後悔とともに、まだまだ続く⁉ 岡崎家の「ケア活」問題、実家の片付け編の第2回。相続に必要な通帳が見つかったあとは、一番の気がかりだった母親の大量の洋服の片付けをすることに……。
実家で独り暮らしをしていた母親は、冬の寒い日にお風呂場から突然天国に旅立ってしまいました。父親はすでに施設に入所していたため、実家が空き家になってしまったのです。そんなわけで、「いつかやる!」と先延ばしにしていた実家の後片付けが、強制的に「いますぐやるべきこと!」になってしまいました。
なぜなら10ヶ月という期限付きの相続など、家族が亡くなると残された家族は次から次へといろいろな手続きの対応をしなくてはならないためです。母親とのケア活が出来ていなかった私は、母親がどのくらい財産を持っていたかも知りませんでした。まずは現金をどのくらい持っていたかを把握するために銀行の通帳が必要だったのですが、その在りかもわかりません。すると、急に逝ってしまった母親が一人娘の私が途方に暮れている姿を見かねて、夢枕に立ってその場所を教えてくれたのです(詳細は「こんなことも「ケア活」なんです⁉ 実家の片付け編①」参照)。
しかし、母親が夢枕に立ってくれたのはその時だけ。「あれはどこなの?」と、天国に向かって聞いてみても、もう母親は現れてくれませんでした。そのため、祖父母も含めると70年以上そこで暮らしていた家族のあれこれが詰まった実家の片付けを、たった一人で担うことになったのです。
「そんなことを言いふらさないでよ!」と天国で母親が怒っているかもしれませんが、母親は相当な衣装持ちでした。いや、買い物依存というか、病的に洋服を買い続けているところがありました。実家の2階に行くたびに、母親の洋服が増えているのが明らかにわかり、「実家の片付けをしなくない」理由の1つになっているほどだったのです。
「あの洋服たちをどうしようか……」。母親が亡くなってから何度目かの途方に暮れていると、ご近所の母親の親友のおばちゃん2人から「片付け、手伝うよ!」という申し出が! 天からのお助けとばかりに、有難くその言葉に甘えることにしたのです。
「実家の片付け」への着手の阻害要因にもなっていた母親の洋服の片付け。その量は想像を遥かに上回り、大人3人で丸3日間も掛かるほどでした。なんと、70ℓのポリ袋30袋以上! 手伝ってくれた2人や私で母親の形見として洋服を分けるにしても、母親はやせ型で若いころから体型があまり変わっておらず細身なため、体型が変わりまくっている私たち(あ、私だけ⁉)が着るのが難しいものばかり。さらに、東北生まれなのに関西的なセンスを好んでいたため、トラだのヒョウだの、キラキラを通り越してギラギラしているようなデザインのものを私たちが着こなす自信もなく……。「これ、どうしようか……」と、悩んだ結果、「こういうテイストが好きな人もいるだろう!」「捨てるよりは、誰かに着てもらおう!」とリサイクルショップに持ち込むことになったのです。
イラスト(下):日野あかね
【専門家(アクティア株式会社 マーケティング統括部 家事代行グループ 住吉由美さん)が解説!】
※以下、グレー部分
遺品整理で意外と多いのが、「屋外にあるものはノーマークだった」というケースです。私自身の実家でも、庭にあった屋外物置の整理に大きな苦労を感じました。DIYが好きだった父が残した2つの大きな物置の中には、電動ドリルやノコギリ、オイル類や塗料の缶、用途の分からない工具まで、隙間なくびっしりと詰め込まれており、その量と種類の多さは圧巻でした。
しかし、それらが「価値のあるものなのか」「どのように扱えばよいのか」が分からず、物置の前でしばらく立ち尽くしてしまったことを覚えています。
一度は「自分たちで何とか処分できるのでは?」と考えたものの、塗料やオイル類は取り扱いに注意が必要なものも多く、誤った処分はけがや事故につながるリスクもあります。
最終的には、時間や労力だけでなく精神的な負担も考慮し、専門業者へ依頼する判断をしました。費用は決して安くはありませんでしたが、大きな物置が片付き、庭がすっきりと見渡せるようになったときの安堵感は非常に大きいものでした。
遺品整理というと「思い出の品をどうするか」に意識が向きがちですが、実際にはこのような“扱いに困るもの”の存在が、大きなハードルになるケースも少なくありません。
少し話が逸れますが、母親が買い物依存を心配するほど洋服を買い続けた背景には、長年に渡る父親の介護のストレスが大きく影響していると思っています。特に趣味などがなかった母親は、父親がデイサービスやショートステイに行っている隙に、デパートに出かけることが唯一の息抜きだったのです。
また、父親は事業をしていたので、それが軌道に乗っていたころは母親も比較的自由に使えるお金があったのだと思います。そのころの社長の妻としてのプライドを維持したかったのか、父親が病気になり事業を縮小してからも洋服を買い続け、通帳を見ると自らの貯えを切り崩していたようです。その結果、自分の部屋だけでは収まらなくなり、結婚して家を出た私や施設に入所した父親が使っていた空になったタンスやクローゼットにも、母親の洋服がパンパンに入っていました。しかも、その多くは値札が付いたまま、一度も袖を通していないものばかりでした。
家の片付けをするということは、そこで暮らしていた人の心内も知ることになるのかもしれません。「そこまでして洋服を買い続けるなんて!」と思う人もいるかもしれませんが、20年以上(当時)、父親を一緒に介護してきた娘としては、そんな母親を責める気にはなれませんでした(だとしても、想像以上の量だったけど……)。
そんな母親の切ない思いが詰まっているであろう大量の洋服は、夫にバンと呼ばれるサイズの車をレンタルしてもらってすべてをリサイクルショップに持ち込むのに2往復もしなければならないほどでした。買い取り額はさぞ高額になるだろうと、少しだけ期待をしていましたが、査定に数日費やした結果に出た値段は623点で約2,500円。バンのレンタカー代にもならない低い査定額に呆然としていると、たとえ未着用であってもデザインが古かったり、売れやすい若者向けでなかったりするものが多かったため、その額になったと、お店の人が説明してくれました。こうして、一番の気がかりであった母親の洋服の片付けはなんとか終えることができましたが、これは実家の片付けの序章に過ぎないのです。
故人が残した洋服や、大切にしていた「推し」グッズなどは、処分するには忍びない一方で、使う予定もなく、残されたご家族を悩ませることが少なくありません。
それらは、その人らしさに触れられる大切な品であるからこそ、判断が難しいものです。特に洋服は「女性が手放しにくいもの」の代表格とも言われており、実際に多くのお客様が膨大な衣類を前に、整理に悩まれています。
こうした場合に大切なのは、「無理なく・分かりやすく手放すこと」です。状態の良いものは、出張買取や宅配買取を利用することで、手間をかけずに整理を進めることができます。また、「推し」グッズなどはフリマサービスを活用し、次の持ち主へ想いを引継ぐことで、心の負担も軽くなるかもしれません。さらに、「寄付」という選択肢もあります。
たとえば「古着deワクチン」のように、衣類を必要としている海外の方へ届ける取り組みもあり、「誰かの役に立つ」と考えることで、手放すハードルが下がるケースもあります。
また、カジタクでは、整理収納サービス「片付け名人プラン」と連動し、ブックオフの宅配買取サービスや寄付プログラム「キモチと。」を活用できる仕組みを提供しています。
整理の過程で出た本・CD・ブランド品などを自宅から簡単に手放すことができ、売却だけでなく寄付という形で社会貢献につなげることも可能です。
大切なのは、「どの方法で手放すか」ではなく、ご自身やご家族が納得できる形で送り出せるかどうかです。ご自身やご家族の気持ちにあった行き先を選ぶことが後悔の少ない整理に繫がります。
写真:写真AC
監修、アドバイス:住吉由美
【監修者プロフィール】
住吉由美(すみよし・ゆみ)…保有資格:生前整理アドバイザー認定指導員/整理収納アドバイザー1級。
アクティア株式会社が提供する家事代行サービス「カジタク」に所属。整理収納アドバイザーとしてお客さま宅の片付けサービスを担当するほか、生前整理アドバイザー認定指導員として認定講座を開催。さらに、イオンスタイル品川シーサイド「MySCUE」コーナーにて、生前整理に関するセミナーを月1回のペースで実施している。


この著者の前の記事
・「お墓を継ぐ人がいない」一人娘の切実な悩み|こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編①
・「1体60万円」母がメモ帳に遺した最期のメッセージ|こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編②
・ご先祖様と衝撃の対面!? 墓じまい当日の「事件」|こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編③
・総費用は200万円以上!子世代に掛かる負担|こんなことも「ケア活」なんです⁉ 墓じまい編④
・年間8万? 知らないと怖い親の土地の維持費|こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編①
・元気なうちが期限! 土地売却に必須な生前対策|こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編②
・親の土地売却に浮上した境界線の壁|こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編③
・母のお告げで通帳発見⁉ 切実すぎる実家片付け|こんなことも「ケア活」なんです!? 実家の片付け編①
著者:岡崎 杏里
大学卒業後、編集プロダクション、出版社に勤務。23歳のときに若年性認知症になった父親の介護と、その3年後に卵巣がんになった母親の看病をひとり娘として背負うことに。宣伝会議主催の「編集・ライター講座」の卒業制作(父親の介護に関わる人々へのインタビューなど)が優秀賞を受賞。『笑う介護。』の出版を機に、2007年より介護ライター&介護エッセイストとして、介護に関する記事やエッセイの執筆などを行っている。著書に『みんなの認知症』(ともに、成美堂出版)、『わんこも介護』(朝日新聞出版)などがある。2013年に長男を出産し、ダブルケアラー(介護と育児など複数のケアをする人)となった。訪問介護員2級養成研修課程修了(ホームヘルパー2級)
https://anriokazaki.net/