岡崎家の「ケア活」、「墓じまい」のお話の続きです。あくまで我が家の場合ではありますが、「墓じまい」を行った1日を振り返り、当日はどんなことをしたのか、その一部始終をお届けします。まずは前編です!
母親が亡くなる2日前に取り組んでいた「墓じまい」問題(詳細は【こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編②】を参照)。母の遺志を継ぎ、ご先祖さまや母親たちのお骨を菩提寺の永代供養塔に移す「墓じまい」を私がすることになりました。母親の生前最後のメッセージ(メモ)から、50回忌を迎えていない人の永代供養代が「1体60万円」という事実が判明し、「ヒィ~、お金がかかる!」とビビッていると、菩提寺からは、母親には1年間は先祖代々のお墓で眠ってもらいたいという申し出があり、墓じまいは母親の1周忌と同時に行うことになりました。そして迎えた1年後、コロナ禍で父親は遠方へ外出することが難しいため、私、夫、息子で菩提寺へ。
墓じまいとともに、実家の仏壇の魂抜きもお願いしていました。魂抜きの際、知人は菩提樹のご住職に家まで来てもらったという話を聞いていたので、墓じまいとは別日に我が家にもご住職をお呼びしなければならないかと思いきや、「墓じまいの日に、一緒に遠隔でやりましょう!」(えっ、遠隔でもいいの?と思いましたが、下記の黒澤さんの解説を参照のこと。宗派などで対応は異なります)という返答が。そのため、母親の一周忌、実家の仏壇の魂抜き、墓じまいという3大行事を1日で行うことになったのです。
仏壇の魂抜きを遠隔で行うにあたり、ご住職からは仏壇は空にして、位牌や写真、お鈴などを1つの箱にまとめて持ってくるように言われました。その箱は本堂の祭壇に置かれ、母親の一周忌のあとにご祈祷をしていただき魂抜きは無事に終了。箱の中の位牌や写真は菩提樹が保管してくださるとのことでした。現在は仏壇がないため、棚に母親の写真と花を飾り、愛用していたマグカップに朝になったらお茶をお供えしつつ、日々のあれこれを話しています。このあたりも家族の考え方やお寺によってさまざまだと思われるので、親御さんが元気なうちにお寺の方針などを調べて、話を進めておくと良いかもしれません。
【専門家(株式会社OAGウェルビーR 代表取締役 CEO 黒澤史津乃さん )が解説!】
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そもそも、仏壇の「魂抜き」とはどういうことなのでしょうか? いまさら聞けない……と思っていらっしゃる方も多いかもしれません。「魂抜き」のほかに「閉眼供養」と呼ばれることもあります。
仏教では、お墓や位牌・仏壇を使い始める際には、僧侶がお経を唱えることによって魂が宿ると考えられています。その後、魂が宿っているままの状態で、さまざまな事情でによりお墓や位牌・仏壇を移動したり処分したりするのは、タブーとされています。そして、宿っていた魂を抜くための「魂抜き」の儀式を行うことで、ご先祖さまに失礼のない形でお墓や仏壇を移動したり処分したりすることが可能になると言われています。つまり、「魂抜き」の儀式をおこなうことで、お墓や位牌、仏壇などが単なる「モノ」として取り扱うことができるようになるのです。
今回の例では、仏壇の中にあった位牌や遺影、鈴などを持ち出して遠隔で「魂抜き」の儀式を執り行ったようですが、宗派によっては、仏壇そのものにも魂が宿っていると考えられています。その場合には、仏壇のある自宅に僧侶を招いて「魂抜き」の儀式を行わなければならなりません。
魂が宿るのはご本尊(仏像・掛け軸)や位牌であって、仏壇に対しては魂入れ・魂抜きは不要だとする見解と、仏壇そのものにも魂が宿っているため、必要だとする宗派のどちらもありますので、自己判断せずに菩提寺に相談すべきです。
また、今回の例では、「魂抜き」を終えた位牌や遺影、鈴は菩提寺で預かって下さったようですが、多くの場合は「お炊きあげ」をお願いすることになるでしょう。
仏壇を処分するときは、引き出しの中に現金、預金通帳や土地の権利証など大切なものを入れている場合がありますので、最終確認を忘れないようにしましょう。
母親の一周忌と仏壇の魂抜きが終わり、「では、お墓に参りましょう」と、いよいよ(!?)「墓じまい」という流れになりました。お墓に到着するとご住職は墓じまいのための読経を行い、私たちは最後のお線香をあげて、手を合わせるように促されます。お墓の隣にはご住職から紹介され、事前に電話で打ち合わせをしていたお墓の後始末をしてくれる石材店の方が私たちよりも早く到着していました。
我が家のお墓には、先祖代々の墓石、祖父が亡くなったときに祖母が建てた墓石、そして、死産で生まれた私のきょうだいの水子のお地蔵さんがありました。石材店の方は「先祖代々の墓石の下にあったご遺骨は事前に取り出しておきましたよ」と、白い袋(骨袋)に入れた、まるで理科室にでもあるようなきれいなガイコツ状態になっているご先祖さまたちの遺骨を見せてくれました。
一人分ではすまないご先祖さまたちのリアルガイコツの登場があまりに突然だったため、家族の顔が引きつります。中でも、小学1年生の息子は驚きのあまり目を見開いて固まっているのがわかりました。そんな様子を見たご住職が、昔は菩提樹のある地域は土葬だったため、周りのものが朽ちて骨だけがキレイに残っているケースが多い、と教えてくれたのでした。
長い歴史を持つ先祖代々のお墓がある場合は、我が家のようなご先祖さまとの初対面もあるかもしれません。私は祖父母以前のご先祖さまについて、祖父が養子に入りお墓を引き継いだということ以外詳細がわからなかったのですが、父親はリアルガイコツで初対面したご先祖さまたちのことを祖父から聞いていたかもしれません。父親が元気なときにそういった話を聞いていなかったことについては後悔しかありません。自分のルーツを知る意味でも、親御さんとご先祖さまの話をすることも「ケア活」なのかもしれません。
これまで家ごとの墓石の下の大ぶりの骨壺にそれぞれ納められていたご先祖さまのご遺骨ですが、墓じまいをして永代供養の納骨堂や塔に納め直すときには、スペースが限られているため、多くの場合は骨壺のままというわけにはいきません。
稀に「個別安置」と言って、骨壺のまま永代供養の納骨堂などに納められるケースもありますが、それも言葉通りの「永代」ではなく、あくまでも数年間~三十三回忌などの年数を定めた有期契約であり、それが過ぎると骨壺からご遺骨を取り出して、他の方々のご遺骨とともに葬られることになります(合祀、合葬)。
骨壺から取り出されたご遺骨を永代供養の納骨堂などに納める場合は、①白い骨袋にご遺骨をそのまま入れて納める、②取り出したご遺骨を洗浄・乾燥後に粉末にして(粉骨)骨袋に入れて納める、という方法があります。ご遺骨は粉にすることで嵩が減り、限られたスペースにたくさんの方のご遺骨を納めることが可能になりますので、その分、永代供養墓を用意する費用が安くなります。
いずれの方法であっても、骨袋にいれて合祀(合葬)してしまうと、後から故人を特定してご遺骨を取り出すことができなくなりますので、事前に親族でよく話し合って皆が納得した上で、墓じまいをし、永代供養墓に改葬するようにしましょう。
イラスト(下):日野あかね
ご先祖さまのリアルガイコツにビビリまくっている私たちに向かって「ここ(骨袋)に、おばあさんが建てた墓石の下にある骨壺のご遺骨も一緒に入れて、永代供養塔に納めます」と、石材店の方はサクサクと手際よく祖母の建てた墓石を動かし、祖父、祖母、私のきょうだい、母親の骨壺をお墓から引き上げていきます。そして、骨壺のフタを開けると、次々と骨袋に祖父母たちの遺骨を入れていきました。相変わらず、目を見開いて固まっている息子に「ほら、ひいおじいちゃんやおばあちゃんだよ。はじめましてだねー」(と言われても、遺骨だけど……)と私も内心では動揺しながら、精いっぱい、平静を装いました。
すると、母親の骨壺を開けた石材店の方が「お母さんの骨壺にメガネが入っているけど……」と話しかけてきました。そういえば、母親はひどい近眼で天国でもメガネがないと不自由だろうと、1年前にメガネも一緒に骨壺に納めたことをすっかり忘れていたのです。1年振りの母親のメガネとの対面で感傷的になる間も与えられないほどに、石材店の方は「コレ、どうします?」と聞いてきます。「できれば一緒に納めて欲しいです」とご住職にお願いすると、「いいですよ」とあっさり快諾。こうして、無事に骨袋へメガネとともに母親の遺骨も納まりました。その後、ご先祖さまや母親たちのお骨が入った骨袋は石材店の方が押すリヤカーに乗せられ、本堂の横に建つ永代供養塔に運ばれていったのでした(後編「墓じまい編④」へ続く)。
写真:写真AC
監修、アドバイス:黒澤史津乃
【監修者プロフィール】
黒澤史津乃(くろさわ・しずの)…株式会社OAGウェルビーR 代表取締役 CEO
20年以上にわたり、家族に頼らずに老後とその先を迎える「おひとりさま」の支援に携わっている。2007年行政書士登録。2019年消費生活アドバイザー及び消費生活相談員(国家資格)登録。
一般社団法人全国高齢者等終身サポート事業者協会代表理事として業界のけん引役をつとめる他、一般社団法人横浜イノベーション推進機構代表理事として、横浜市内の多様で複雑化した広範囲の地域課題解決にも取り組む。
内閣官房「認知症と向き合う幸齢社会実現会議」構成員、厚生労働省「身寄りのない高齢者等の生活上の課題実態把握事業」有識者委員。社会福祉法人浴風会特別研究員として厚労科研「独居認知症高齢者の権利利益の保護を推進するための調査研究」(25GB0101)における分担研究を担当。
この著者の前の記事
・こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編②
・こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編①
・こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編①
・こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編②
・こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編③
著者:岡崎 杏里
大学卒業後、編集プロダクション、出版社に勤務。23歳のときに若年性認知症になった父親の介護と、その3年後に卵巣がんになった母親の看病をひとり娘として背負うことに。宣伝会議主催の「編集・ライター講座」の卒業制作(父親の介護に関わる人々へのインタビューなど)が優秀賞を受賞。『笑う介護。』の出版を機に、2007年より介護ライター&介護エッセイストとして、介護に関する記事やエッセイの執筆などを行っている。著書に『みんなの認知症』(ともに、成美堂出版)、『わんこも介護』(朝日新聞出版)などがある。2013年に長男を出産し、ダブルケアラー(介護と育児など複数のケアをする人)となった。訪問介護員2級養成研修課程修了(ホームヘルパー2級)
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