後悔とともに、まだまだ続く⁉ 岡崎家の「ケア活」問題。今回からは、友人たちとの話題によくあがる「実家の片付け」を取り上げます。それは、母親が亡くなる前日に食べた夕飯の食器の片付けから始まりました。

1. どんどん後回しになる実家の片付け

父親が施設に入所したころから「なんとかしていかないとね……」と、母親が話題にすることが増えた“実家の片付け”。ただ、その話が始まると、まずは「あんたの部屋をどうにかしてよ!」と、なぜか私が怒られるオチになるため、「はい、はい。近々、片付けますよ」と流してやりすごしていました。恥を忍んで公表しますが、実家から自転車で10分の距離に新居を構えていた私ですが、結婚して5年以上(当時)経過しても、実家の私の部屋はそこで暮らしていた状態のままになっていました。だって、介護やら、育児やら、仕事やらで、自分の部屋まで片付ける時間がなくて(ブツブツブツ…はい、言い訳です)。

また、ほかにも実家の片付けに向き合いたくなかった理由の1つに、実家の状態がありました。私も決して片付けが得意な方ではありませんが、母親は私以上に片付けが苦手、かつモノを捨てることができない人でした。そのため、実家は常にモノで溢れている状態だったのです。さらに、父親が施設に入所した背景には母親が要介護状態になったという事情があり、「母さんは口しか出さないで、動くのは私でしょ!」と、実働が私になるのは確定。よって、岡崎家の「実家の片付け」は、どんどん後回しになっていったのです。


イラスト(下):日野あかね


片付けができない母親のイメージ


【専門家(アクティア株式会社 マーケティング統括部 家事代行グループ 住吉由美さん)が解説!】
※以下、グレー部分


実家の片付けについて、「特に必要ない」「すでにできている」と感じている人も多いのではないでしょうか? しかし実際に、両親の死後に遺品整理と向き合うと、その量の多さや手続きの煩雑さに直面し、「もっと早く準備しておけばよかった」と後悔するケースは少なくありません。つまり多くの方が、「実家の片付け」で何をしておくべきかを具体的に理解できていないことがわかります。

私が開催する生前整理・終活セミナーでも、実家の片付けや遺品整理がとても大変だった経験から、「子どもに同じ思いをさせたくない」と学びに来られる方が一定数いらっしゃいます。一方で、子世代がご両親と一緒に片付けを進められているケースは、決して多いとは言えません。

多くの場合、子世代には「手伝いたい」という気持ちはあるものの、

・どのように切り出せばよいかわからない(特に金融情報などデリケートな内容)
・話を切り出した途端に親が防御的になり、話しづらくなってしまう
といった心理的なハードルが存在し、これがきっかけで親子関係がぎくしゃくしてしまうケースも見受けられます。

また、いざ片付けを始めても、

・親が物を手放せず作業が進まない
・片付けの過程で感情が追いつかず、「もうやめたい」と中断してしまうなど、親子間でストレスが生じやすいのも実情
そのため実家の片付けは、短期間で一気に進めるのではなく、時間をかけながら、ご両親が納得できる形で進めていく配慮が重要だと、私は感じております。

2. まずは日々の母親の生活の跡から片付ける

こうして後回しにしていた「実家の片付け」が、母親が口を出すこともなく、たった一人(一人娘のため…)で向き合わなければならない問題として、私に降りかかってきたのです。

というのも、母親が実家のお風呂場から、突然、天国に旅立ってしまったのです。母親は一人で亡くなったため、亡くなった直後は、警察の鑑識が入ったり、葬儀の準備(コロナ禍で家族葬でした)や後日、個別に弔問に来られた方の対応など、あっという間に数日が過ぎていきました。弔問客がひと段落して、母親の遺骨が置かれた後飾り祭壇がある部屋以外に目をやる余裕が出てくると、台所には亡くなる前日に母親が夕食に使い、洗っていなかった食器が桶に入ったままになっているのが目に入ってきました。さらに、介護ベッドを置いていた部屋には、母親の洗濯ものが部屋干しされていました。そこには、「亡くなる直前まで、ここでいつも通りに生活していたんだ」という生活の跡がありました。でも、あの食器を使ったり、干してある洋服を着る母親は、もう、いない……。そんな切ない思いを抱きながら、まずは日々の母親の生活の跡を”片付ける”ところから、実家の片付けがスタートしたのです。

3. 母親が夢枕に立って……

さらに数日が過ぎると、税理士さんから「お母さんの財産について、10ヶ月以内に相続の申告をしないといけません」と連絡が入り、「なるべく早く、お母さんが名義の銀行口座をすべて把握し、それらの通帳を探し出してください」と言われました。とりあえず、税理士さんには「はい」と返事をしたものの、「そんなの知らないよー」と心の中で絶叫です。というのも、母親は「いつかは教えるけど……」と自分の財産などについて、私に全く教えてくれませんでした(娘として、信用されていなかったのか?)。そのため、母親名義の銀行口座どころか、どこに通帳があるのかもわかりません。それでも、母親がなんとなく仕舞っていそうな引き出しや、棚を片っ端から捜しました。一人の目では見落としがあるかもしれないので、仕事が休みの日に夫にも捜索を手伝ってもらいました。それでもなかなか見つからず(涙)。途方に暮れながら、「母さんに、口だけでもいいから片付けを手伝ってもらいたかった」と心の底から後悔しましたが、時すでに、遅し。

ここからは、いきなりスピリチュアルな話になります。信じるか信じないかはあなた次第です。困り果てた私は母親の遺骨が置かれた後飾り祭壇に向かって「一体、どこにしまったのよ!」と大声でブチ切れました。すると、その日の夜に「通帳は、ハンカチやタオルを仕舞っている引き出しにあるよ」と母親が夢枕に立ったのです。母親が夢で教えてくれた場所は、私も夫もすでに確認済の場所。「でも、母さんがそう言うならば……」と半信半疑でその場所をもう一度捜してみると、巾着に入った通帳などが見つかったのです。信じ難い不思議体験により、母親の通帳はなんとか見つけることができました。ですが、こんな不思議体験は稀だと思われ、特にタイムリミットがあるお金に関わる相続などについては、親が元気なうちから(口だけ出してもらってでも)、一緒に「ケア活」として片付けをしながら、把握しておくべきだったと痛感しています。

こうして、スピリチュアル体験まで飛び出した岡崎家の「実家の片付け」。施設に入所した要介護4の父親が、もう実家に戻ることはありません。私も夫と家を購入しているので、実家は母親が亡くなったことで空き家になってしまいました。誰も住んでいなくても、実家には固定資産税やら、メンテナンスやらのお金も手間も掛かります。なによりも人が住まなくなった家は急激に傷んでいきます。「いつかやらなければ……」と思っていた「実家の片付け」は、「今すぐ取り組まなければ」と、真正面から向き合わざるを得ない問題になってしまいました。


もしご実家に、自分(すでにその家で生活していない方)の荷物が残っている場合は、まずはそれらを整理することが、実家片付けの第一歩になります。なぜなら、親の反応が大きく変わるためです。親自身も「いずれ整理しなければ」という気持ちは多くの方が持っています。しかし、いざ始めようとしたときに、子どもの荷物がスペースを占めていると、「まずはあなたのものをどうにかしてほしい」と感じるのは自然なことです。現実から目を背けたい気持ちは、親も子も同じです。だからこそ、その気持ちを共有しながら、親子で一緒にスタートすることが大切です。

また、人は年齢とともに体力が低下していきます。以前は問題なく扱えていた物でも、移動や整理が負担となり、無理をするとケガにつながる可能性もあります。その結果、「片付け=つらく大変なもの」という印象が強くなってしまうことも少なくありません。体力のある子どもたちがサポートしながら、無理をせず、できるところから向き合っていくことが大切です。

そのためにはまず、
「今は触れてほしくない場所」
「日常生活で不便に感じている箇所」
「必ず確認してほしいもの」
といった点を、ご両親と事前に共有しておくと、スムーズに進めやすくなります。

実際に片付けを始める場所としては、思い入れの少ない部屋や洗面所などの小さなスペースからがおすすめです。洗面所には、試供品や使っていない洗剤など、比較的判断しやすいものが多く、取りかかりやすいのが特徴です。こうした小さな場所から始めることで、少しずつ「判断力」や「決断力」が養われ、自分にとって本当に必要なものが見えてくるようになると同時に、手放すことへの抵抗感や罪悪感も、徐々にやわらいでいきます。

焦らず、少しずつ。しかし、立ち止まらずに続けていくことで、実家片付けは確実に前に進み、やがてゴールが見えてきます。



写真:写真AC
監修、アドバイス:住吉由美


【監修者プロフィール】
住吉由美(すみよし・ゆみ)…保有資格:生前整理アドバイザー認定指導員/整理収納アドバイザー1級。
アクティア株式会社が提供する家事代行サービス「カジタク」に所属。整理収納アドバイザーとしてお客さま宅の片付けサービスを担当するほか、生前整理アドバイザー認定指導員として認定講座を開催。さらに、イオンスタイル品川シーサイド「MySCUE」コーナーにて、生前整理に関するセミナーを月1回のペースで実施している。

住吉由美さん

カジタクロゴ


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この記事の提供元
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著者:岡崎 杏里

大学卒業後、編集プロダクション、出版社に勤務。23歳のときに若年性認知症になった父親の介護と、その3年後に卵巣がんになった母親の看病をひとり娘として背負うことに。宣伝会議主催の「編集・ライター講座」の卒業制作(父親の介護に関わる人々へのインタビューなど)が優秀賞を受賞。『笑う介護。』の出版を機に、2007年より介護ライター&介護エッセイストとして、介護に関する記事やエッセイの執筆などを行っている。著書に『みんなの認知症』(ともに、成美堂出版)、『わんこも介護』(朝日新聞出版)などがある。2013年に長男を出産し、ダブルケアラー(介護と育児など複数のケアをする人)となった。訪問介護員2級養成研修課程修了(ホームヘルパー2級)
https://anriokazaki.net/

この著者のこれまでの記事

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