後悔ばかりの岡崎家の「ケア活」問題。「空き家」になった実家をそのままにしていると、家は傷み、固定資産税は掛かったままになります。さらに、ほかにもさまざまな問題が起きて……。
父が施設に入所し、母が亡くなり空き家になってしまった実家。片付け業者の手も借りて、どうにかこうにか、ほぼ空っぽの状態になりました。そうなるともう、そこには誰かが住む予定もないため、次に待っているのは実家自体の処分です。
正直な話、母が亡くなり、葬儀、相続の手続き、墓じまい、実家の片付けと次々とこなさなければならないミッション(?)にあたり、ゴールまであと一歩だと分かっていても、実家の処分はどう考えても一番面倒なことがわかるので(建物の解体、土地の売買)すぐに取り掛かることができませんでした。実家に関することだけ、いわゆる「燃え尽き症候群」的な状態になっていたのです。
夫に何度も「家の中が空っぽになったんだから、早く次に進みなよ」と言われても、「わかった、わかった」と言いながらズルズルと実家の処分を引き延ばす日々。だって(以下は言い訳……)仕事があるし、その合間には父の施設に行ったり、息子が急に中学受験すると言い出してその対応をしたり……。器用でない私がそんなに一度にいろいろできるわけがない! 気が付けば、あっという前に3年(!)の月日が流れていました。しかも、この3年後にとんだ落とし穴が待っているなんて、そのときは知るよしもありませんでした。
その先に進めなくても、実家を処分するまでの管理は一人娘の私が担わなければなりませんでした。1ヶ月に2、3回は実家に出向いて窓を開けて空気の入れ替えをしたり、ガスと電気は止めていましたが、知人から解体工事をするときに必要となると言われた水道は契約したままでした。水道メーターが敷地の中にあるため、検針員が来る日は鍵を開けに行く必要があります。さらに、誰も住んでいなくても年に1度は固定資産税も支払わなければなりません。それらの対応が地味に面倒くさいと思いながらも、次のステップに進めなかったのは、なんだかんだ言っても、やはり生まれたときから30年以上も暮らした(その月日の半分以上はそこで父の在宅介護をした)思い出が詰まった実家と完全にお別れする決心がなかなかできないということもありました。
【専門家(不動産相続アーキテクツ株式会社 代表取締役 高橋大樹さん)が解説!】
※以下、グレー部分
まずは気になった点として、岡崎さんは解体工事するまで水道は解約しないほうがいいと知人に言われたようですが、そんなことはありません。必要がないのであれば、いったん解約して、解体工事するときに契約を再開すればいいのです。
岡崎さんのように、思い入れのある実家ということもあってなかなか手がつけられず、あっという間に1年、2年、3年と経過している方も少なくありません。ただ、以降のこのコラムでも触れられるようですが、相続してから3年を経過する年末までに売却をしないと税金が優遇される空き家特例が使えなくなってしまうため、そこは要注意です。一方で、早く相続問題を片づけたいというご意向がある場合は、相続が起きてすぐに名義変更(相続登記)をして売却する方もいらっしゃいます。
また、きょうだい間の遺産分割でもめてしまっているときは、売りたくても売却ができないため、時間がかかります。きょうだいが複数いても、全員が売却に合意をされていれば、すぐに売却が可能になります。
ところがある日、ご近所さんから「この間の台風のせいか、あなたの実家の屋根瓦が割れているようだけど……」と連絡が入りました。そのご近所さんが住むマンションのベランダからは我が家の屋根が見えるらしく、洗濯物を干しているときに気付いたのだとか。
慌てて実家の隣のマンションの管理人さんに許可を得て、屋根の見える非常階段の踊り場から実家の屋根を見ると、ガッツリ屋根瓦が割れていました。「これはマズイ」とすぐに知り合いの工務店に連絡し、屋根の点検を依頼しました。
すると、屋根瓦は割れていましたが幸いにも家の中に雨が入り込むまでには至っていなかったようです。しかし、続いて工務店の人は思いもよらない恐ろしいことを言い出したのです。「もしかしたら台風の被害ではなく、屋根から人が侵入しようとしたのかもしれない」とのこと! なんと、割れた屋根瓦の先に小さな懐中電灯が落ちていたのです(下の写真参照)。これは明らかに我が家のものではありません。すぐに工務店の人と屋根瓦が割れた下に位置する部屋に行ってみましたが、足跡など人が入った形跡は特にありませんでした。あくまで工務店の人と私の想像ですが、実家の中が空っぽだったので、屋根の隙間から家の中を覗いてみたものの、何にもなかったため侵入しなかったのだろうという予測に落ち着きました。それでも気持ちが悪いため警察に連絡をすると、被害がなかったため大ごとにはなりませんでしたが、周辺の警備を強化するということになりました。
実家の中は空っぽだったため、泥棒が入ることは免れたのかもしれません。一方で、薄々気づいてはいつつも見て見ぬ振りをしていた侵入者(?)について、工務店の人からある指摘を受けました。それは「ねずみ」です。工務店の人に実家の裏側に来るように言われ、その方が指さす箇所を見ると、そこには大きい穴のようなもの(下の写真)がありました。「ここから、ねずみが出入りしていると思いますよ」と言う工務店の人に対して、「あぁ、やっぱり…」と力なく返す私。実家の片付けをしているとき、黒くて小さいねずみのフンのようなものを何度か見たことがあり、「ひょっとして……?」と思っていましたが、この穴の存在により、ねずみの存在を認めざるを得なくなりました。
イラスト(下):日野あかね
「燃え尽き症候群だ」「思い出と決別できない」などと3年以上も実家の処分を先延ばしにしている間に、思った以上に空き家になった実家ではさまざまな問題が発生していたのです。さすがに、「これ以上は引き延ばすことができない」と、重くなり過ぎた私の腰がついに少しずつ上がっていったのです。
空き家になった実家をそのままにして発生する問題として、私が一番多く耳にするものは庭の草木の管理です。特に戸建ての場合でお庭があれば、手入れをしないと草木がどんどん生えてくるので、夏場は近隣からクレームが入ることがあります。さらに、秋は落ち葉の件でもクレームが入ります。自分たちで植栽の伐採をするとなると体力的にも時間的にもかなりの負担がかかりますが、業者に依頼すれば、当然費用がかかってきます。
固定資産税がかかり続けるということも、多くの方が気にされている問題です。加えてマンションであれば、住んでいなくても管理費や修繕積立金の支払いが続いていきます(借地であれば地代の支払いが続きます)。空き家になった実家をそのままにしておくことは、こういった支出のデメリットも大きいのです。
また、最近は台風や大雨、地震などの災害も増えてきています。自分の家が壊れるだけならまだしも、ブロック塀が倒れたり、瓦が飛んでしまったり、ガラスが割れたりすることで、他人に被害を与えてしまうこともありえます。誰も住んでいなければ防犯上の問題も出てきますし、最悪のケースでは誰かが住みついてしまう可能性もゼロではありません。岡崎さんのケースのようにネズミやハクビシンなどの害獣の住処になることはよくあることです。さらに、放火や火災のリスクがあることも忘れてはいけません。
写真:写真AC
内容監修&アドバイス:高橋大樹(たかはし・だいき)

【監修者プロフィール】
不動産相続アーキテクツ株式会社 代表取締役
1980年8月22日生まれ。法政大学工学部建築学科卒業。埼玉県内の住宅建築会社に勤務後、不動産の相続対策を専門とする会社で「不動産」「相続」の専門知識に加え、「建築」の知識と現場経験を生かし、不動産売買仲介、土地・建物の有効活用提案、底地・借地の権利関係調整など、数多くの相続不動産案件に携わる。2019年、相続に特化した不動産会社として、不動産相続アーキテクツ株式会社を東京都豊島区池袋に設立。相続対策から相続発生後の不動産売却・有効活用提案、地主向けセカンドオピニオン、家族信託コンサルティングまで、不動産相続全般をワンストップで支援。税理士・司法書士・弁護士などの専門家と連携し、実務に即したコンサルティングを行っている。現在は士業と連携した相続の無料相談会を各地で企画・開催するほか、海外居住の日本人向け相続セミナーにも登壇。「安心して相談できる相続の相談窓口」の普及に力を注いでいる。
この著者の前の記事
・「お墓を継ぐ人がいない」一人娘の切実な悩み|こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編①
・「1体60万円」母がメモ帳に遺した最期のメッセージ|こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編②
・ご先祖様と衝撃の対面!? 墓じまい当日の「事件」|こんなことも「ケア活」なんです!? 墓じまい編③
・総費用は200万円以上!子世代に掛かる負担|こんなことも「ケア活」なんです⁉ 墓じまい編④
・年間8万? 知らないと怖い親の土地の維持費|こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編①
・元気なうちが期限! 土地売却に必須な生前対策|こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編②
・親の土地売却に浮上した境界線の壁|こんなことも「ケア活」なんです!? 財産整理編③
・母のお告げで通帳発見⁉ 切実すぎる実家片付け|こんなことも「ケア活」なんです!? 実家の片付け編①
・70ℓ袋が30袋! 母の心を知る遺品整理|こんなことも「ケア活」なんです⁉ 実家の片付け編②
・見積りは約80万円! 遺品整理の適正価格|こんなことも「ケア活」なんです!? 実家の片付け編③
・業者に頼めないモノとは? 70万円の内訳|こんなことも「ケア活」なんです!? 実家の片付け編④
・遺品売却の注意点と写真処分|こんなことも「ケア活」なんです⁉ 実家の片付け編⑤
著者:岡崎 杏里
大学卒業後、編集プロダクション、出版社に勤務。23歳のときに若年性認知症になった父親の介護と、その3年後に卵巣がんになった母親の看病をひとり娘として背負うことに。宣伝会議主催の「編集・ライター講座」の卒業制作(父親の介護に関わる人々へのインタビューなど)が優秀賞を受賞。『笑う介護。』の出版を機に、2007年より介護ライター&介護エッセイストとして、介護に関する記事やエッセイの執筆などを行っている。著書に『みんなの認知症』(ともに、成美堂出版)、『わんこも介護』(朝日新聞出版)などがある。2013年に長男を出産し、ダブルケアラー(介護と育児など複数のケアをする人)となった。訪問介護員2級養成研修課程修了(ホームヘルパー2級)
https://anriokazaki.net/