後悔ばかりの岡崎家の「ケア活」問題。「実家の片付け編」は今回で最終回ですが、実は実家の片付けは、現在も完全に終わったわけではなく……。

片付け業者にお願いしたことで、ほぼ家の中が空っぽになった実家。ですが、その一角に衣装ケースの山が……。そうです、私が片付けを依頼した業者が”対象外”とする「重要書類」「現金」「切手、テレフォンカードや商品券などの換金できるもの」「写真」が、空になった衣装ケースに収められて積まれていたのです。
以下は、上記の実家遺産(!)たちについての、私なりの対応策です。どなたかの参考になれば幸いです……。
まずは父親がコレクションしていた切手が入ったケースから、手を付けることに。ものによっては、切手コレクターの間では何十万円もするレアなモノもあるそうですが、インターネットで調べた限り、そういった切手はないようでした。一方で、紙に貼られた記念切手とゾロ目の日(すべての桁に同じ数字が並んだ日。たとえば、平成3年3月3日など)の消印を押したものがたくさんありました。もちろん、消印が押されているのでその切手たちは使うことができません。そういったものを収集している人もいるかもしれないと、複数の切手の買い取り業者に問い合わせてみると、「それはうちでは取り扱っていません」という返答が。確かに、ネットで調べてみても、そんな奇特な人がどこにいるのかわからないため、申し訳ないけれど処分することに。父親にとっては自慢のコレクションも、私にとっては、手間のかかる燃えるゴミになってしまいました……。消印がなければ切手として使うことができるのにー! 使っていない切手については、郵便局で交換の手数料が掛かりますが、はがきやレターパックに交換してもらうことができました。
次に、なぜか大量に発見されたのが未使用のテレフォンカード。父親が仕事で取引をしていた会社などからいただいて、使わずにそのままにしていたようです。携帯電話が普及した今は、公衆電話の数は激減して、ほぼ使うことができません。そのため、こちらは街などでよく見かける金券などを買い取ってくれるお店に持ち込んでみました。人気女優などが印刷されているものの中には、価値が上がっているものもあるそうですが、残念ながら我が家からはそういったテレフォンカードは発見されず(涙)。しかし、私が持ち込んだお店では、500円分のテレフォンカードは350円で買い取ってもらうことができました(岡崎による調べではありますが、だいだいそれくらいが買い取り額の相場のようです)。
1つ注意が必要なのは、親のモノを子どもなどが売って得た金額が納税の対象になる可能性がある、ということです。実際に私も母親が亡くなったあと、母親の貴金属を買い取り業者に売りに行くと、わずかであったにもかかわらず、昨今の金の高騰により思ったよりも高い金額で買い取ってもらうことができました。それを税理士さんに伝えたところ、きちんと税務署に報告して、税金を支払うべきだという指導があり、手続きをしてもらった経緯があります。
【専門家(アクティア株式会社 マーケティング統括部 家事代行グループ 住吉由美さん)が解説!】
※以下、グレー部分
今回のコラムで印象的だったのは、「自分にとっての宝物」が、残される家族にとっては必ずしも同じ価値を持つとは限らない、という点です。
近年はアニメグッズやアイドルグッズ、トレーディングカードなど、「推し活」をきっかけにコレクションを楽しむ方が増えています。もちろん、好きなものを集めることは人生を豊かにしてくれますが、生前整理という視点では、「自分が亡くなったあと、そのコレクションは誰がどう扱うのか」まで考えておくことが大切です。
アニメグッズや趣味のコレクションなどは、その価値を知らない人が見れば、そのまま処分されてしまう可能性もあります。大切なものだからこそ、「誰に引き継ぎたいのか」「売却するならどこに依頼してほしいのか」といった希望を、家族に伝えたりメモに残したりしておくことをおすすめします。近年はフリマアプリや専門の買取サービスも充実しているため、手放す方法まで考えておくと、ご家族の負担を大きく減らすことができます。
また、価値のあるものは「売る」だけが選択肢とは限りません。骨董品や著名人のサイン入りの品、歴史的・文化的な価値がある資料などは、美術館や資料館、関連団体などへ寄贈するという方法もあります。価値を理解してくれる人や場所へ受け継がれることで、その品物が次の世代にも生かされます。遺品整理では、故人が大切にしてきたものを、その想いごと未来へつないでいくことが、ご家族にとっての供養にもつながるでしょう。
また、実家の片付けでは、親御さんの持ち物を売却する場面も少なくありません。貴金属や骨董品、ブランド品などは思いがけず高額になるケースもありますが、相続の状況によっては税務上の取り扱いに注意が必要になることがあります。特に相続前に売却したり、相続財産として扱われるものを処分したりする場合は、自己判断せず、税理士などの専門家へ相談すると安心です。また、相続人が複数いる場合は、後々のトラブルを防ぐためにも、売却前に家族間で十分に話し合い、合意を得ておくことも大切なポイントです。
生前整理は「物を捨てること」が目的ではありません。大切なのは、モノの価値だけでなく、その背景にある想いやストーリーも含めて、次の世代へどうつないでいくかを考えることです。それが、残される家族への思いやりとなり、自分らしい生前整理につながるのではないでしょうか。
「確かに、コレも重要書類だよねー」と気づかされたものは、家族の卒業証書や資格証書などです。祖父母の代からの家族全員分となると、なかなかの量に。存命している私と父親の証書たちはファイリングして保管しましたが、飲食関係の仕事で、ともに調理師免許を取得していた祖父母の免許証は、もう必要になることはないでしょう。とても大切な免許証ではあるのですが、故人のものとはいえ、個人情報なので破き、燃えるゴミの袋に入れたのでした。
そして、息子も含めると四世代分となる大量の写真の処分にあたりました。衣装ケース5~6箱分はあったと思います。大切な写真は携帯で撮影してデータ化するなどしましたが、とにかく手間が掛かります。さらに写真の片付けの落とし穴は、「あー、懐かしい」と写真を見ながら当時を思い出しては、手が止まってしまうことです。そこで、「これは、一人ではムリだ」(介護経験から人を頼るのが上手くなった!?)と、友人に手伝ってもらうことに。「懐かしいのはわかるけれど、手が止まっているよ!」と思い出に浸りそうになったところを友人に注意してもらいながら、合計で10日くらいの時間を費やして片付けをしました。
写真の片付けで非常に困ったことは、私が生まれる前に他界した祖父はマメな人だったのか、戦争中に撮影した写真が大量に出てきたことです。それらはアルバムにキレイに整理されていて、「●●部隊の●●君」と写っている人の名前や「仲間たちと語らう」といったコメントなどが添えられています。歴史的資料としても貴重だと思い、戦争に関する資料館などに寄付をしようと、各関係部署に問い合わせをしてみることにしたのです。
全部で3ヶ所の戦争に関する資料館などに問い合わせをしたのですが、そのすべてから「現在受け入れはしていない」と言われてしまいました。理由は「以前は受け入れていたが、家じまいをする人の増加で対応できなくなった」とのこと。ある資料館は「資料館のある街に関するものが写っていれば受け入れる」ということでしたが、祖父が撮影した場所がどこなのかわからないため、受け入れは難しいようでした。
三世代以上が住んでいた家ならば、戦争に関するモノが片付けで出てくることは容易に想像できます。私と同じような考えで寄付が増え、受け入れる側が対応に困っている現状がよくわかりました。だからといって、祖父が一生懸命に記録したものをおいそれと捨てることはできず、今は私の自宅で保管しています(どなかた、良い対応方法をご存じでしたら教えください)。
戦争中の写真や古い資料などは、地域の資料館や博物館、公文書館などへ相談する方法がありますが、近年は家じまいや実家の片付けの増加により、受け入れを制限している施設も少なくありません。そのため、寄贈先が見つからない場合は、価値のあるものを厳選してスキャンや撮影を行い、データとして残すことをおすすめします。原本を手放した後も記録を残すことができ、実物よりもコンパクトに保管・共有できます。
また、写真は人の顔や思い出が写っている分、なかなか手放せないものです。しかし、すべてを保管することは難しいため、「本当に残したい写真」を選ぶことも生前整理の大切な考え方です。私たちは、お気に入りの写真だけを一冊のアルバムにまとめ、シールやコメントを添えてスクラップブッキングすることをおすすめしています。思い出やエピソードを書き添えておけば、自分にとって大切な一冊になるだけでなく、ご家族へ想いを伝えるアルバムにもなります。将来、施設へ入居することになった際なども、「このアルバムだけは持って行きたい」と思える一冊があると、大きな心の支えになります。
それでも手放すことに抵抗がある写真や故人が大切にしていた品は、お寺や神社でお焚き上げを依頼するという方法もあります。供養の気持ちを込めて送り出すことができるため、「ゴミとして処分することに抵抗がある」という方にも選ばれている方法です。お住まいの地域のお寺や神社で対応している場合がありますので、一度相談してみるのもよいでしょう。ご自分で処分する場合は、白い紙(半紙やコピー用紙)で写真と塩を包んでから自治体のルールに従って処分して下さい。これは、宗教的な意味合いよりも「気持ちを整理するための作法」に近いと思います。「清め」と「丁寧な扱い」をしてご自分の中できちんとお別れをしたという「区切り」にも繋がります。
生前整理は、すべてを残すことでも、すべてを処分することでもありません。大切な思い出を厳選し、未来へつないでいく方法を考えることが、ご自身にもご家族にも優しい整理につながります。
イラスト(下):日野あかね
こうして、私が片付けを依頼した業者が”対象外”とする「重要書類」「現金」「切手、テレフォンカードや商品券などの換金できるもの」「写真」の片付けは進んでいきました。
それでも、私と父親の卒業証書や資格の証書、どうしても捨てられない写真、そして、祖父の戦争の写真が残りました。取り壊す予定の実家に置いておくことはできないため、現在は私の自宅で保管していますが、それはなかなかの分量なのです。夫に「ちょっとー、コレどうにかしてよ」と言われ続けていますが、(私にとっては)どうにもできなかったモノばかり。この捨てることができないモノを目にするたびに今もなお、「まだ、実家の片付けが完全に終わっていない」と憂鬱になる日々を送っています。
実家の片付け編のおまけの話として、祖父母の時代から代々70年以上も住み続けた実家を解体する前に、これまで住まいを守ってくれた神様や土地の神様への感謝と、解体工事の安全を祈願する「解体清祓(かいたいきよばらい)」を地元の神社にお願いしました。家を建てる前には地鎮祭を行いますが、解体の際に行う儀式もあるのです。私としては、実家で亡くなった母親の弔いもして欲しいという思いもありました(神主さんが、母親が天国に旅立ったお風呂場も特別に祈祷してくださいました)。
どうにかこうにか、私の実家の片付けはひと段落しましたが、やはり、両親が元気なうち、せめて母親が元気なうちに、あれこれ言いながら片付けたかったという後悔が残っています。どうか、みなさんは私のような後悔がないように、ご両親が元気なうちに実家の後片付けについて考えていただければと思います。
岡崎さんがおっしゃるように、「もっと早く始めていれば」という後悔は、実家の片付けを経験された多くの方が口にされる言葉です。
生前整理と遺品整理の大きな違いは、「亡くなった後に家族が行うか」「元気なうちに自分自身で行うか」という点です。私たちは、生前整理を「人生の終わりの準備」ではなく、「これからの人生をより良く生きるために、モノ・心・情報を整理すること」だと考えています。
時間や体力、判断力が十分にある「自立期」だからこそ、自分にとって本当に大切なものを見極め、家族へ引き継ぎたいものや処分方法について話し合っておくことができます。一番身近な家族だからこそ、「いつでも話せる」「そのうちやろう」と思いがちですが、その"いつか"は突然できなくなることもあります。
また、実家の片付けは時間も労力もかかるため、一気に終わらせようとする必要はありません。ご自身やご家族のペースに合わせて、無理なく少しずつ進めていくことが何より大切です。もし精神的・身体的な負担が大きいと感じたら、一人や家族だけで抱え込まず、専門家や信頼できる事業者の力を借りることも一つの選択肢です。第三者が入ることで気持ちの整理がつきやすくなり、作業や判断の負担も大きく軽減できます。
実家の片付けは、モノを減らすことだけが目的ではなく、ご自身やご家族がこれからの人生を安心して過ごすための準備です。私たちカジタクも、お一人おひとりのお気持ちや状況に寄り添いながら、生前整理や実家の片付けをサポートしています。「何から始めればいいかわからない」という段階でも構いません。どうぞお気軽にご相談ください。
写真:岡崎杏里、写真AC
監修、アドバイス:住吉由美
【監修者プロフィール】
住吉由美(すみよし・ゆみ)…保有資格:生前整理アドバイザー認定指導員/整理収納アドバイザー1級。
アクティア株式会社が提供する家事代行サービス「カジタク」に所属。整理収納アドバイザーとしてお客さま宅の片付けサービスを担当するほか、生前整理アドバイザー認定指導員として認定講座を開催。さらに、イオンスタイル品川シーサイド「MySCUE」コーナーにて、生前整理に関するセミナーを月1回のペースで実施している。


この著者の前の記事
・「お墓を継ぐ人がいない」一人娘の切実な悩み|こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編①
・「1体60万円」母がメモ帳に遺した最期のメッセージ|こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編②
・ご先祖様と衝撃の対面!? 墓じまい当日の「事件」|こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編③
・総費用は200万円以上!子世代に掛かる負担|こんなことも「ケア活」なんです⁉ 墓じまい編④
・年間8万? 知らないと怖い親の土地の維持費|こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編①
・元気なうちが期限! 土地売却に必須な生前対策|こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編②
・親の土地売却に浮上した境界線の壁|こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編③
・母のお告げで通帳発見⁉ 切実すぎる実家片付け|こんなことも「ケア活」なんです!? 実家の片付け編①
・70ℓ袋が30袋! 母の心を知る遺品整理|こんなことも「ケア活」なんです⁉ 実家の片付け編②
・見積りは約80万円! 遺品整理の適正価格|こんなことも「ケア活」なんです!? 実家の片付け編③
・業者に頼めないモノとは? 70万円の内訳|こんなことも「ケア活」なんです!? 実家の片付け編④
著者:岡崎 杏里
大学卒業後、編集プロダクション、出版社に勤務。23歳のときに若年性認知症になった父親の介護と、その3年後に卵巣がんになった母親の看病をひとり娘として背負うことに。宣伝会議主催の「編集・ライター講座」の卒業制作(父親の介護に関わる人々へのインタビューなど)が優秀賞を受賞。『笑う介護。』の出版を機に、2007年より介護ライター&介護エッセイストとして、介護に関する記事やエッセイの執筆などを行っている。著書に『みんなの認知症』(ともに、成美堂出版)、『わんこも介護』(朝日新聞出版)などがある。2013年に長男を出産し、ダブルケアラー(介護と育児など複数のケアをする人)となった。訪問介護員2級養成研修課程修了(ホームヘルパー2級)
https://anriokazaki.net/