紹介した工夫をご家族の生活に合わせて、できることから少しずつ試してみてください。
監修:中谷ミホ
写真:写真AC
著者:鈴木康峻
2008年理学療法士免許取得。長野県の介護老人保健施設にて入所・通所・訪問リハビリに携わる。
リハビリテーション業務の傍ら、介護認定調査員・介護認定審査員・自立支援型個別地域ケア会議の委員なども経験。
医療・介護の現場で働きながら得られる一次情報を強みに、読者の悩みに寄り添った執筆をしている。
得意分野:介護保険制度・認知症やフレイルといった高齢者の疾患・リハビリテーションなど
保有資格:理学療法士・ケアマネジャー・福祉住環境コーディネーター2級